フランソワ・ミッテランが亡くなってから10年が経ったのを機に、Le Point が特集を組んでいる。彼のもう一つの家族の娘、マザリン・パンジョについて以前に触れたことがある(8 mai 2005)。
特集では、彼に関係があった30人ほどのコメントが出ている。名前を知っている人は数えるほど。その中でニコラス・サルコジ(現在の内務大臣)は、1994年にウズベキスタンのサマルカンドに大統領と同行した時のエピソードを語っている。晩餐が終わった時、大統領は彼の方を向いて 「あなたはマルローが好きなんだろう」 と聞いてきた。それに対して、「いえ、私はヘミングウェイの方が性に合っています、大統領。」と答えると、それは面白い、と大統領は返答した。そしてヘミングウェイの後はセリーヌ、カミュ、クノー Queneau、サンドラール Cendrars などが話題に上がり、まるで試験を受けているようだった (J'avais l'impression de passer un examen.) という。大統領の文学的素養の深さに感嘆している。
マザリンの話も出ていた。彼女が高等師範 (Normale sup) に入った時は、彼は大喜びで誇り高い父親であった。何も言わずに彼女の手をとり、その甲をさするような仕草をしていたという。辛かったのは彼女が哲学の上級教員資格 (L'agreg de philo) を取った時に父親がいなかったこと。
マザリンの本を読んだ時にも感じたのだが、教養溢れる哲学的な大統領として、また第二の家庭でも父親として人生を生きたミッテランが少しだけ羨ましく思えてくるのはどうしてだろうか。一筋縄ではいかない、その複雑な人間に、人間の業とでも言うべきものを感じさせるその人生に興味が湧いてくる。
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17 septembre 2006 ブレーズ・サンドラール