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元・寝具店経営者の視点からふとんの使い方・選び方を発信するブログです。

ベッドパッドの基礎知識(28,3/21追記)。

2015年03月16日 | 敷きふとん(マットレス)


こんにちは、ふとんや元店長です。
本日は手元の気象計によりますと、
午前十一時現在、気温十八度、湿度四十%、
春めいた穏やかな気候と言ってよいかと思います。

今回はベッドパッドの選び方について書きたいと思います。
ベッドパッドは寝具業界でも最も地味な存在の一つです。
ベッドマットレスでお休みになられている方で、
現在お使いのベッドパッドがどういうものであるのか、
を即答できる方は少数派であると言って間違いないと思います。

しかし実はベッドパッドはマットレスで眠るにあたり、
欠かす事の出来ない大切なパートナーでありまして、
ベッドパッドの優劣によって寝心地はそれなりに左右されます。
そこで今回はベッドパッドについて記してみたいと思います。(注1

まずベッドパッドは、使用する中わたで大凡三種類に分かれます。
 ・ポリエステル
 ・コットン
 ・ウール
の三種類です。(注2
いずれも(普通は)四隅にゴムがついていて、マットレスに固定できる様になっています。
ご使用方法としましては、裸のベッドマットレスの上にベッドパッドを載せ、
四隅のゴムをマットレスに掛けて固定し、その上からシーツを掛ける、というものです。
一部のマットレスを除き、ベッドパッドはなるべくご使用ください。

では、ベッドパッドに期待されている機能は何でしょうか。
普段よく言われるのは、ベッドマットレスの保護であろうと思います。
何かアクシデントが起きた際の汚れを下まで浸透させない様に、
また突発事故でなくとも日常の汚れのブロックは期待されていると思います。
そうなりますと確かにベッドパッドはなんでもいい、という事になってしまいそうですが、
実は本当に期待されている機能は汚れ防止に留まりません。
では何かといいますと、
 1、湿度の調整
 2、体圧の分散
の二つの機能を特に期待しております。

「1」の湿度調整は明快です。
人は眠っている間にそれなりの発汗をし、その多くは下に落ちます。
落ちてきた湿気をどう逃がすかは春夏秋冬いつでも課題です。

「2」の体圧分散ですが、これは鳥渡条件付きです。
そもそもベッドマットレスの体圧分散はベッドマットレスが担任すべきものです。
その為にポケットコイルで有れば600以上のコイルスプリングが入っている訳です。
ところがそんなベッドマットレスにも思わぬ問題があります。
マットレスは通常、「スプリング―詰め物―側生地」の三点で構成されているのですが、
スプリングと側生地の間にある詰め物の消耗が、意外に早いのです。
勿論詰め物によって変わりますので一般論での話ですが、
大体二年くらいで最も体重を浴びる腰の部分の詰め物は劣化すると考えて良いかと思います。
詰め物が劣化すると、スプリングが近くなります。
スプリングは側生地越しとは言えども鉄ですから、
どうしても身体に対するアタリが強くなります。
特に横寝の際の腰骨や仰向け時の尾底骨など、突出部への刺激は顕著です。
そこでスプリングのアタリを和らげるために、ベッドパットを考える必要があります。

以上二つの観点からベッドパッドを見た場合、何が望ましいのでしょうか。

先ず、湿気の問題から、是非、
中わたがコットンのものは避けてほしいと思います。
コットンは吸湿能力はあるのですが、放湿能力がありません。
毎日確実に干せるのならば良いのですが、
仮に三日も連続で敷きっ放しにすれば、室内環境にもよりますが、
ベッドパッドそのものが湿気の温床になってしまい、不快の元になります。
冬は寒く夏は蒸し暑い環境になる訳です。
コットンは極めて親しみやすい素材であるが故に、安心感もあり、
どうしても何気なく選択してしまいがちなのですが、
わた材などで使用するには注意が必要な素材です。
コットンのベッドパッドは、
ベッドマットレスの購入時、使用数年後、ともに回避すべきと思います。

次に中わたがポリエステルのベッドパッドです。
エステルは吸湿が下手なのが一つ目の特徴です。
湿気は下へ下へ落ちていくので、ふとエステルパッドを剥がして、
ベッドマットレスの表面を触ってみたら、やたら湿っていた、という事もあります。
時々ベッドパッドを外して空気と触れさせる事が肝要です。
へたり易いのも特徴です。
ベッドパッドくらいのボリュームをエステルわたで出しますと、
かなり急速にへたります。
最後にこれは個人差が大きいと思いますが、
エステルベッドパッドは気持ちがいいと感じられる方の比率が低い様に思われます。
これはやはり天然素材に人造繊維が敵わないポイントかなと思います。
もっとも本当はエステルパッドでも贅を極めた造りにすれば、
天然素材以上のものが登場してくる余地もあるのでしょうが、
その場合でもへたりの早さは問題であり続けるのではないかと思われます。
エステルのベッドパッドは、
ベッドマットレスの購入時に代用的に使用するのならば絶無ではないと思いますが、
性質上、ボリュームを求められる使用数年後のマットレスには不向きです。

