フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

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ケ・ブランリー美術館の哲学 MUSEE DU QUAI BRANLY ET JEAN NOUVEL

2006-07-03 22:42:22 | 展覧会

Musée du quai Branly の色使いが何とも言えずユニークだと先日書いたが、このことを Olivia Cham さんに話したところ、興味深いインタビュー記事があるからと知らせてくれた。この建物の設計者ジャン・ヌーヴェルさんが語っているものである。タイトルは "Je relie le sens et le sensible" となっている。

Jean Nouvel (12 août 1945 - )

この方、有名なところではアラブ研究所 Institut du Monde Arabe (1981-1987)、カルティエ財団 (Fondation Cartier pour l'art contemporain; 1997)、ルツェルンの国会議事堂・文化センター (Palais de la culture et des congrès de Lucerne; 1999) など、日本では電通タワーの設計している。最近ルツェルンのコンサートホールで行われたクラウディオ・アバドの演奏会をテレビで見たが、その時紹介されていた湖と接するように設計された斬新なデザインは記憶に残っている。この方の作品だとは知らなかったが。またこれからの仕事として、マンハッタンのグラウンド・ゼロに建つタワーの設計も任されていたり、サンクト・ぺテルブルグのマリインスキー劇場やコペンハーゲンのコンサートホールの仕事も決まっており、相当エネルギッシュな建築家のようである。

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今回の設計に当たっての哲学は?と問われて、他者の文化・文明のための区域 (territoire) を創造することと答えている。建物というよりはそのための場所(territoire) というイメージで仕事を進めたようだ。全的な建築 "une architecture totale" という言い方もしている。公園が全体の三分の二を占め、ギャラリーはセーヌ川の曲線と共鳴し、テラスはエッフェル塔の日陰になるという素晴らしい立地条件である。建物が平凡なので、色や光、細部で勝負したようだ。色使いが特徴的だったのは彼の哲学の現れであったことがわかる。

アフリカ・オセアニア文化の美術館では、例えばマスクなどはそれが本来あるべきコンテクストから抜き取られて、芸術作品として展示されることになる。しかし彼は芸術作品として扱わないと言う。そのものが感情を揺さぶる力を維持していること、またそのものがある状況 (踊っている人の顔にあるマスク) を想像することが重要になるので、そのための映像や文献も用意しているとのこと。人類博物館とアフリカ・オセアニア博物館のサンテ―ズをこの美術館はしている。"Ce musée fait la synthèse entre le musée de l'Homme et le musée des Arts africains et océaniens."

最後に今日の建築を揺り動かしている問題は?と問われて、"le conflit entre architecture générique et spécifique" と答えている。彼は建物が建つところの地理や歴史との対話なしに、土地の人との協調なしに、いつも同じような形を落下傘で落すようなやり方で世界を矮小化するのには反対。仕事はいつも冒険であり、探検でなければならないが、90%のプロは場所に対する意識がない、と厳しいお言葉。

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オリヴィアさんによると今は大変な人出で、行きたいという気にならないらしい。私が行けるようになる頃(があれば)には落ち着いていてほしいものである。

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