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かものはし通信

他是不有吾

「中国人エリートは日本人をこう見る」

2012-05-22 05:00:04 | 
中島恵著 「中国人エリートは日本人をこう見る」 日経プレミアシリーズ

ここ数年、仕事で中国の方と出会うことが多くなった。連携する他社のチームメンバーが多国籍であることは既に珍しくはなく、そのリーダーが中国人ということもよくある。リーダーのみ中国人でメンバーは皆日本人、ということもあった。
そういったリーダーを務める中国人は、間違いなく皆とても優秀な方々である。業務スキルはもちろんのこと、日本語が大変堪能で意思疎通に齟齬が生じることはまずない。日本語独特の曖昧な言い回しまで使いこなしておられる。そんな方々と一緒に仕事を進めると、内向きになっている日本に比べ、外へ向かう非常に強いパワーを感じる。ああ、こうやって中国は日本を追い抜いていくのだな、と思い知らされるのである。

本書で中島氏が声を集めている「若手中国人エリート」とは、恐らくそんな人々だ。そのエリートたちに、日中間の微妙な問題まで突っ込んで話を聞き、彼らの意見をバランス良くまとめた本書は、実に参考になる。有り難い。なにせ仕事上のつきあいの中で、そんなことは訊けないからだ。
中国漁船衝突事件の時期も、ちょうど中国人リーダーと一緒に仕事をしていたが、日常会話でもお互いその話題だけはうまく避けていた。が頭の隅にはちゃんと引っかかって、それが態度に微妙な変化をもたらし、談笑にも硬さが混じる。そんな居心地の悪さを感じつつ、いつか彼らの本音を聞いてみたいとずっと思っていた。

本書は帯に惑わされない方が良い。「驚きの日本人論!」とか「ここだけの話・・・小泉元首相は中国で人気なんですよ」などと、昨今流行りの右より日本礼賛論のように宣伝されているが、そうではない。著者は真摯に、マスコミで歪められた中国人への印象を正しい方向へ導き、両国民の相互理解が進むことを願って、本書を上梓されたのだと思う。そして、我々日本人が今後も中国人から目標とされる存在で有り続ける、そのためにどうあるべきか、何をすべきか、我々自身がしっかり考えねば、と警鐘を鳴らしているのだ。
最後に綴られている、若いエリートの言葉は、一部の報道に踊らされて嫌中感情を徐々につのらせる我々を、静かに諫めてくれる。
「日本も中国も、世界地図からは絶対に消えない国。今後、日中間にどんなことがあっても、どちらも引っ越しはできず、隣国として共存していかなくてはなりません。そのことをよく理解した上で、お互いに尊重してつき合っていけたらいい。もちろん、つき合っていくのは国家だけでなく、私たち一人ひとりの人間です。」
この言葉は忘れまい。


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