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高山~白川郷を訪ねる

2014年01月05日 | pocknの気まぐれダイアリー

2012 夏の家族旅行 ~高山、白川郷、白骨温泉、乗鞍高原~

夏にいつも過ごす清里の貸し別荘「野わけ」の前に、3泊で高山~白川郷~白骨温泉~乗鞍高原を訪れた。なかでも世界遺産の白川郷はこれまで訪れたことがなく、ずっと行ってみたいと思っていた。

家から車で白川郷まで一日で行くのは少しきついので、一日目は高山までにして、高山を観光して翌日に白川郷へ。白川郷では合掌造りの宿に泊まり、翌日もゆっくりして3日目は白骨温泉で一泊。乗鞍高原でハイキングして野わけへ行くというプランにした。

高山
高山は、25年ぶりぐらいの訪問。前に来たときは笠ヶ岳から下山した翌日、何も調べず数時間滞在しただけだったが、古い城下町の町並みがよく保存されていてとてもいい雰囲気だった。今回はちゃんと予習して観光ポイントやうまいものもチェックして出かけた。

泊まった宿は、高山駅の南側にある「惣助」という民宿。100年以上前の民家を民宿として再建した古い貫禄が漂う宿。食事どころのいろりのある広間の雰囲気もいい。

古い町並みは駅の北側にあるが、宿からでも十分に歩いて行ける距離で、高山の観光は全て徒歩で楽しんだ。

歴史的な建物がたくさん残る高山でも最も古い町並みが保存されているのが上三之町。観光客が大勢行き交い、観光用の人力車がお客を待ち、民芸品などを売るお店や食べ物屋が軒を連ねる。




高山の魅力はもちろん上三之町周辺やガイドに出ているスポットに限ったわけではない。観光客がまばらな道を歩いていても、「歴史的建造物」という看板が立つ江戸時代の建物にあちこちで出くわす。これらの建物は今でも普通に民家として使われている。こうしてぶらぶら歩き、五平餅やソフトクリームなんかを食べ歩き、路地に入ったりするのは楽しい。



古いものばかりではなく、和洋の雰囲気がマッチしたカフェや、飛騨牛を使った本格ハンバーガー「高山バーガー」が食べられるヨーロッパ調の明るいお店など、おしゃれな新しい場所も多い。

当時の姿で保存されている建造物には内部を見学できるところもたくさんある。その中でも大規模な見学スポットがこの高山陣屋。

陣屋というのは、江戸時代、お代官が治政を行った一連の建物群の総称で、当時の建物が残っているのは全国でもここだけだそうだ。明治になってからも役所として使われた後に修復され、江戸時代の姿が蘇ったのが1996年というから、高山では新しい歴史的観光スポットということになる。

広い敷地内には、用途別に様々な執務が行われた建物がいくつもあり、そこで行われていた様子がよくわかる。立派な米蔵や便所なども残っていて、興味は尽きず、1時間近くかけてゆっくり見学した。

高山に一泊したことで町のいろいろな様子を感じることができたし、高山の「味」も体験でき、この町をじっくり心に刻み込むことができた。高山を旅行したドイツ人からおみやげにここの名物のさるぼぼのマスコットをもらったことがあるが、町中には英語の表記も多く、たくさん訪れていた外国人観光客にとっても日本の素敵な古都として心に刻まれるに違いない。

白川郷
高山から白川郷へは東海北陸自動車道で1時間ちょっとで行けてしまう。高速道路のルートは「これでもか」と言うほどトンネルだらけ。なかでも飛騨トンネルは全長10キロを超える10710メートルあって、道路のトンネルでは日本で3番目の長さだ。長いトンネルをくぐって歴史的な景観を留める世界文化遺産の集落に到着すると、まさしく秘境へスリップした気分。白川郷荻町のメインストリート、本通りに入ると観光客がそぞろ歩き、写真では何度も見ていた合掌造りの家がいくつも点在しているのが見えた。




