フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

ジャクリーヌ・ド・ロミイ (II) JACQUELINE DE ROMILLY

2007-02-08 00:01:56 | 哲学
ロミイさんのインタビューの続きをもう少し。

LT : Il existe d'autres formes de pensée que littéraire, sans pour autant tomber dans la barbarie.

 文学以外でも野蛮に陥ることのない思想様式はあると思いますが、、。

JdR : Sans doute, mais plus simplistes, qui assènent des vérités toutes faites, pauvres et sans nuances. Et qui risquent donc de déboucher sur une pensée appauvrie, squelettique. La pensée demande des correctifs, des nuances, de la subtilité, pas des dogmes tout faits issus des fast-foods de la réflexion.

 もちろんです。しかしその場合、月並みで、貧弱で、ニュアンスに欠ける事実を突きつけるだけの単純化されたものになります。したがって、豊かさに乏しい骨格だけの考えになる危険性があります。思想には、表現を和らげるもの、ニュアンス、繊細さが必要で、ファストフードのような 「レフレクシオン」 (考察)から出てくるありきたりのドグマは必要ありません。

J'ai crée une association, Sauvegarde des enseignements littéraires, et tout récemment une autre qui est le prolongement de la première, Elan nouveau des ctioyens. Elles visent à réveiller les valeurs de la démocratie et à les remettre au coeur du débat citoyen.

 私は 「文系教育の擁護」 という組織を作りました。つい最近、この延長線上にもうひとつ 「市民の新しい躍動」 という会も。このふたつは、デモクラシーの価値を呼び起こし、それを市民による討論の中心に取り戻すことを目指しています。

LT : Vous craignez une guerre des civilisations ?

 あなたは文明の戦争が心配ではありませんか。

JdR : Ne simplifions pas, là encore. Je refuse de résumer, de schématiser les enjeux en termes politiciens qui seraient plein d'allusions anachroniques. Le danger de la démocratie, le seul, le vrai danger, c'est la démagogie... Rien n'a changé depuis le temps d'Alcibiade.

 ここでも単純化しないようにしましょう。私は、時代錯誤の匂いに富む政治家の言葉で問題を総括したり、図式化しないようにしています。デモクラシーの危機、ただひとつの本当の危機は扇動政治です。古代ギリシャのアルキビアデス (450? - 404 av.J.-C.) の時代から何も変わっていません。

LT : L'âge ne vous a pas atteinte. Vous avez une forme, une fraîcheur, un dynamisme étonnants. Et toujours le même humour, la même aptitude au bonheur de vivre. Quel est votre secret de jouvence ?

 あなたはお年を感じないくらいの素晴らしい健康と若々しさと活力、そしていつも変わらないユーモアと生きる喜びを味わおうとする心をお持ちのようですが、その若さの秘訣は何でしょうか。

JdR : La passion, pardi ! La passion de ce que je fais, de mon travail, de mes recherches, et puis l'amour, l'amour pour mon cher Thucydide. Quant à parler de fraîcheur, vous êtes très gentille, mais j'aurai 94 ans dans quelques semaines. Et je me sens plutôt défraîchie. La vieillesse est un terrible combat que l'on est sûr de perdre et que l'on s'obstine à mener. Tout se dégrade, se défait, pouah, affreux ! On peut avoir acquis des qualités de sagesse, de hauteur de vues, de courage moral, de stoïcisme (il faut bien se consoler avec des aspects positifs), mais on perd la vue, l'ouïe, la marche. Il n'y a pas de quoi se réjouir. Je reconnais cependant que j'ai toujours gardé mon humour et la capacité de rire des situations cocasses.
 
 もちろん、情熱です。自分のしていること、仕事、私の研究、そして愛、私の大切なトゥキディデスへの愛。若さについてのお言葉、ありがとうございます。しかし、あと数週間で94歳になります。ですから、むしろ色褪せていくと感じています。老いは、負けることがわかっていて必死に立ち向う酷い戦いです。すべてが衰え、崩れ、ああー、本当に酷い。賢さ、達観、道徳力、克己心などの特質を得ることはできますが (ポジティブな面にも目をやらなければ)、目は見えなくなる、耳は遠くなる、そして歩くこともままならなくなります。何を楽しめと言うのでしょうか。ですが、私はいつもユーモアを失うことなく、おかしな場面では笑うことができるようにしてきたと思っています。

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4 コメント

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老い (Nao)
2007-02-07 20:15:22
老いが問題になつていますが、1,2お話させてください。5名でフランス語の読書会をやつているのですが、30-70代までそろつています。こういう構成だと、老いは邪魔にはならず、惨めさもありません。これが5名、70代だと落ち込みますね。各年代が揃うことがなくなつた日本は老いに恐怖をかんじさせます。それと姿勢のよさは、老いを惨めにみせません。アメリカに長くいた友は75歳ですが、姿勢にいつも気をつけていますので、惨めさがありません。集団でも姿勢のいい老人がそろうと、若い方々も、未来に希望がもてるのでは。多田さんは72歳でなくなりましたが、癌をふとらせるだけだから、といつて、2週間食事をやめて、なくなりました。見事な詩人、訳者、でした。美貌と品性は格別でした。英語、フランス語が見事なかたでしたので、ポールさまにはフアンになつていただけると思います。
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精神の自由と引き換えに (paul-ailleurs)
2007-02-07 23:47:35
いつまでも精神活動を続けていくのは、おそらく体にもよい影響を及ぼすのではないかと思います。しかも老壮青がそろっているとなれば、なおさらかもしれません。私もたまに学校に顔を出しますが、いろいろな年代の方と接触できるのが刺激になっているように感じています。まだ老いの実態についてはよくわかりませんが、年とともに精神的には自由になっていくようです。ご紹介いただいた多田さんは肝もしっかりと坐っていた方のようですので、楽しみにしたいと思います。
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インタビュー時の相づち (tanguilhem)
2007-02-12 22:22:06
①「sans douteは Oui以下の肯定」と考えてきたので「もちろんです。」にひっかかり、結局、Petit Robertに戻り、sans aucun doute と同じ意味に「昔は」使われていたことを発見。最後に"Sans doute, mais..." の用例も有り、インタビュー時の相づちの例なら、「そうかもしれませんが、」程度ではないでしょうか。②こういう「副詞的な部分」は、態度と個人的「使い癖」がずれていたりすると、機械翻訳も意訳もともに危険で、「経験知訳」とでもいうものが必要になるのではないでしょうか。関連情報が集まってくることを期待しつつの投稿です。
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sans doute (paul-ailleurs)
2007-02-12 22:43:15
sans doute には、certainement と apparemment, probablement の意があるようです。この場合はその後で具体的な指摘が出てきますので、どちらでも誤解は生じないと思い、深く考えずに最初の意味の日本語にしました。自然に流れるためには、後者の方がよいのかもしれません。フランス人が話す現場にもっと触れてみたいという思いが出てきています。ご指摘ありがとうございました。

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