杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

レメディを考える

2011年01月24日 | 悪徳
前回のエントリーでは現役の医師の方がレメディを処方しているという事例を紹介したのですが、ホメオパシー団体の中でも「日本ホメオパシー医学会」などはホメオパシー治療は医療であるので医師が行うべきであるとの立場をとっており、現実にホメオパシーを行っている現役医師は多く存在しています。
このホメオパシー治療で薬の代わりに使用されているのがレメディというものです。
これは健常者に投与すれば毒となるような原物質を水とアルコールの混合液で限りなく薄めたもので、その液体を砂糖球にしみ込ませたものが日本では主に用いられているようです。
このレメディというもの、薄めれば薄めるほどその効果は高くなると称されているのですが、果たしてこれはどこまで信頼出来るものなのでしょう?
かつて当ブログではホメオパシーについてこんな考察を行いましたが、今回はホメオパシーを用いている医師の問題からは一歩向きを変え、このレメディという製品に絞って再び考えてみたいと思います。

まず初めにこちらのサイト(キャッシュ)を参考に見てみますと、一般的にレメディにはこのような種類があると言われています。
  
でもその原料などを見てみますと、「スペイン蠅」とか「南米の毒蛇」とか何やら訳が分からないものまで含まれており、対象となる症状などはその因果関係などまるで示される事なくただ羅列されているだけです。
また、危険性はないのかどうか調べてみたら、「日本ホメオパシーセンター本部」では、
> レメディーは原物質の情報しか含みませんから、万が一レメディーを間違えてとってしまっても、体に害はありません。
と言い、同様にこちらでも
> レメディーの選択を誤った時はよくも悪くもなんの反応も起きないことがほとんどです。
と述べています。
でも「日本ホメオパシー医学会」では、
> 西洋医学的な意味での副作用はないといえます。しかし、割合は低いものの、レメディが本来持っている病気や症状の像を引き起こしてしまう、つまりプルービングという現象が起きることもあり、危険な場合もあります。
とも言ってます(強調は引用者)。
「どっちやねん!」
というツッコミが思わず入りそうになってしまいますが、かようにホメオパシー団体毎に言う事も違い、こちらとしてはその信用性に思わず疑問符が付いてしまいます。
にも関わらず、これを使用している医者もホメオパス達もみな、この【レメディそのもの】については不思議な事に何の疑いも抱いていないんですね。
つまり、「A」というラベルのビンの中には常に「Aのレメディ」が入っていると思い込んでおり、誰もその事に疑問を抱く事がないのです。

言うまでもなくラベルというのはその商品の顔であり同時に中身の説明でもあります。だからこそラベル表記には嘘がないよう、厳しい法律まで用意されている訳です。
例えば医薬品の場合などは、それが実際に使用されるまでには様々な試験とチェックを受けており、そのためそのラベル表記は信頼する事が出来るという訳で、医師達もそのラベル内容を何も疑う必要がないという訳です。
ではレメディは?
レメディにおけるラベル表記は果たしてどこまで信用できるのでしょうか。

レメディを一つの製品として見た時に私が問題と感じるのは、レメディがすべて【手作業】で作られているという事です。
普通、科学の世界で「絶対」という言葉が使われる事はそうそうありませんが、現実の社会生活の場ではそう断言出来る事は存在するのです。これもその一つ。
「人は必ずミスをする」のですね。
私は長い間生産の現場にいます。そこで一番苦労しているのはいかに『人為的ミス』を無くせるかという事です。
でもどんなに様々な対策を行ってもどうしても無くせないミスというのがあります。それが「思い込み」というものです。
はっきり言って人間からこの「思い込み」というのを無くすのは不可能であり、それを避けるために別人によるダブルチェックとか、無作為抽出によるサンプル調査などが行われる訳です。
そして時として、そのチェックさえもすり抜けてエンドユーザーまで届いてしまった物が欠陥品として世に出る事になり、企業はその信頼回復に多大な犠牲と努力を負う事となるのです。
ですから通常の企業では社内チェック体制というのに大きなウェートを占めています。
製造段階の各工程の要所要所でチェックを入れるのは当然の事ですが、一番重要なのが出荷直前の最後の最後、〔完成品〕の製品チェックです。
これは医薬品のみならず、日頃我々がお世話になっている食品やサプリメントなどでも同様の事が行われている事は誰もが知る所です。