最後に、中わたがウールのベッドパッドです。
三つの素材の中で、ウールは最も吸湿放湿能力が高いです。
ベッドパッド程度のボリュームですと、
ウールは室内で大きく広げて空気と触れあわせてあげるだけで、
ドライな環境を作る事ができますので、春夏秋冬快適な湿度環境を作れます。
また厚手タイプのウールベッドパッドですと、(注3
ほどよく身体を支えてくれる能力をも持ち合わせておりますので、
詰め物が消耗したベッドマットレスにも相性が良いです。
ウールのベッドパッドは、
購入時ならば薄手のものでも厚手のものでも、
使用数年後であればできれば厚手のものを、
それぞれお選びいただければと思います。

それではベッドパッドについてまとめます。
先ずベッドマットレスの購入時と経過時では分けて考える必要があります。
購入時と経年劣化後では、必要なボリュームに違いが生じるからです。
購入時は薄手か厚手のベッドパッド、
経年後は厚手のベッドパッドとお考えいただけたらと思います。

湿度調整能力の関係上、最も望ましい中わたはウールです。
ウールには洗えるものと洗えないものがあります。
洗える方が便利ですが、調湿能力や気持ち良さは落ちます。
洗えない方はドライクリーニングになりますが、能力と気持ち良さは抜群です。(注4

私としては、数年を経年したベッドマットレスをご使用の方であれば、
是非、洗えないウールが中わたのボリュームタイプのものを、
一度、ご使用いただけたらと思います。
その際、側生地が普通のものではなく、ニット生地のものをお選びください。
経験上では、洗えないウールベッドパッドをお選びいただいた方が、
洗えるウールベッドパッドに回帰した、という例は少数です。

ベッドパッドにあまり関心がなかった、という方も多いと思うのですが、
お気軽に店頭で触れてみてください。


補注
1)
 今回のベッドパッドの話は全て、
 最も一般的な厚さ30㎝くらいまでの、
 「スプリング―(薄手の)詰め物―側生地」という構造のベッドマットレスを前提にしています。
 スプリングの上の詰め物を厚手の、
 例えばウレタンですとか、ふかふか系ポリエステルわた、ジェルトロンなどの、
 特殊な詰め物を採用したベッドマットレスには対応しておりません。
 それらの話はまた項を改めたいと思います。

2)
 今回はベッドパッドに話を絞っておりますので、
 オーバーレイと呼ばれるウレタンやテグス系のパッドには言及しません。
 また煩雑化を避けるためにキャメルやシルクなども割愛しました。


3)
 実は、厚手と薄手をどこで分けるか、という事に定義はありません。
 慣習として、1.0㎏以下は薄手、1.2㎏以上は厚手、とされる事が多いです。
 今回の項は1.5㎏くらいのウールベッドパッドを念頭に置いて書きました。
 余談ですが、ベッドパッドとパッドシーツの区分けというものにも確たる定義はありませんで、
 大凡600g以上をベッドパッド、300g以下をパッドシーツと呼ぶ様です。
 厚手と薄手、ベッドパッドとパッドシーツ、いずれも中間のグレイゾーンがあり、
 そこは適宜、便宜や商品戦略上で区分している様です。

4)
 洗えるウールと洗えないウールは、
 スケイルなる、ウール繊維の表層にある襞を処理するかしないかで変わってきます。
 スケイルは襞を小さくしたり大きくしたりを繰り返しながら、
 調湿・調温を行なっていますが、
 一方で水洗いしますとスケイルの襞の間に膨大な水が入り、乾きませんし、縮みます。
 そこで洗えるウールは通常、
 スケイルの五割くらいを落とす、や、
 樹脂でコーティングしてスケイルを無効化する、などの加工を行なっています。
 またウールのなめらかさや汚れにくさを担保する脂質層も、
 洗えるウールの場合には加工を加えて、
 洗濯前・洗濯後で風合いがガラッと変わってしまわない様にしてあります。
 更には中わたを包む側生地も、
 乾きやすい・中わたが出ない・中わたが寄らない、などの制約を受けます
 (従って気持ち良さを優先して側生地を選ぶ事ができなくなります)。
 これは要するにウォッシャブル加工をする事で「気持ち良さ」を制限している訳でして、
 洗えるという事には一定のリスクもあるという事です。
 但し洗えないウールだからといって全てが中わたにピュアウールを使用している訳ではなく、
 側生地の都合上で水洗い不可の表示にしているだけの場合や、
 単にメーカーサイドの都合でピュアウールを使用しない場合もありますので、
 注意と確認は必要であると思われます。

