フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

ヨーロピアン・ドリーム

2005-04-16 00:40:02 | 哲学

去年、本屋の立ち読みでフランスの雑誌をいろいろ見ている時に、Le Point が自分に合っていると思った (lundi 22 novembre 2004)。英語で言えばTIMEに当たるような感じか。今年から購読を始めた。毎週月曜に手元に届く。最初に開く時はわくわくする。まずざーっと目を通すと、嬉しいことに頭にすんなりと入ってくる記事が必ず見つかる。それを時間があるときに少しじっくりと読むということを繰り返している。観光、食事、文学、科学など、どのテーマでも視点が微妙に違うので読むと面白いし、逆に彼らはどういう頭の中をしているのか、という疑問を持ちながら読み進むということもある。中には仕事を通して知り合った友人が出てくることもあり、ついつい時間を忘れる。フランス語を始めて本当に良かったと思う瞬間だ。


今週の話題で興味を持ったのは、ジェレミー・リフキン (Jeremy Rifkin) というペンシルバニア大学教授で経済関連の財団も運営している人が最近出したアメリカとヨーロッパについて比較文化論 「ヨーロピアン・ドリーム」 (Le rêve européen)の紹介記事である。彼はこの30年間アメリカとヨーロッパを往復して生活しているという。原著の The European Dream は去年の夏に出ているが、この記事は4月にフランス語版が出たのに機を一にしている。結論的に言ってしまうと、アメリカン・ドリーム (Le rêve américan) が行き詰まりを見せているが、これからは彼が言うところの "Le rêve européen" が大いに参考になる。ヨーロッパが la nouvelle "terre de toutes les opportunités" になる可能性があるという。


...j'ai longtemps pensé que, Européens et Américains, nous étions d'accord sur les choses fondamentales. C’est faux. En fait, nous sommes deux membres de la même famille qui se sont séparés il y a deux cents ans. Nous avons deux façons très différentes de voir le monde. Le rêve américain, c'est un pays dur, mais beaucoup d’opportunités. Chacun est responsable de sa vie. Point. Le rêve européen fait passer les relations communautaires avant l'autonomie individuelle, le diversité culturelle avant l'assimilation, la qualité de vie avant l'accumulation de richesses, le développement durable avant la croissance matérielle illimitée, l'épanouissement personnel avant le labeur acharné, les droits universels de l'homme avant les droits de propriété.

(私は長い間、ヨーロッパ人とアメリカ人は基本的なことでは同意していると考えていた。しかしそれは誤りである。実際は、われわれは200年前に分かれた同じ家族の2つのメンバーである。非常に異なる2つの世界観を持っている。アメリカン・ドリームは非常に厳しいが多くの機会に恵まれる。各自が自分の人生に責任を持つこと、それだけ。ヨーロピアン・ドリームは個人の自立の前に共同体の関係を、同化の前に文化的な多様性を、富の蓄積の前に生活の質を、無限の物質的な蓄積よりは恒久的な発展を、仕事に熱中するよりは個人的な成熟を、所有権よりは人間の普遍的な権利を重要に考える。)

アメリカの機会の多さ、openness。他にはこういうところはないだろう。入り口はオープンで機会は与えるが、後は自己責任でおやりなさいということだろう。ヨーロッパは日本と同じかそれ以上に機会が少なく、閉鎖的である。裏を返せば、より共同体的発想があり、中にいる人にとっては住みやすく、生活にも潤いがあるということだろうか。


今ではアメリカ人の半分はアメリカン・ドリームを信じていないという。ただ心配するには足りない (N'ayez pas peur!)。ヨーロッパで今進行中の L'Union européene という新しい市民権 (une nouvelle forme de citoyenneté) を生み出す可能性のある革命的な (réellement révolutionnaire) 実験の成り行きを見守ることで、重要なことがわかるかもしれない。と、アメリカ人には言いたいらしい。


フランス語版でも読んでみようか、と思わせるお話であった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Paul Auster 再び | トップ | ギュスターヴ・クールベ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

哲学」カテゴリの最新記事