ところがレメディというものはその原理上、このチェックを行うのは不可能なのですね。

何せ中身はどれも「ただの砂糖玉」ですから、たとえ出来上がった製品のどれかを調べたとしても、そのラベルが「A」だろうと「B」だろうと「C」だろうと、中身は皆同じで区別は付かないという訳です。
つまりレメディというものは(もし本当に違いがあるとするならば)、それはビンに張られたラベルでしかその中身を判断する事は出来ません。
さてそうしますと、「A」のラベルが貼られたものが確かに「Aのレメディ」であるという事を確認するにはどうすればいいのでしょうか?

先ほども述べた様に、レメディはすべて手作業で作られています。こちらの動画など見てみますと、製作するその数は(説明が正しければ)年間150万本(所蔵は800種)だそうです。
これだけの数と種類をすべて手作業、それも瓶詰め作業はわずか6~7人、常識的に考えてこれで一つもミスなく作業が進められるとは到底思えません。
しかしながらこの動画を見る限りでは、作業員各々がそれぞれ独立して作業を行っている様で、それをチェックする部署の存在は確認されません。
それではもし、ラベルや中身の取り違えなどが起こった場合、一体どのような対処がなされるのでしょうか?
はい、その通り。何もなされません。そもそも発見すらされないのですから。
誤ったラベルが貼られた製品は、その「思い込み」は「思い込み」のままそれが正される事なく世に出る訳です。
そしてそれが正規品として、ユーザーの手元に届くという事になるのですね。

今私が語った事はあくまで極端な最悪のケースを想定したもので、こんな事が実際に起こっているという訳ではありません。
しかし作業の現場では常に最悪のケースを想定してチェック体制が組まれるものです。
ところがレメディは、一番肝心な現品チェックが何もなされぬまま世に出ている訳です。おまけにこんな作業風景など見せられますと、生産管理の目から見たらこれほど杜撰なものはないとも言えるものです。
果たしてレメディのこの表記ラベルは信用してもよいものなのでしょうか?

ホメオパシーは医療の分野でも、それを代替医療として推奨している医師もいます。でもその医師達は無自覚にも、杜撰な管理体制のあのレメディのラベルを、あの厳しいチェックを受けた医薬品と同様の信頼感を持って見ているのです。
医薬品メーカーの人がこの姿を見たら、失笑するか或いは泣いてしまうかどちらかの事でしょう。
しかしそもそも、そういう医師やホメオパス達は、レメディのラベルを疑う事など想像も出来ないのですね。
もし自分が選んだのが「A」だと思ったのが実は「B」であり、それが効いたとなれば、医師は実際は「B」が効いたにも関わらず「A」が効いたと思い込んでいる訳で、以後はそれに従ってずっと誤った診断をしていく事になる訳です。
これは医師だけではなく、ホメオパスやエンドユーザーに至るまで、実は皆誤ったレメディを使用して、それで効果があったと言っているという事もあり得る訳です。
そうなると、前述の一覧表にあるようなレメディ毎の効能などは、実はまるで無意味だった事になります。
つまりレメディそのものの信頼が失われた時、ホメオパシーの理論は根底から瓦解してしまうのです。
だからこそホメオパシーではまず、レメディそのものは絶対に正しいというのがすべての前提となっていて、だから信奉者達は皆、それに疑いを抱く事すら思いつかないのです。
レメディのメーカーにとっては、これほど安心出来る「お客様」もないと言う訳なのですね。

