ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

舟を編む/三浦しをん

2014-12-21 | 読書
玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、
人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。
新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。
定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、
徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。
個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。
言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく―。
しかし、問題が山積みの辞書編集部。
果たして『大渡海』は完成するのか―。
(「BOOK」データベースより)

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ようやく読みましたが、素晴らしい作品だったー!
久しぶりに小説読んで泣きました
登場するキャラクターがどれも個性的で愛すべき人々で
すごく情が移っちゃう。
主人公のマジメくんはもちろんですが、私の中のキーマンは
松本先生かなぁ~。

辞書を編纂するということの大変さはもちろんだけど、
言葉はもっと大切にしないとなーと痛感させられました。

なにかを生み出すためには言葉がいる。
数多の中からどの言葉を選んで伝えるかは、その人の
人柄を表すことにもなるし、言葉は人生の基礎なのかな。
「言葉を尽くす」というけれど、まさにその通り。
日本語には、心してかからねば

三浦しをんの小説を読んだのは実はコレが初めて。
好きな文体だったな~。

言葉という大海原に漕ぎ出す舟を編む…
って、このタイトルだけでもすごいセンスを感じるよね!

まほろ駅前シリーズとかにも、手を付けようかな~



迷宮/中村文則

2014-12-19 | 読書
密室状態の家で両親と兄が殺され、小学生だった彼女だけが生き残った
その事件は「僕」が12歳の時に起きた。
「僕」は事件のことを調べてゆく。
「折鶴事件」と呼ばれる事件の現場の写真を見る。そして…。
巧みな謎解きを組み込み、エンタテインメントをのみ込む、渾身の長編。
(「BOOK」データベースより)

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そういう意味では(どういう?
こんなミステリーちっくな小説は初めてかもね、文則くん?
また少し新たな世界が開けた感じがしました。

ただ人間の「悪」という根底に流れるテーマは基本的には
変わらないし、弁護士事務所に勤める主人公の、少し狂気じみている
不安定な設定とかは、いつもの感じ。

『掏摸』や『王国』の完成された世界観を体験しちゃうと
ちょっと期待はずれな部分もあり、最後、密室殺人の真実を遺児である
彼女が語りだした内容などは、いわゆる一般的な謎解きミステリーとは
異質なので、自分の中で消化しきれない部分があったかな~。

まぁ、受け取り方の問題かもしれないけど。

さて。文則作品全制覇まであと一歩


☆☆

王国/中村文則

2014-12-17 | 読書
組織によって選ばれた、利用価値のある社会的要人の弱みを人工的に作ること、
それが鹿島ユリカの「仕事」だった。
ある日、彼女は駅の人ごみの中で見知らぬ男から突然、忠告を受ける。
「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」
男の名は、木崎―某施設の施設長を名乗る男。
不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から静かに語りかける男の声。
「世界はこれから面白くなる。…あなたを派遣した組織の人間に、
そう伝えておくがいい…そのホテルから、無事に出られればの話だが」
圧倒的に美しく輝く強力な「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。
(「BOOK」データベースより)

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木崎、キターーーー!
ホント、この人怖いから!
オシッコちびっちゃうよ

『掏摸』の姉妹編ということで書かれたみたいですが、
素晴らしく面白かった!!
続編という訳ではないけど、あの最後に通りに向かってコインを投げた
主人公のその後が分かってよかった。

本作のモチーフというか、コンセプトも『掏摸』と同じような感じで
スリリングであり、あっという間に読ませました。
文則作品で、女性が主人公というのも新鮮だったな。
以前の作品にも多用される「月」がキーワードで、
彼女のその時々の精神状態が、月の変化で語られるのも印象に残りました。

私が中村文則にハマったきっかけとなった内容からブレずに、
これは楽しめました!



