杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

なぜEMが効かないのか?(後編)

2012年08月20日 | EM

 

(「はてなブログ」に引っ越しました。該当エントリーはこちらです。)

 

サン興産業のメッセージを詳しく読んでいく内、私の中に数多くの疑問が湧いてきました。
このメッセージによりますと、世間一般で広く「EM」と呼ばれている微生物資材は実は「サン興EM」と「比嘉EM」の2種類が存在し、その内容もどうやら違うらしいという事です。
ではその資材の中身は一体どう違うのか?
なぜサン興産業は、比嘉照夫否定ともとれるこの様な内容をあえて披露したのか?
後編ではこの事について考えてみたいと思います。

そもそも「サン興EM」と「比嘉EM」は一体どこが違うのでしょう?
色々探してみた所、こちらのEM製品販売サイトの中で注目すべき資料が紹介されていました(魚拓)。
 (キャプチャ画面) ↓
   
なんと、1ml中の菌数を比べてみると、「比嘉EM」は「サン興EM」より文字通りケタ違いに少なかったのです。
さらにこちらのサイトではこれが一覧表の形で紹介されており、それを見ると菌数の違いが一目瞭然となってます。
この菌数の差は、ここの説明によるとどうやら「手作り」と「オートメーション」の差によるもののようです(魚拓)。
そしてそこでは、サン興産業の工場長がこうも語っているのです。

今EM業界で行われているような機械培養や、どこかのメーカーがやっているようなオートメーションのEM製造ではEMの本当の力が現れにくいのは間違いありません。

またこちらでは更に、比嘉さんがいつも言っていたEMの中身、「5科10属80種の菌」という事さえも否定されています(魚拓)。

なおEMは、5科10属80余種の菌の集合体と言われておりますが、実際は乳酸菌2種、酵母菌、光合成細菌2種、系状菌、放線菌の7種が主体であります。
EM製造時や開封時に、空気中に存在する多種多様の菌が混入増殖し、結果的に80種類以上の菌の集合体になるということのようです。

そしてこちらのEM製品販売会社「ミントグリーン」でも同じ文言が引用されてます(魚拓)。
これを見るとこの「EMライフ」と「ミントグリーン」とはどうやら同じ販売元の様ですが、成分比較といい、ここまであからさまに「比嘉EM」を否定する様なネガティブCMがあったというのは驚きです。
勿論、「比嘉EM」の中身がこんな有様であったとなると、比嘉さんがいつも語っている「三次元波動」など、一体どこに存在するというのでしょうか。
それにもしそれが存在するのなら、「比嘉EM」よりも「サン興EM」の方が遥かに高い波動値になると思われるのですが、比嘉さんは果たして何と言うのでしょうか。

そして、最近は何かと放射能と縁がある「EMX-GOLD」でさえも、ここではこんな解説が行われているのです(魚拓)。
 (キャプチャ画面) ↓
   
このWebエコピュアの記事とはこれですね。ちなみに、これに引き続いてこちらでも比嘉さんは同様の事を語っています。

改めて述べるまでもなく、EM・Xゴールドは従来のEM・Xの5~6倍以上10倍弱の「波動レベル」にあり、O(オー)リングテストでも簡単に確かめられるようになっています。

これがDNDの方になると、こういう表現に変わります。

 EM・Xは、その後、改良に改良が加えられ、日本では、EM・Xゴールドとして市販されているが、現在のEM・Xゴールドは、実験に使われたEM・Xの5.6倍、80℃以上に加熱して適当な温度で飲用すると10倍以上の効果があることも確認されている

このように、見事に「波動」やら「O-リング」などという単語は隠されている訳です。
また、放射能とEMの関係についても、ここではEMXゴールドをきっぱり否定しています。
 (キャプチャ画面) ↓
   
「萬寿のしずく」PDFチラシ魚拓
ここでは「チェルノブイリのかけはし」と述べられていますが、では比嘉さんはこの事を自説の中ではどう語っているのかちょっと見てみましょう。
『比嘉照夫の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境「第39回 地震災害後のEMの活用」』より