追記:
  サイズについて。
   市販されているベッドマットレスは、結構サイズがまちまちです。
   定型というものは勿論ありまして、
    シングル サイズ:100×195~198cm
    セミダブルサイズ:120×同
    ダブル  サイズ:140×同
    クイーン サイズ:160×同
    キング  サイズ:180×同
   となっています。
   しかし家具屋や輸入など、多様なルートが存在するベッドマットレスについては、
   実際には定型どおりのサイズばかりが販売されているわけではなく、
   例えばシングルサイズと号していても長さが207cmあったり、
   ワイドシングルサイズで幅が110cmあるものをシングルサイズと号していたりします。
   或いは幅が200cmあるのにキングサイズを称している場合もあります。
   なので店頭・ネットを問わず、ベッドパッドを購入する際は、
   言葉としてのサイズ(セミダブルやクイーンなど)ではなく、
   明快なセンチ表記としての寸法を幅・長さともに把握しておくべきです。
   サイズはベッドマットレスの購入時についてくる仕様書を参照してもいいですし、
   本体にサイズが明記されている場合もあると思いますので、是非ご確認ください。
   またワイドダブルというサイズもくせもので、
   これが日本の住宅事情に合わせて慣用的に用いられているサイズ表記なのですが、
   それ故にメーカーによる寸法の異同が激しく、要するにサイズが全くバラバラです。
   なのでワイドダブルサイズをご使用の場合は一層注意が必要です。


※上の写真は西川リビング社のウールベッドパッドです。



東京西川 ベッドパッド シングル ウール 抗菌防臭加工
クリエーター情報なし
nishikawa sangyo

800g薄手タイプ 最もオーソドックスなベッドパッド
7,500円


東京西川 ウォッシャブルウール敷きパッド 1.5kg厚手タイプ
12,960円

ビラベック ウール ベッドパッド ナチュラル 07 ドイツ製 (シングル)
クリエーター情報なし
ビラベック

32,400円 1.5kg厚手タイプ 正統派ベッドパッド


8 コメント

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ウールのマットレスの選び方について (T)
2018-02-11 03:31:19
現在ベッドパッドの購入を検討してる者です。
ご相談よろしいでしょうか?

予算の都合で

天然ウール1.5kg
目の詰まった綿ブロード生地のベッドパット



スケイルを落としたウール1kg
綿スムース生地のベッドパット

のどちらかで悩んでいるのですが、
この場合どちらの方が気持ちよさでは上でしょうか?
マットレスは買ってばかりで
スプリングは柔らかめです。
(柔らかさは気に入っています)

アドバイスいただければ嬉しく思います。
Unknown (Unknown)
2018-02-19 17:49:38
Tさんこんにちは。
遅くなってしまい申し訳ありません。もう後の祭りかも知れませんがご参考までにコメントさせて下さい。
居酒屋で隣に座ってるオッサンとたまたま会話になったくらいの感じでお読みいただければ幸いです。


これは一見して非常に難しいですね…。
スケイルを落としたウールは機能的には落ちてしまうと思いますので天然ものをオススメしたいですが、一方で現状マットレスに問題がないのであれば、なるべく寝心地の変化は生じさせたくないところです。

ブロードとはいえ目が詰まった側生地に1.5kg入りでは結構変化してしまうのではないでしょうか? 1.5kgは厚すぎないか心配です。キルトの掛け方によっては更にボリューム感が増します。
また側生地の張り感がどの程度あるのかも心配です。側生地の内側にはウールの飛び出し防止で不織布をかましている場合もありますので、そうであれば一層張り感が出ます。

スケイル落としの1.0㎏の方ですが、スムースニットは嬉しいですね。ただこちらも飛び出し防止の不織布が内側にかましてある可能性もあるかと思います。その場合は側生地のスペックの割に案外優しくない可能性もあります。