山あいにたくさんの合掌造りの家が佇む風景を眺めるのに絶好の場所として人気なのが、集落の外れにある荻町城跡の展望台。狭い急坂の山道を登って着いてみると、反対側には車道があって、展望台はなかなかの賑わいだった。

白川郷の写真というと決まってここからのショットが使われるほどで、ここからは萩町の合掌造り建物群をほぼ全て一望にできるのではないだろうか。山並みと家並みが織り成す風景はまさしく桃源郷のようだ。


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荻町の合掌造り集落のなかでも最大規模で、国の重要文化財に指定されている和田家を見学した。囲炉裏の間や仏間、江戸時代に使われた生活用品や、農具、祭事用の道具、天井部分を渡された黒々と大きく立派な梁など、どれも一見の価値ありだ。

急な階段で2階へ上がると、そこには合掌造りの特徴でもある広い屋根裏の空間がある。太い丸太を組み上げた切妻の屋根の構造や茅葺を目の当たりにでき、窓からの眺めもいい。ここにはいろいろな農作業の道具が展示されていて、かつて白川郷で盛んだったという養蚕業の紹介として、蚕を実際に飼育している様子も見ることができた。


見学用に開放している和田家だが、ここには今でも和田家の人達が住んでいて、ガイド役も家族の方が担当。それだけに生活の匂いが建物全体に漂っていた。

~合掌造りの民宿に泊まる~
せっかく白川郷まで行くからにはゆっくり一夜を過ごしたい。泊まるなら是非とも合掌造りの宿がいい。ネットで調べると合掌造りの民宿がけっこうたくさんある。どこにしようか迷ったが、「白川郷で最古の合掌造りの民宿」という文句に引かれて「利兵衛」という民宿に予約を入れた。電話で予約をしたが、宿泊日と人数、名前、連絡先の電話番号を訊かれ「お待ちしてます」と言われただけ。予約確認の葉書とかパンフも送ってくれないし前金もなく、ちょっと心配になって行く直前に確認の電話を入れた。「ハイハイ、お待ちしてます」と言われ、ひとまず安心。


利兵衛はメインストリートの本通り沿いにあった。歴史を感じる小ぶりの合掌造りの家で、庭には花がたくさん咲いている。

どこが入口か迷うほど目立たない入口から入って、玄関で「ごめんください!」と叫ぶと、奥から女主人さんらしき人が現れた。煤で黒ずんだ梁が立派な年期の入った廊下を進み、道路側の部屋に案内された。

障子戸を開けると、そこは仏間付きの広い部屋。田舎のおばあちゃんの家に来た感じ。隣の部屋とは襖一枚で仕切られているだけで、これぞ昔ながらの宿の雰囲気。部屋の鍵もなく宿帳を記入することもない、なんとも自然体そのものという感じが気に入った。縁側からは庭の花がよく見える。

観光客がぞろぞろ行き交う外界とは隔絶され、秘境に来た気分になってきた。今夜はここに泊まるのか! 晩ご飯は何かな…

その前にお風呂。浴室や洗面台、トイレは増築したスペースに作られていて、お風呂は家族風呂といった感じ。もちろん共同風呂。

合掌造りの家ではここに限らず、浴室はたいてい増築された部分にあるらしい。オリジナルの合掌造りには風呂はなかったんだな。

汗を流してさっぱりしたら大広間で夕食。部屋ごとにちゃぶ台に食事が運ばれてくる。メニューは山菜が中心の素朴でおいしい郷土料理。鮎の塩焼きもでたし、焼き物には飛騨牛の陶板焼きが出て、やわらかくて絶品だった。





食事のあと、民宿の周辺をちょっと散歩した。日中の暑さもおさまって夜風が気持ちいい。そして、にぎわっていた表通りには人影もなくとにかく静か。ようやく世界遺産の集落に本来の静寂が戻ってきた感じ。合掌造りの家の窓に点る灯りを見ていたら、民話の世界に引き込まれる気分になった。