5.放射能汚染対策
 この原稿を書いている現在、福島第1原発の状況がどうなるのか見極めがつきませんが、チェルノブイリのような最悪の状態になったことを想定して、その対策を提案します。

 EM研究機構はチェルノブイリ原発事故から今日まで、その風下で被災したベラルーシに於いて、ベラルーシ国立放射線生物学研究所と共同で、EMによる放射能対策について研究し、様々な成果をあげています。その要点は以下の通りです。

1)被爆者がEM・Xゴールドを1日30cc~50ccを目安に飲用を続けると、30日内外で、外部被爆はもとより、内部被爆(放射物質が体内に 入った状況)も正常に戻る。その後、飲用を中止しても再発は起こらない。我が国では広島の原爆症の方々でもその効果は確認されています

 このことは、マウスの実験でも確認されており、データの大半は公開されています。いずれも、EM・Xゴールドの持つ抗酸化作用と非イオン化作用と二次元の有害な放射線エネルギーがEMの持つ三次元波動(ヘリカル構造)によって無害化されるためです。

ご覧の様に、今まで「EM・X(=萬寿のしずく)」で散々宣伝してきたものを、それが現在はEM研究機構が製作している「EMX-GOLD」であるかの様に語っている訳です。
また、以前書いたエントリーでは生産者側のサイドからしか述べませんでしたが、EMXをめぐるトラブルは実は販売サイドでも発生していました。
沖縄埼玉県に「アセロラ倶楽部」という自然食品を売る店があります。そこでは以前から「EMX」を販売していました。
そのEMXが「萬寿のしずく」となり、新しく発売された「EMX‐GOLD」とセット販売していた所、突如供給元であるEM生活からこの様な書類が届いたのです(魚拓)。
当初交わした契約(H17年)ではEMXの類似品は売らないという約束で、そのEMXが「万寿のしずく」に代わっただけなのに、H20年に発売された「EMX-GOLD」がこの契約上のEMXとされ、「万寿のしずく」は類似品扱いされてしまって、ここの販売会社ではその後「EMX-GOLD」の供給を受けられなくなってしまったのです。

萬寿のしずくを併売する会社には、EMXゴールドは販売しないというEM生活の企業姿勢に疑問を感じます。

という販売主さんの主張にあるように、EMサイドの強権とも見える姿勢にはやはり疑問を感じざるを得ません。

サン興産業メッセージによると、当初EM(=サイオン)はサン興産業が製造し、その普及拡大に自然農法研究所 (現公益財団法人自然農法国際研究開発センター )が協力、後にここから分かれたEM研究所が比嘉さんの協力で独自のEMを製造・販売し、今日に至ります。
この過程を年代順に整理してみますと以下の様になります。

 ・サイオンEM発売(サン興産業) 1983(昭和58)年
 ・EM海外発表(カリフォルニア「第6回世界有機農業国際会議」) 1986(S61)年8月
 ・「サイオン」商標登録出願(サン興産業) 1987(S63)年3月31日(登録番号21768992)、登録日1989(H1)年10月31日
 ・EM研究所設立 1991(H3)年4月1日
 ・EM-1(比嘉EM)発売 1993(H5)年3月1日
 ・「地球を救う大変革」(サンマーク出版) 1993年10月20日→30万部のベストセラー
 ・「EM・X(=現「萬寿のしずく」)」発売 1994(H6)年6月
 ・EM研究機構設立(100%大株主:比嘉照夫※) 1994(H6)年8月1日
 ・「EM」商標登録出願(EM研究機構) 1994年12月16日(登録番号4202299)、登録日1998(H10)年10月23日
 ・「EM・1」商標登録出願(EM研究機構) 1999(H11)年8月11日(登録番号4427622)、登録日2000(H12)年10月27日
 ・「サイオンEM」商標登録出願(サン興産業) 2003(H15)年9月17日(登録番号4777285)、登録日2004(H16)年6月11日
 ・「EMX・ゴールド」発売 2008(H20)年1月
   ※ 2005(H17)年3月31日現在(→資料PDF
こうして並べて見てみると、ある事が明らかになってきます。
「EM-1(比嘉EM)」の発売が1993年3月1日、その僅か半年後に「地球を救う大変革」が発売されているのです。
この比嘉さんのベストセラー「地球を救う大変革」の中では様々な成功例が紹介されていますが、本の製作期間を考慮すると、それらの成功例はすべて「比嘉EM」ではなく「サン興EM」、つまり「サイオン」による事例であったという事実です。
そして、これまでEMXの事例を見てきた私の頭をよぎったのは、この本はEM普及のためというよりも、新たに自分が開発した「比嘉EM」の宣伝のため、今までの「サン興EM」の実績を利用しただけなのではないかという疑念です。

