facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

梁 美沙 ヴァイオリン・リサイタル

2011年01月25日 | pocknのコンサート感想録2011
1月25日(火)梁 美沙(Vn)/アダム・ラルム(Pf)
~紀尾井ニューアーティストシリーズ第22回~
紀尾井ホール
【曲目】
1.シューマン/ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 Op.105
2.モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ 第30番ニ長調K.306(300l)
3.ショーソン/詩曲 Op.25
4.プロコフィエフ/5つのメロディー Op.35
5.シューベルト/ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D934
【アンコール】
シューマン/ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 Op.121~第3楽章

紀尾井ホールはお気に入りのホールの中でも出かける回数が多いことに気づき、しかも創立15周年のキャンペーンで去年の4月から1年間は会員割引が15%になると知って、去年の秋から友の会の会員になった。今夜のリサイタルはその会員優先の招待コンサート。梁美沙のヴァイオリンを聴くのは初めて。

シューマンのソナタが始まって目を引いたのは、梁さんが演奏に合わせて大きく体を動かし、前後左右に移動すること。あらら、どこへ行っちゃうんだろう… と思うほどに大きく足を前へ踏み出したと思うや、その後はちゃんと元の立ち位置に戻る。その動きはとても柔軟で、バレエを見ているよう。そして、演奏の方もこの動きに呼応するように、大きな振幅で、多感で夢想的なシューマンの音楽を柔軟に、情熱的に形作って行く。梁さんのヴァイオリンの音は温かくて繊細、動きはレガート主体に滑らかで、たっぷりと歌う。体の動きに合わせて大きく膨らんではおさまり、大きな呼吸が感じられる。その呼吸はシューマンらしい熱を帯びたドラマを聴かせてくれた。

そんなシューマンから曲がモーツァルトになると、一転音像がスリムになり、音量的にビアノを引き立てる。ラルムのビアノは、色合いも豊かで、滑らかな語り口が心地良い気分にさせてくれる。ラルムのビアノが暖かな風がそよぐ色とりどりの花を咲かせる花園だとすると、梁のバイオリンはその花園で花から花へ楽し気に飛び交う蝶だ。その表情は繊細で、とびきりチャーミング。3楽章の2人のカデンツァ風のバッセージは花と蝶との戯れに聴こえた。

モーツァルトからショーソンになると、梁のバイオリンの音はまたふくよかにほんのり肉付けされる。音楽の様式にぴたりと呼応して音色がさっと変わるのが素晴らしい。表現内容もモーツァルトでのチャーミングな表情から妖艶な表情に変化する。ファンタジックな妖精の踊り。

後半最初はプロコフィエフ、プロコフィエフといえば硬質で器楽的な魅力が売り、というイメージがあるが、ここでは声楽的な「歌」が心をくすぐってきた。これは梁の歌心あるヴァイオリンのなせる技かも。

そうした歌が、最後のシューベルトでは溢れていた。ここでは場面によってチャーミングな表情、妖艶さ、熱い焦燥感、憧れ、それに気高さなど様々な魅力が顔を覗かせ、連なっていった。音像は全体にスリムだが表現力はとても豊か、表情の変化が敏感で素早く、音楽が今まさに生れて来たようなセンシティブな即興性をもたらす。梁さんのバレエのような体の動きは伸びやかで柔らかなボウイングに連動し、滑らかな一本のラインとなって次々とデリケートな歌が繰り出されていった。

梁美沙はライブならではの魅力を堪能させてくれるという点でも要チェックアーティストだ。紀尾井ホールの招待コンサートのおかげで、いいヴァイオリニストに出逢えた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 近大通信 司書学外スクーリ... | トップ | ストラスブール ~カテドラル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2011」カテゴリの最新記事