夜は部屋で花札をやったり、本を読んだりして過ごした。テレビもなく、自然の中で合掌造りの古い家に抱かれている感じ。



エアコンなんてものはもちろんなく、縁側の窓は全開で外からヨシズを通ってそよぎ入る夜風に扇風機の風が加われば寝るのにちょうど良い涼しさ。無用心にも思えるかも知れないが、昔は田舎に行けばこんな感じだったなぁ… ととても懐かしい気分。この夜の時間が、合掌造りの宿に泊まって一番印象深い時間だった。

(追記)
と、利兵衛ではこんな昔ながらの貴重で素敵な宿体験ができる。この記事を「利兵衛 アメニティ」なんてキーワードで検索してくる人がいるが、そんなことを期待して、上に書いたことをみんなネガティブに口コミに書くような人には絶対泊まって欲しくない。

心地よい眠りから覚めた翌朝、朝ごはんの前に周辺を散歩した。


朝の光はまぶしいけれど、日中のような暑さをもたらすことはなくとても爽やか。山の裾野にはまだ霞がたなびいていて、世界遺産の集落の原風景を演出していた。



早朝の気持ちいい空気を肌で感じつつ、まだ観光客がいない静かな道を散歩。こんな朝の白川郷を体験できたのも合掌造りの宿に泊まったおかげだ。


朝ごはんに飛騨・高山の郷土料理、ミニコンロで焼いた朴葉味噌をご飯にのせて食べる。これも絶品!


広間には、食後もついのんびり過ごしたくなるあたったかい雰囲気が漂う…


泊まった部屋にある縁側でのんびり。



pocknは宿の玄関先の日陰でスケッチ。描いてるうちに徐々に人通りが出てきた。



宿の前の物干しには洗濯が終わったシーツがたくさん架けられていった。


太陽も高くなり、真夏の日差しが照りつけるようになってきた。向日葵や朝顔など、夏の花々の色が合掌造りの庭先で映える。


荻町の集落にはきれいな水路があちこちに通っていて田んぼも多い。青々と育っている稲の穂が風に吹かれて薫る。


合掌造りの家でも大きさや形態はさまざま。作られた時代や用途による違いからくるのだろうが、どの家も今でも現役として荻町の人達の生活の場となっている。


~民家園~
萩町の合掌造り集落から庄川に架かる「であい橋」を渡った側に、観光バスや日帰りで来た車を停める大駐車場に隣接して「合掌造り民家園」がある。

ここは、失われつつあった貴重な合掌造りの家屋を保存する目的で作られた屋外博物館。1970年頃からここに村のあちこちから合掌造りの建築が移築され、今では様々なタイプの合掌造りが全部で25棟も保存・管理され、公開されている。このうち県指定の重要文化財に指定されている歴史的価値の高い合掌造りが9棟。

住居として使われていた建物だけでなく、倉庫や炭焼き小屋、お寺や水車小屋、トイレまで様々な用途で造られた合掌造りの建物が保存されている。

民家園の建物の内部はどこも自由に見学することができ、「和田家」で見たような生活・仕事・祭事で使われた道具の展示や、合掌造りのしくみや歴史を伝える写真パネルやビデオ上映などを見ることができる。あちこち見学して疲れたら、無料でお茶を飲んでくつろげる場所もある。お土産屋や蕎麦屋もみんな合掌造り。


山の懐に抱かれた園内には花がたくさん咲き、小川が流れ、水車がゴットンゴットンと音を立てて回っていて、絵に描いた桃源郷のような風景が広がっている。


この民家園を見学していて思い出したのは、2年前にドイツ南部の黒い森地方を旅行したときに訪れたフォークトバウエルンホフ(Vogtbauernhof)。数百年も前の古い農家が集められた野外の体験型ミュージアムだ。ここで見学した農家はどこも生活スペース、農作業のスペース、家畜のスペースに分かれていて、広い屋根裏もある。屋根がせり出すように迫ってくる造りを思い出して、地球の反対側同士にある場所にこれほど共通点があることに改めてビックリした。