サン興産業メッセージではこう述べられています。

EMは微生物で生き物だと言う事は、皆様は知っていると思います。でもどの様な環境下でEMが働いてくれるかは考えないと思います。EMに活躍してもらいたければ、EMの活躍できる環境を考え整えなければなりません。EMが活躍できる環境でなければいくらEMを大量に投入しても結果は出ないと思います。

この考え方は、EMと言えども中身は普通の微生物であって常に周囲の環境に左右されるものであり、それが周囲の環境を変えるほどのスーパー微生物ではないという事を訴えている訳です。
私が感じるのは、これまでEMを広く普及させるのには、実際かなり無理をしていた部分があったのではないのかという事です。
比嘉さんの第一の目的は何と言っても「EMの普及」です。その一環としての「EMの神格化」という作業が大きな効果を上げてきた事は間違いありません。
しかしその広報活動の中に、他人の実績までもすべて自分のEMのおかげだとする、極めて利己的な思想が生まれてはいなかったでしょうか。
EMによる環境活動でも、行政の事業や他のNPOの存在を無視し、効果があったのは皆自分らが行ったEM活動のおかげとしている例を多数見かけます。
それはそのまま、EMが内在している根本的な危険、つまり「盲信」への扉を開く思考でしかありません。
最近の比嘉さんの発言を見てみますと、かなり強引な印象を受けてしまいます。

EMは、そのいずれにも該当せず、科学的検証はまったく必要なく、各試験研究機関もEM研究機構の同意なしには、勝手に試験をして、その効果を判定する権限もありません。

これなどは有無を言わせぬ、まさに「強権」とも思われる様な発言であり、EMを否定するものは情け容赦しないという固い決意すら感じてしまいます。
私が案ずるのは、この発言に触発されたEMユーザーが、他者からの意見に聞く耳を持たなくなり、どんどん暴走を始めてしまうという事です。
事実、当初は家庭内や限られた閉鎖環境でしか使われていなかったEMが、今や海や河川にどうどうと大量に投入されている姿を見るにつけ、これが暴走と言わずして何なのかという思いに捕われてしまいます。

サン興産業のあのメッセージは、苦労して誕生したまるで我が子とも言える微生物資材「サイオン」が、他者によって「EM」と名付けられ、それがやがて周囲から崇め奉られ、自分が思うのとは違う方向へ暴走していく様をただ見るだけとなってしまった親としての焦りと不安、そしてこんな姿に育てられ、あげく我が子の手柄がただ利用されただけという事に対する、怒りを込めた心からの叫びではないのか、そう私は感じます。

これまでEMの生い立ちを見てきて尚且つ比嘉さんのあんな発言を見る度に、彼の著書「甦る未来」で述べられている以下の言葉を、私はつい思い出してしまうのです。

「甦る未来」(サンマーク出版2000年8月10日初版)より

(p.191~193)
【EMを上回る微生物の研究を大歓迎する】

 このようにEMは世界各国ですばらしい広がりをみせています。しかし、私がいくら世界の国々のために役立とうと思っても、自分一人では何もできません。私にとって幸せだったことは偶然にもEMを開発し、その万能的な可能性を知ったことと、それを軸に志をいっしょにする大勢の人々と出会えたことです。
(中略~)
 だからといって押し付けるような性質のものでもありません。私たちは「こんなすばらしいものがあります。EMはこんなすごいことをしてくれるんですよ」と紹介し、使う人のお手伝いをしているのです。だから、もしEMよりもすぐれた有用微生物が出てくるなら、私達は現在のEMは即刻やめて、そちらを応援するでしょう。ただし、EMは完全なる共存共栄のフォームをもっていますので、いかなるすぐれた微生物が発見されても、それは新しくEMの仲間になるだけです。したがって、EMを上回る微生物の研究は大歓迎です。そのような意味で、EMはグローバル・スタンダードなのです。


