電子書籍のコンテンツの多くは、既に出版された印刷書籍の情報を、デジタルな文字情報や必要ならばさし絵をデジタル画像情報へ変換して電子ファイルにすることで、印刷、製本、流通の経費削減や省スペースを図ったものである。コンテンツは有料と無料のものがあり、その多くが無線/有線のネットワークからダウンロード完了後に読むことになる。紙の書籍では不可能な、ハイパーリンク・動画・音声・振動(バイブレーション)などを併用したコンテンツも存在する。
読者が無線や有線によってインターネットに接続すれば、書籍の購入が即時に行えて本棚に場所を占めずにすみ、出版社に相当するコンテンツ・プロバイダ側でも在庫確保と資産コスト、絶版による販売機会の喪失が避けられる。環境の観点からは、紙・在庫・流通・店舗などの負荷軽減の側面と、電力消費や機器の陳腐化や廃棄などの負荷発生の側面がある。また著作権や課金などの課題が存在する。
新聞・雑誌・書籍という従来型の出版形態に代わって携帯型の電子装置の表示画面でこれらを読むという考えは古くから存在し、1990年から小型の専用機器が販売され、電子書籍の普及に向けた事業がはじまった[1]。最初の電子書籍用リーダーは1990年に発売された8cm CD-ROMを記録メディアに使った日本のソニー製電子ブックプレイヤー「データディスクマン」である。その後、1993年にNECが3.5インチ・フロッピー・ディスクを使用した「デジタルブックプレーヤー」を発売した。5.6型モノクロ液晶画面と数個のボタンで操作する点はサイズなど含めて今日のキンドル (Kindle) と似た形態だった。また電子辞書も広義では電子書籍用リーダーの一種であるとみなされることがある。
WWWの普及期
元々World Wide Web(WWW)は電子ネットワーク上で学術論文同士を容易に結びつける合うように作られ、論文だけでなくブログに代表される多様な形態の無料コンテンツの拡大でインターネットは今では巨大に成長したが、この成長過程では有料コンテンツの販売も試みられ、一定の需給関係を作っているが課金の手間などによって比較的限定的なものにとどまっている。
著作権切れ著作配布の開始
インターネット利用が一般化した2000年前後より、テキストファイルによるコンテンツの提供がプロジェクト・グーテンベルクや青空文庫などで著作権切れ作品の有志によるテキスト化や著作者自身によるコンピュータ・ネットワーク上での配布も存在する。
2000年代
2000年以降ではコンテンツへの課金方法が整備され、利益を創出する有料メディアとして、小説以外にコミックや雑誌または写真集などの電子書籍も登場している。
コンテンツ形態
大きく分けてダウンロード型とオンラインで閲覧するストリーミング型の2つの形態が存在し、ファイル形式やデータ形式もさまざまで、世界的に使われているPDFやEPUBの他、シャープのXMDFやボイジャーの.bookなど20種類以上のファイルフォーマットが存在する。これは日本の書物特有のルビ振りや段組をレイアウト崩れ無く、異なる端末媒体で忠実に再現できるようにする点、音楽配信と同じく強固な著作権保護技術(コピーガード/デジタル著作権管理)が求められた点、参入したソフトウェア開発会社が複数存在したことが挙げられる。このため、多くは世界水準として認められているとは言えない。
今日のネットワーク経由の電子書籍は、印刷と製本などの有形物のコスト負担がないために価格が安く出来ると一般に考えられるが、実際にはコンテンツの複雑な権利関係のため、印刷物より高価格のものが存在する(フランス書院が該当)。日本では、Amazon.comの「Kindle Store」とは異なり、話題の新作がすぐに電子書籍として発売されるケースは少ないとされてきた。しかし2010年に入ると潮流が変わり、小説やタレント本などの単行本・雑誌などが書籍発売と同時に配信される事例が増加している。
電子書籍は書籍出版の一形態と考えられ、そのページ内の情報はインターネット・ウェブと同様にコンテンツと呼ばれる。コンテンツそのものが多様な種類があり、これを提供する側もさまざまな関係者が存在する。
電子ブック
書籍をテキストデータ化させた形式の電子書籍の商品としては、1990年7月にソニーが発売したData Discman DD-1向けのソフトまで遡れる[2]。1990年代にはWindows PCなどで電子ブック規格(EB,EBXAなど)の電子書籍(8cm CD-ROM)を閲覧出来るキットが発売された。
PDA・PC
