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N響 2018年2月B定期(パーヴォ・ヤルヴィ指揮)

2018年02月24日 | pocknのコンサート感想録2018
2月22日(木)パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団
《2018年2月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.武満 徹/ノスタルジア―アンドレイ・タルコフスキーの追憶に
2.武満 徹/遠い呼び声の彼方へ!
 Vn:諏訪内晶子
3.ワーグナー/楽劇「ニーベルングの指環」管弦楽曲集
 "ウォータンの別れと魔の炎の音楽"~"ワルキューレの騎行"~"森のささやき","ジークフリートの葬送行進曲~"夜明けとジークフリートのラインの旅"~"ワルハラ城への神々の入城"

パーヴォが指揮台に上がったN響2月のBプロは、武満とワーグナーという正反対の音楽が前半と後半に並んだ。2曲の武満作品のヴァイオリンソロを担ったのは諏訪内晶子。正直、後半のワーグナーよりも楽しみだったし、その演奏は実際、気高く美しかった。

弦楽器だけによる「ノスタルジア」は、「トワイライト」という言葉が相応しい薄明の淡い光が感じられ、静かでゆったりとした呼吸を繰り返しながら、柔らかく溶け合った音の色彩がグラデーションを描いてゆく弦楽合奏からは、管楽器の響きも聴こえてきた。

そんな響きの海のなかを、諏訪内のヴァイオリンは穏やかに、たっぷりした大きな息遣いで悠然と泳いで行く。その姿は世にも美しい人魚のよう。美しさだけでなく、人魚の悲しい運命まで胸に秘めた孤高の気高さと、胸を突く歌心を湛えていた。諏訪内は、武満作品の魅力を極限まで引き出すことのできる稀有なヴァイオリニストと言っていい。

2曲目の「遠い呼び声の彼方へ!」ではオーケストラに管・打楽器が加わり、音色がより豊かになったのだが、弦だけで多彩な響きを聴かせた「ノスタルジア」のほうが、より豊かなイマジネーションを得ることができた。

後半のワーグナーは、「指環」の聴かせどころを寄せ集めて1つの組曲に仕上げた管弦楽作品。パーヴォ/N響は、鮮やかな切れ味、パンチ力や推進力、アンサンブルの緻密さなど、どれも十分だし、歌心でも核心を射止める術を心得ているなと感じさせたけれど、ワーグナーを聴いて感動するときの、じわりじわりと熱くなり、心臓がバクバクしてきて、ついには異次元の世界に連れて行かれるような「ドラマ」を感じることは出来なかった。

ワーグナーの音楽って、小さな波を有機的に繋げて大波を作り上げて行く「巧さ」だけでなく、強引さとか、狂気めいた感情の高ぶりといった、何か予期しないものが加わったときに感動を味わえるのかも知れない。そもそも、桁外れに長大な「指環」の物語の美味しいところを切り取ってつなぎ合わせ、しかも最後に演奏されるのが、盛り上がる曲とは言え「指環」では「前夜祭」に当たる「ラインの黄金」の最終場面とあっては、筋書きとしての意味はない。最後のクライマックスでの盛り上がりに欠けた理由は、そんなところにもあるのかも、とも思ってしまった。

N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
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