このレメディという製品から改めてホメオパシーを考えてみますと、これは初めからすべて「思い込み」だけで成り立っている事が良く分かります。
まずは初めのホメオパシーの理論からして創始者ハーネマンの単なる「思いつき」であり、試してみてそれが効いたと「思い込み」、それにより自説が正しいと「思い込み」、患者自身も医師からそう言われた事によりその治療が効いたと「思い込み」、そしてそのレメディが効果ありと「思い込み」、その作り方が正しいものと「思い込まされて」現在に至っている訳です。
そしてその「思い込み」はやがてイギリス王室にまで広がり、それがまた人々に、ホメオパシーは王室も認めたぐらいだから効くのだという「思い込み」を生じさせたという、ホメオパシーの歴史はまさに、「思い込みの連鎖」で成り立ってきたのですね。

現在ではレメディに効果があるという事は科学的にも否定されています。そしてそれは、サイモン・シン「代替医療のトリック」でも論破されています。
こちらのブログでその内容が紹介されてますが、その中では「患者に及ぼす効果は全面的にプラセボ効果であることがわかっている。」とばっさりです。
管理人さんはこの事を、
>「レメディに特異的な効果は無い」、即ち「レメディは効かない」と同義です。
と解説していますが、勿論これは正しいのですが、自分はもう一つ別な見方をしています。それは、
「レメディとは、偽薬と同じただの砂糖球である。」
という解釈です。
つまり、「A」も「B」も「C」も中身は皆同じ、そして偽薬とも同じなのですからその効果も同じであるのは当たり前であるという事です(後では「ホメオパシーのレメディには中身がなく」とか「純粋な偽薬」とも書かれています)。
このただの砂糖球を本物らしく見せかけるため、業者は細かな注意事項を提供する事によりその信憑性をユーザーに植え付けるのです。
曰く、
・レメディーはデリケートであり、手で直接触れないようにしてください。
・香水など香りの強いものは表面のコーティングに影響を与え、効力を無くす可能性があります。
・レメディーは乾燥した冷暗所に、強い臭いを発するものからは離して保管してください。(以上「日本ホメオパシー振興会」)
・但し、コーヒーや香りの強いもの(ミントが含まれている歯磨き粉等)は、レメディーに影響を与えることがありますので、レメディーを摂る前後20分ほどは、避けるようにしてください。
・レメディーに触れると、多少触れた指からもエネルギーが入ってしまいます。
・電波の強いもの「パソコン、テレビ、冷蔵庫」の近くにレメディーを置かないでください。(以上「日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)」)
・ホメオパシーは飲食物とともに摂取してはいけませんし、タバコや香りの強い食べ物、歯みがきなどで口中が「汚染」されている時を避けます。
・レメディは手で触らず直接口の中に入れ、噛むか口中で溶かします。
・飲み込んではいけません。(以上「Fairdew of London」)
等など…。
このように細かな指示をする事により、ユーザーにこれは特別なものであるという意識を植え付けている訳です。
そもそも「電波の強いものの近くに置かない」事など、ハーネマンの当時にはこんなものはなかった訳ですから、これは現代事情に合わせて後から付け加えられた注意書きであって、勿論何の根拠もないものです。
事実、こちらの質問16では、
・当社取り扱いメーカーであるヒリオス社、エインズワース社、ネルソン社に問い合わせたところ、3社から「電磁波による影響について慎重に検査した結果、エックス線によるレメディへの影響はない」との回答をいただいております。
とも述べられており、団体によって言う事もバラバラ、これだけでもレメディそのものがいかにいい加減であるかが分かります。

我が国にはレメディが入ってくる以前に、すでにこういうものが売られています。そしてこのような批判も行われています。
レメディもまた、水が現物質の情報を記録するとされています(→これ)。
そこには水に写し取られた「高度の情報」のみが入っているのです。良い知らせ(情報)が人を健康にしたり、悪い知らせが人を病気にするように、レメディーに宿っているところの「高度な情報」が、私たちの「健康への秘密のキー」を開けてくれるといっても良いでしょう。
「波動水」とどこが違うのでしょうか?
唯一の違いは、「波動水」は初めから商売として提供されているもの、レメディは(外国で)医療品として扱われてきた歴史がある事、それだけであってその内容は実はどちらも同じなのです。