悪と仮面のルール/中村文則

2014-12-16 | 読書
父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、
「邪」の家系を絶つため父の殺害を決意する。
それは、すべて屋敷に引き取られた養女・香織のためだった。
十数年後、顔を変え、他人の身分を手に入れた僕は、
居場所がわからなくなっていた香織の調査を探偵に依頼する。
街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った
連続殺人事件に発展。僕の周りには刑事がうろつき始める。
しかも、香織には過去の繰り返しのように、巨大な悪の影が
つきまとっていた。それは、絶ったはずの家系の男だった―。
刑事、探偵、テログループ、邪の家系…世界の悪を超えようとする
青年の疾走を描く。
芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編。
新たなる、決定的代表作。
(「BOOK」データベースより)

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こういう感じ、初めて!
自身があとがきでも書いているように、本作はある意味、恋愛小説ですね。
ここまで来たか、文則くん!
やっぱり『掏摸』がターニングポイントかな~。
そこを起点として、物語の幅が広がったというか、奥行きが出たというか
内容がぐっとレベルアップしてる感じがする。
主人公が缶コーヒー片手に夜中の町をうろうろする回数も減ってきた!(笑

悪への探求、殺人の意味、神の定義・・・
ずっと順を追って作品を読んできたので、すごく彼の思考体系が
分かってきたような気がしますが、それを織り交ぜての「愛」ですよ。
光の見える終わり方も、ホッとしました。

デビューして前半は、不気味でゾっとするような感覚、ヒジョーに後味の悪い
終わり方の作品が多く「この人、大丈夫か?」と何度も思ったけど
こういうの出てくると、今後ますます期待ですな



清洲会議

2014-12-05 | 映画
本能寺の変によって織田信長が亡くなり、筆頭家老の柴田勝家(役所広司)と
羽柴秀吉(大泉洋)が後見に名乗りを上げた。
勝家は三男の信孝(坂東巳之助)、秀吉は次男の信雄(妻夫木聡)を
信長亡き後の後継者として指名し、勝家は信長の妹・お市(鈴木京香)、
秀吉は信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方にする。
そして跡継ぎを決めるための清須会議が開催されることになり、
両派の複雑な思惑が交錯していく。
(Yahoo!映画あらすじより)

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大泉さんのご活躍ぶりに涙するばかりです
サイコロ振って、夜行バスで日本中連れ回されて、放送に耐えないような
ひどい顔してたのはついこの間のことのようなのに、
役所広司や佐藤浩市と対等に渡り合ってるなんて、本当に立派な役者に
なりましたね…(大袈裟か。

そもそも、日本史に強くないので、歴史上の登場人物いっぱい出てくると
よく分からなくなるんですよ。はは。
でも、そこはさすがの三谷監督。面白かったなぁ~
役者陣が錚々たるメンバーで、演技の層が厚いしね。

歴史を詳しく知っていると、更に面白く見所も違うのかもしれないけど、
十分に楽しめました!

本当の本当にちょい役なのに「ステキな金縛り」の更科六兵衛(西田敏行)が
出てくるとはね、爆笑!!
さすが、細かいところまで笑いの手を抜かない三谷作品、大好き


PK/伊坂幸太郎

2014-12-01 | 読書
その決断が未来を変える。連鎖して、三つの世界を変動させる。
こだわりとたくらみに満ちた三中篇を貫く、伊坂幸太郎が
見ている未来とは―。未来三部作。
(「BOOK」データベースより)

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「PK」「超人」「密使」の3つの連作中編小説。
オモシロかった
私は好きだったなぁ~!

でもね、あまりの複雑な伏線の張りかたに疲れちゃう時あるよね
うーーんと集中してないと、何回もページを行ったり来たりして。
見失っちゃうカンジがまた何ともいえませんが。
特に本作は、スーパーマンが出てきたり、予言のメールが来たり、って
少々突飛な構成となっていまして(まぁ、フィクションだからいいんだけど)
違和感かんじる人はいるかもね。

主義を曲げずに生きていけるか!

本作の大きな命題です。
登場人物はみんな、ぐいぐい迫られます。
そうしていただかないと「大変なこと」が起こりますよ、と。

でも、どこまで自分を曲げることが出来るのか?
それをしないと周りにどんな影響を及ぼすのか。
大変な事とは何なのか?

結局、そこがハッキリせずモヤモヤした部分はあるものの、
読後感は爽やか

「臆病は伝染する、そして勇気も伝染する」
自分が信じることを突き進めば、良いのです