2012年現在、EM研究所ではEM1ばかりではなくEM2・EM3も発売されていて、それを用いた農業指導も行われており、比嘉さんはますます精力的に「比嘉EM」を宣伝しています(→こんな具合に)。

(終わり)


(8月22日 追記)
記事中、「アセロラ倶楽部」の所在地を沖縄県としていましたが、埼玉県の誤りでした。謹んでお詫び致します。



5 コメント

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ロールモデル (pooh)
2012-08-21 09:40:30
ニセ科学で見られる事例としてけっこうあるのは、主唱者のカリスマ性みたいなもので信奉者をひっぱる、と云うやりかたですよね(でまぁ、さまざまなニセ科学が寄り集まる理由のひとつに、主唱者が相互にたたえあうことで見た目上のカリスマ性を高め合う手法を用いること、があるようにも思います。船井幸雄による「本物」認定とか。あやしい情報商材の販売者がよく使う手法ですね)。

そうすると、主唱者の言動は信奉者のロールモデルになる。日本ホメオパシー医学協会なんかが典型ですけど、EMについても同種の構造があるのかもなぁ、みたいに思ったりします。
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Re:ロールモデル (OSATO)
2012-08-22 00:41:19
>poohさん
>主唱者が相互にたたえあうことで見た目上のカリスマ性を高め合う手法

これ、よく船井ファミリーの間でやられてますよね。こんな本みたいに。↓
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1101298136/subno/1
比嘉さんがDNDに潜り込めたのも、もしかしたらそういう事によるものだったのかもしれませんね。

>主唱者の言動は信奉者のロールモデルになる。

ここが一番注意するべき所でしょうね。
これが、教育者とか議員さん等指導に携わる側がそうなった時が最悪で、この事がニセ科学を広く蔓延させてしまった大きな要因であると思っています。
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サイオンでは、Ph3、9まででもいいらしい、 (Unknown)
2012-08-27 18:58:40
サイオンさんの活性液は、Ph3,9くらいまでいいらしいが、問題だと思います。

EM研究機構では、Ph3,5以上のものはEMとしての効果が期待できないとしていますが、サイオンさんでは、Ph3,9以下までのようですが、サイオンさんのものでは、Ph3,5以下は作ることが難しいから、Ph3,9なのでしょうか?

サイオンの培養では、発酵しにくいから、EM1を10%とするしかないのでしょうね。
サイオンの菌数がどこより多いなら、発酵がいいはずですが、10%でも、発酵が悪いですし、ニオイも悪いですよ。

何処に問題があるのか、気がつかないということは、それを解決して伝える人もいないということでしょうか?

喧嘩を売ってる割には、お粗末です。
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ほぼ毎日葉面散布 (ひとまず実行してみて。)
2016-12-13 17:59:51
光合成細菌と、えひめAIを散布し続けると、野菜の葉の艶と手触りが変わります。

生理障害、病気が少なくなります。

こうして書いても、絶対に伝わらないので、実際に1年通して、否定されているEM使って比較してみられたら如何でしょうか。

3年間、ほぼ毎日使い続けていますが、使い続けた人だけが、否定することも肯定することも出来ます。

もう少し努力された上で投稿されては如何でしょうか?
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HNをお願いします (OSATO)
2016-12-13 22:27:11
>ひとまず実行してみて。さん

すみませんが、呼びやすいハンドルネームでお書きいただければと思います。
(基本的に「名無し」さんはスルーしております。)

>実際に1年通して、否定されているEM使って比較してみられたら如何でしょうか。

誤解がある様ですが、このエントリーのタイトルは私ではなく【サン興産業】さんが述べられているのを紹介しているだけです。
私自身はEMを全否定している訳ではありません。
こちらを参照していただければと思います。↓
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/da795e1d4296bbad3aa6c7e89ec819b0
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