「外国」、「歴史」、「王室御用達」、「保険適応」

レメディの正当性を叫ぶ人々の根拠はこれらの冠しかありません。そしてその冠が人々をそう「思い込ませて」いただけで、実は根拠などは初めからなかったのです。

私が知っているもう一つの例を紹介しましょう。
ここにとある微生物資材があります。それは自然界に存在する微生物を共生させた画期的なもので、三次元波動を持ち不思議な力があると言われています。
これは農業のみならず、環境や医療・建築などあらゆるものに効果があると言われ、その評判は段々広まっていきました。
それを使ったNPOがネットワークを作って宣伝し、やがて学校や自治体でも利用されるようになり、それがマスコミに取り上げられ、あまつさえ議員さんでさえその効果をそのまま信じてしまい、その評判はますます広まっていきます。
でもよくよく見てみれば、果たして本当に効果はあるのか、それをちゃんと検証している人はいなかったのです。
人々はただ、【学校】とか【自治体】とか【議員さん】とかが広く使っているから効くものと「思い込んでいた」だけだったのです。
この微生物資材の業者は更にその評判を広めるため、「インストラクター」という資格講座を開設します。
これは金銭を払い、講座を受講すれば誰でも取れる資格であり、中ではこの資材の優秀さやら原理などを事細かく教え込まれ、受講者はすっかりそれを信じ込まされてこの資材の効き目に何の疑いも抱く事なく、優秀な販促員となって各地に散っていくのです。

ホメオパシーを見た時、見事にこれと同じ構図である事が分かります。
製品を売るためにはまずそれを信奉する「信者」が必要となります。業者はこの神秘的な効果を外国の事例を上げて宣伝し、「王室」とか「保険適応」などという言葉で信用させます。
そしてその気になった人に対し、今度は業者は高いお金を払わせて講座を受けさせ、「ホメオパス」という販促員を教育します。
ホメオパスとなった人達は、ただ本心から人々につくすつもりで今まで教わった教義を広げます。勿論その内容を疑う事など出来るはずもありません。
そしてそのホメオパスの人柄に触れた人達はまた一人信者となり、こうしてレメディメーカーのお得意様となっていくのです。
時には、医師免許を持った本物のお医者さんや芸能人もまた、販促には大いに活躍してくれます。この本物の医師というのが、信用に関わる非常に重要な鍵となります。
しかし医師に関しては、その専門性が高ければ高いほど歩み寄るのは困難になります。
だから業者は、その矛先をより垣根が低い助産師とか歯科医師などに向けるのです。
ちょうどあの微生物資材の業者が、政治家に歩み寄るように。


ホメオパシーをレメディという一つの製品の立場から眺めてみると、見事に「ある種の商売」と同じ構図が浮かび上がります。
そもそもホメオパシーは、確かに昔は医療の分野で用いられましたが、現代医療の発展と共に一度は消えてしまった療法でした。それが現在になって、多くのレメディのバリエーションと共に復活してきたものです。
こちらのホメオパシーのサイトで詳しい歴史が語られています。その最後の部分を紹介しましょう。
FDA(米国食品医薬品局)の消費者向け雑誌によると、
1970年代後半から80年代前半にかけて、
ホメオパシーのレメディーの売り上げは10倍に増えました。
1990年代に入ると、ホメオパシーのレメディーの売り上げは、
毎年20~25パーセントの割合で伸びています。

世界全体でホメオパシー市場は1450万ドルにも達し、
毎年25パーセントの割合で増大しています。
業者にとってレメディとは、いかに美味しい製品である事でしょうか。




※この項のタグは敢えて〔悪徳〕としております。
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2 コメント

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拙ブログへのコメント有り難う御座いました。 (ono_okayama)
2011-01-28 14:43:20
ono_okayama(at 作用機序不明)です。初めまして!こんにちは!

感想と云う程のモノは在りませんが、貴コメントへのリプライは自ブログのコメント欄に書いておきました。

この度は有り難う御座いました。
Unknown (Unknown)
2013-05-11 13:47:28
漢方薬にも同じ事が言えるのかな、と思いましたが、比較しないのですか?

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