戸川幸夫の探偵小説は、肩書きに<スリラー小説>と刷っていた『海の非常線』が、存外つまらなかったので、今回も期待せずに読んだのだが、これが意外にも拾いものだった。
「消えた乳房」
「雪男」
という長めの短篇二作品を収録しているが、前者は密室状況下での殺人事件、後者は、未確認動物(雪男)の仕業としか考えられない人間消失事件を扱っている。
本書の副題<名犬トリス特ダネ帳>とあるところからも、動物小説の第一人者というらしい戸川幸夫の手になるのは、探偵小説の始祖、エドガー・アラン・ポウの「モルグ街の殺人」を、意識したにちがいない「消えた乳房」の趣向に明らかである。
ストーリイは、「消えた乳房」「雪男」ともに面白いが、物足りないのは、探偵役に魅力がないこと。<名犬トリス>は別にしても、もうひとりの探偵役<伊吹兵助>は、どっちつかずの名探偵で、名という名がつくのは、ひとごとながら、おこがましく感じる。
2008年4月6日(日)読了。
「消えた乳房」
「雪男」
という長めの短篇二作品を収録しているが、前者は密室状況下での殺人事件、後者は、未確認動物(雪男)の仕業としか考えられない人間消失事件を扱っている。
本書の副題<名犬トリス特ダネ帳>とあるところからも、動物小説の第一人者というらしい戸川幸夫の手になるのは、探偵小説の始祖、エドガー・アラン・ポウの「モルグ街の殺人」を、意識したにちがいない「消えた乳房」の趣向に明らかである。
ストーリイは、「消えた乳房」「雪男」ともに面白いが、物足りないのは、探偵役に魅力がないこと。<名犬トリス>は別にしても、もうひとりの探偵役<伊吹兵助>は、どっちつかずの名探偵で、名という名がつくのは、ひとごとながら、おこがましく感じる。
2008年4月6日(日)読了。