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検証「日本の常識」 ~落書き~

2009年09月12日 | ウィーン&ベルリン 音楽の旅 2009
イタリア・フィレンツェのドゥオモ(大聖堂)に日本の大学生が落書きをしたことが次々と発覚して大騒ぎになったのは去年(2008年)のこと。日本ではこの落書行為に厳しい目が向けられ、大学が謝罪文を出したり、本人が現地に行って謝ったりする事態となった。僕も「世界遺産に落書きなんてケシカラン!恥を知れ!」なんて思っていた。ところがご当地イタリアでは「なんで落書きごときでそんなに騒ぐのか理解できない…」という声が殆どだったという。

確かにヨーロッパの町を歩いているとあちこちに落書きが目立つ。大らかなラテン気質のイタリアばかりでなく、実直と勤勉のイメージが強いドイツだって、歴史的な古い街並みの家々の壁にさえ必ずといっていいほど落書きが目に入る。

ドイツの大都市、ベルリンともなれば落書きは数も程度もハンパじゃあない。書きなぐったようなものからアーティスティックなものまで、ありとあらゆる種類の落書きが、家の壁、通路、観光名所、駅中、電車のボディーやガラス窓などありとあらゆるところにひしめいている。ベルリンを初めて訪れる日本人がよく「ベルリンは何だか怖かった…」と言うのは、こうした落書きも関係ありそうだ(でもベルリンはドイツで一番おもしろい町ですぞ!)。

ベルリンを歩いていて見かけた落書きをいくつかご紹介…


ベルリン 落書きアート集



映画「ベルリン・天使の詩」でもおなじみの観光名所・戦勝記念塔”Siegessäule”
内部のらせん階段は観光客にとって絶好の落書きスポット!?



よくぞこんな上の方まで届いたものだ・・・



建物のボロさに比例して落書きも多くなる。



落書きと貼り紙でいっぱいの壁は一種のアート?



ベルリンの壁が残る「イーストサイドギャラリー」

冷戦時代、灰色一色だった「ベルリンの壁」の東側には、壁の崩壊後に大勢の人達によって絵が描かれた。この壁の一部は「イーストサイドギャラリー」として残っているが、これらの絵も元々は落書きの一種。その絵の上に更に落書きが…
ここの「壁」は壁崩壊20周年記念を前に、大規模な改修工事が行われていた。これについては追って詳しくレポートします。




電車のボディーだけでなく、窓ガラスにも尖ったもので傷つけた落書きがある。



車内もこの通り… 床にまで落書きがあるのには驚いた!


改めてこうして落書きを眺めてみると、日本で見る落書きなんてかわいいもんだ。これならイタリアやドイツで日本人のカップルが遠慮がちに名前とハートマークぐらい書いたところで、「それがどうした?」ということになるのもわかる気がする。

とは言え、これだけ落書きが多いが、落書きの現行犯はこれまで一度も見たことがない。もちろんこうした公共物への落書きは違法だろうから、さすがに人通りの多いときや白昼堂々というわけには行かないのだろう。

日本とドイツなどヨーロッパでの落書きに対する寛容度の違いは大きい。いつかオーストリア人の友人に「落書きをどう思うか?」と聞いたら「マッサラな壁を見るより落書きがあったほうが楽しいわ。」という答えが返ってきた。

去年だったか、新幹線のボディーに落書きが見つかり、急遽その新幹線が運休になったというニュースを見たが、落書きごときで電車が運休していたらベルリンの交通網は常にマヒ状態だろう。

落書きのある電車を平然と走らせているドイツと、落書きされると運休させてしまう日本・・・ 

「落書き禁止」の貼り紙があれば落書きされないのはさすが日本!?

この違いは凹んだりキズがついたマイカーを平気で走らせるドイツ人と、週末ごとに洗車してピカピカに磨き、車体にちょっとでもキズでもつこうものなら弁償だ・修理だと大騒ぎする日本人という対比にもつながるだろう。

汚れ(ケガレ)ということに過敏なのは日本人の持つ美意識であり道徳観でもある。そこから日本独特の文化も育まれてきた。そんな日本人にとっては、こうした落書きに対して寛容になるのは難しいことだと思うが、ヨーロッパを知るには落書きに対する免疫が多少は必要なのかも知れない。

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