大震災の痛手にも関わらず、神戸は市の名前
そのものがブランドたり得る街である。
いわく神戸ウォーター、神戸カレー、神戸ワインetc。
なかでも神戸ビーフがインターナショナル。
昨年の7~8月にかけて、ドイツへ行き、現地の
病院で人工透析を受けた。計7回。英語が通用
すると事前に聞いていたのに、誰ひとり英語
なんかしゃべらない。
当たり前のようにドイツ語で、他の患者と同様に
扱われるのには参った。
ボクは1968年に8週間だけ、ミュンヘン郊外の
田舎村にあったゲーテ・シューレでドイツ語を
学んではいる。しかし8週間だけのことで、それから
37年経っていた。
アウグスブルグの外れにある病院なんかに日本人の
透析患者なんか来るわけがないから、珍しがられて
医者だのナースだの次々やってきては、しょうもない
質問をする。
「神戸から来たらしいな」
「地震が凄かったな、TVで見たよ、高速道路が
倒れてた」
「ところで聞くが、神戸ビーフってのは、そんなに
美味いのか」
「知らんなぁ~」
「あんた神戸の住民だろう、なぜ神戸ビーフを知らん」
「食べたことがないから」
「なんで」
「高いから」
「地元のビーフがなぜ高い」
「知らんなぁ」
「なんで」
「ボクは牛を飼ってる農家でもないし、レストランの
経営者でもないから」
「震災の写真をTVで見たが、あんな近代的な都市の
どこに牛が居るんだ」
「神戸には牛なんか居ないよ」
「どこに居る」
「山を越えたら農村地帯が広がる、そこで飼われた
牛が神戸のレストランでステーキとして供される」
「あんたが食べられんぐらい高いって、どれほど高い」
「聞いた話では、そうだな一人前が100ユーロは
する」
「え~っ! 100ユーロ? それは高いなぁ~」
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