今年の正月明け、読書雑誌 Lire を図書館で手に取ると、ジャン-ピエール・ヴェルナン (Jean-Pierre Vernant) というギリシャ時代の専門家のインタビュー記事 “Le sens de la vie” が出ていた。もちろん初めて聞く名前だったが、90歳で依然矍鑠(かくしゃく)としている。秘密がどこにあるのかという興味もあり、コピーして帰った。話している言葉、スタイルも洗練されている (raffiné) ように感じるが、どうなのだろうか。こういう話ができるようになればすばらしいのだが、、などと思いながら、辞書を引き引き少しだけ詳しく読む。音読して意味を手繰り寄せる。ギリシャ神話はよく知らないので深い理解には至らないが、面白い話が盛り沢山。
例えば、彼がこれまで辿ってきた道は、実は昔のレジスタンスの経験が生きていたのではないか、そこに根があったのだということを50年後に気付くという話(何が今の自分を決定的に規定しているのか、どうして今の自分になったのか、という問題)、また le nomadisme と la sédantarité の対比(要するに、放浪するのか/一箇所に定住するのか、太く短く生きるのか/細く長く行くのか、ヘルメスなのか/ヘスティアなのか、という問題)など。これらの問題はこのところ自分の中にも芽生えており、またしばらく眠っていたヘルメス的なものが再び呼び覚まされているのを感じていたので、ついつい引き込まれてしまった。それにしても、人間の原型がすべて表現されているのだろうギリシャ神話に一度も触れないで、人間理解ができるのだろうか。考えさせられてしまった。
France Culture で90歳の彼と80歳の ジャック・ル・ゴフ (Jacques Le Goff) という中世の専門家の対談が聞ける。何という贅沢。