改めて考えますと、今回の場合はまだマットレスが新品かつお気に入りなので、その寝心地を変えない事が優先かと思います。

ひょっとしたらもう少し待ってみるのも手かも知れませんね。敷寝具は使用開始して1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月という節目節目にユーザーに「気付き」が発生する可能性がありますので、少し経年させてご自身が睡眠時にお感じになるかも知れない違和感の出現を待ってみても良いのではないかと思います。特にこれから夏が来るので、今はまだ気付いてない何かに気付ける可能性もあると思います。

非常に曖昧なお返事で恐縮ですが以上です。
Unknown (ふとんや元店長)
2018-02-19 17:51:53
Tさん申し訳ありません。名乗るのを忘れてしまっておりました。上記コメントはブログ管理者のものです。
Unknown (T)
2018-02-20 00:27:03
大変丁寧なアドバイスを頂きましてありがとうございます!大変参考になりました。
寝心地がより柔らかくなるぶんには構わないのですが固くなるのはイヤなんですよね。。

頂きましたコメントを考慮しますと、寝心地が変わらなそうorもし変化するとしてもソフト方向に変化しそうなスケイル落とし1.0kgにしようと現在のところ考えております。


不織布に関しては盲点でした!ありがとうございます。
不織布の有無は確認しておこうと思います。

現在マットレスを購入して1.5ヶ月ほど経ちましたが、今は量販店で1,000円ちょっとくらいで買ったペラペラのパッドを使用してますので「寝ているときに背中側がさむい・・・」というのが一番の気付きといった具合です
何度も読みました (迷い猫)
2018-02-21 13:35:11
最近新しいベットマットを購入し、搬入までの間にベットパッドを探していました。今まで使用していたベッドパッドの詰め物はウオッッシャブルウールで側生地は綿だったのですが年々縮みが進み、その上クッション性もなくなっていました。なので今回は縮まないウールベッドパッド の購入を決めていたのですがネットで探したところ情報量が多い上に売るお店はいい事しか書いてなくてどれを選べばいいのか分からなくなっていました。

ふと検索ワードを変えてみたところこちらのブログにたどり着きました。
ベッドマットの経年劣化の仕方や感じ方(まさに現実の通り!)やベッドパッド の基礎知識にいたっては私の悩みに的確に答えてくれるものでした。特にウールパッドは1年〜2年に一度のドライクリーニングで良い事などは目から鱗でした。

今回迷うことなく、洗えないウール厚めのパッドを購入しました。(本当はドイツ製のものにしたかったのですが予算上断念)

本来、このようなコメント投稿はしないのですが、ありがたすぎてコメントせずにはいられませんでした。最後になりますが本当にありがとうございました。どの方向にも加担することがなく、元寝具店店長の知識経験だけを綴ってくださった事に感謝申し上げます。

これからも拝読したいと思います!
Unknown (ふとんや元店長)
2018-02-26 10:06:26

Tさんこんにちは。

少しでも参考になればよかったです。ぺらぺらのパッドだけですと流石に物足りないですよね。
良いお買い物になるよう祈念しております。


迷い猫さん初めまして。

わざわざコメントを下さり誠に有難うございます。正直なところ何故このブログを運営しているのか自分でも分からなくなるときもあるので、そう言っていただけるととても励みになります。

こちらこそ今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
感謝いたします (すう)
2018-11-28 15:02:38
初めまして。
ブログを読ませていただき、大変参考になった者です。
ベッドパッドが劣化し、次のパッドを悩んでいて、こちらにたどり着きました。
とても丁寧でわかりやすく納得出来ましたので、
お値段はよかったのですが、清水から飛び降りる気持ちで厚手のウールを購入しました。
新製品で、片面が麻というものです。

「吸湿放湿」を重視して買ったのですが、敷いて寝たところ、
マットレスのへたった腰の部分が平らになるような、
こちらのブログにあります「体圧の分散」効果を感じました。
コイルも入っていないのに、ベッドパッドにこんなに効果があるなんて、驚きました。

ふとんや元店長様に、感謝を申し上げたく、書き込みさせていただきました。
このような素晴らしいブログを本当にありがとうございます。
ご健康とご多幸をお祈りいたします。
Unknown (ふとんや元店長)
2018-12-08 14:20:13
すうさんこんにちは。
お返事が遅くなりごめんなさい。

このたびは態々コメントを下さり誠に有難うございます。参考になったと言ってもらえて本当に嬉しいです。

ベッドパッドで寝心地は物凄く変わっていきますよね。特に厚手のウールのものはなんとも言えない心地良さがあると思います。
是非室内にて頻繁に大きく広げてあげて、少しでも長くお使いになられて下さい。

今後とも当ブログを何卒宜しくお願い申し上げます。
すうさんの快眠と健康をお祈りいたします。

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