民家園を出て、再び荻町の合掌造りの集落を散歩した。下の写真の左手前、水田の間に見える小さな小屋のなかには放水銃が格納されている。貴重な世界遺産の建物を火災から守るためのもの。合掌造りの集落内には、こうした放水銃が入った小屋があちこちにあり、毎年秋の火災予防運動期間中に、放水訓練としてこの放水銃から一斉に空高く水が吹き上げられる様子は、荻町の季節の風物詩として観光客がたくさん見学にやってくるそうだ。



合掌造りの家が建ち並ぶ白川郷の風景は、よく「日本の原風景」と呼ばれているが、このような造りの家屋というのは日本でも独特のもので、その集落で育まれる村の暮らしも、日本に残る他のどんな伝統的な生活様式にも見られない特殊なものだと本に出ていた(「世界遺産白川郷 ~視線の先にあるもの~」黒田乃生著)。

世界でも他に例を見ない貴重な文化遺産を守るために、この放水銃はいつでもスタンバイできる状態に保たれている。

そんな集落内で買える定番の食べ物のひとつがこの五平餅。甘辛のしょうゆダレをつけて炭火の上で焼く香ばしい匂いがたまらない!飛騨牛の串刺しや飛騨牛コロッケもおいしかった。珍しいところでは「どぶろくソフト」なんてのもあり、これは酒粕のいい香りがした。

ここでのうまいものと言えば、こういう素朴な軽食が中心。そばやうどん、丼ものなどの食事ができるところもあるが、どれも気取らない田舎の食堂という感じ。外国人観光客も大勢やって来る世界遺産の白川郷だが、華美を装うことなく昔ながらの自然体のおもてなしをしてくれるところも気に入った。

荻町の集落内には合掌造りばかりではなくこうした木造建築もあるが、造りも色合いも、合掌造りの集落のなかにとてもよく調和している。


今日は長野県の白骨温泉まで行く予定だが、午後も時間が許す限り白川郷をできるだけくまなく散策した。民家園の合掌造りを見て回るのもいいが、人々が暮らしを営んでいる集落は、合掌造りの家も、庭も、田んぼや小路にも、人々の生活の様子が感じられて、そうしたものが総動員で白川郷の魅力を伝えてくれる。


今回は夏の暑い時期の訪問だったが、四季それぞれの景色を見て、感じてみたい。白川郷は「帰って来たくなる」場所だ。

白骨温泉・乗鞍高原
白川郷を発ったあとの最終目的地は、毎年家族で過ごす清里の貸し別荘「野わけ」だが、余裕をもってそのほぼ中間地点にある白骨温泉で一泊して、翌日は乗鞍高原を散策した。

白骨温泉では老舗の湯元齋藤旅館に宿泊。名湯白濁の湯につかり、おいしく贅沢な料理を楽しんだ。白骨温泉で思い出すのは、薄まった白濁を入浴剤でごまかした事件。でももう過去のことだし、この旅館の話ではないので、正真正銘の天然の濁り!と信じて入った。朝食に出た温泉粥がこれまたマイルドで美味。これは白骨温泉の名物だそうだ。

翌朝は乗鞍高原の周回コースをハイキング。ネイチャープラザ一ノ瀬で車を停めて、あざみ池~口笛の小径~牛留池~ふたりの小径~善五郎の滝~白樺の小径を経由してスタート地点に戻る約9キロのコースを、途中でお昼を食べてのんびり3時間以上かけて歩いた。

花咲く草原の散策やカラマツや白樺の森林浴を楽しみながらのハイキングの途中には、静かで自然味溢れるふたつの池や豪快な滝などのビューポイントも用意されていて、アップダウンの少ない歩きやすいコースでありながら、変化に富んでいてとても面白かった。

牛留池の近くには幹がぐるり一回りねじれた珍しい五葉松があって、大切に保護されていた。原生林に囲まれた牛留池では、水面に映る乗鞍岳の雄姿を眺めることができた。


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乗鞍高原でハイキングを心行くまで楽しみ、夏の家族旅行の前半を終えたあとは、一路清里の「野わけ」へ。「野わけ」ライフについては、過去のブログ記事を参照してください。


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