電子書籍をコンテンツとして販売する形式は、1999年にシャープのISP兼ポータルサイトのSharp Space Townでザウルス向けに開始された「ザウルス文庫(現:インターネットの本屋さん)」がはしりとされている。このコンテンツにおいてXMDFフォーマットを初採用した。 また、同時期にはWindows PC上の専用閲覧ソフト(リーダー)を利用する電子書店パピレスやeBookJapanなどが営業開始となった。 2002年にはNTTドコモによる「M-stage Book」がInfogate接続のPC・PDA向けに、ソニースタイルがCLIE向けにコンテンツ数は少ないものの電子書籍コンテンツの販売を行っていた。ソニーは2004年にLIBRIeの展開に合わせて出版業界との共同出資という布陣でパブリッシングリンクを設立し、同社による電子書籍配信サイト「Timebook Town」を開始したが、2009年2月にサービス終了となった。 ポータルサイトのYahoo!JAPANは、2003年9月にコミック(単行本)の配信に特化した「Yahoo!コミック(現:Yahoo!ブックストア)」を開設し、現在まで配信作品を増加させている。 このように新規参入と撤退の動きが比較的激しい。
電子書籍に近い業態として、同人誌(原稿)を著者側がPDFやJPEGなどのデータ化させたものをコンテンツとして受託販売する「DLsite.com」のようなサイトも存在する。
電子書籍をコンテンツとして販売する以前は、前出の電子ブックしか無い状況であったが、辞書用途についてはマイクロソフトからBookshelf・Encarta、マイペディア、広辞苑などのCD-ROMによるPCソフト(辞書ソフト)が存在している。また、1997年には手塚治虫漫画全集をDVD-ROM収録したものが市販されている。
携帯電話 [編集]
日本ではネット文庫と同様、(自作の)文章をテキスト記述した勝手サイト(HTML)をWWW上に公開し、口コミで評判が広がるケータイ小説という形で電子書籍に近い形態のものが普及した。
2003年11月にauが売り出したWIN10シリーズの機種と、2004年前半にNTTドコモが売り出したFOMA 900iシリーズ(どちらもフィーチャー・フォンの先陣である)において実現したJavaアプリ(EZアプリ・iアプリ)のリッチ化により、PC向けの電子書籍サイトで採用されていた.bookフォーマットのリーダーであるT-timeのアプリ版リーダーがセルシスとボイジャーによって開発されたことで、ビットウェイがプラットフォーム供給者となり、供給を受けたNTTソルマーレ(コミックシーモア)などのコンテンツプロバイダがコミック配信のメニューサイトを開設した。その後着うたサイトと同じく徐々に同業者や供給者である出版社自社も参入した。これらは特に携帯コミックと形容されている。現在はウェブコミックの勝手サイトを含めると1000サイト以上存在する。
携帯コミックの黎明期は単行本(またはその原稿)をスキャンしたものを1話単位で販売課金・配信するだけであったが、2006年頃からは本に掲載せず直にサイト上で描き下ろしを配信する形態のものが現れ、次第に「ウェブコミック」と称されるようになる。
日本での有料携帯電話用コンテンツの市場規模は、2005年から伸び始め、2007年には300億円にもなったというデータもあるが、多くが携帯コミックであり、利用者層が限られている。
auグループは2009年6月から電子書籍コンテンツの閲覧に最適化した高解像度液晶を搭載したフィーチャー・フォン「ブックケータイ biblio」を発売したが、大きさ・重さなどが災いしヒットにならず2010年春に後継機種を出さずに終売した。(2010年末に登場したbiblio leafは電子ブックリーダーである。)
スマートフォン
欧米ではスマートフォンのiPhoneが画面が大きく操作性も向上し、Amazon.comのKindle向けのコンテンツを購入できるなど充実したことで電子書籍の普及が始まっている。
日本でもiPhoneは普及しているが、ケータイ小説を除けばコンテンツ整備が遅れていた[1]。これは配信サイトに当たるApp Storeにおけるコンテンツの立ち上げとiOS用のリーダーの開発が必要であった為であるが、その中で日本のApp Store上で2008年12月から産経デジタルが産経新聞紙面を配信するサービスが開始され、当時は先駆的な試みとして話題となった。
2010年に大きく潮流が変わり、多くのコンテンツプロバイダが参入するようになっている。
2010年はAndroidOS搭載のスマートフォンが本格的に発売されたことで、それに対応した電子書籍サイトの開設も進められている。これに関してはNTTドコモと大日本印刷の2Dfacto、シャープのGALAPAGOSなど、端末のベンダー側からもコンテンツ供給のアプローチが行われている。
既存物の権利
コンテンツの多くは紙媒体での出版を前提とした契約下で関係者が製作に携わったものであり、その電子化と公開ではそれら関係者の利権がからみあい、デジタル情報ゆえに新たな契約が対象とする配布媒体・データ形態の範囲がわかりにくい、コンテンツの電子化にも技術面以外の様々なハードルが存在している。
著作権切れの無料物
プロジェクト・グーテンベルクやネット文庫のような著作権切れコンテンツも存在するが、そういった過去の作品だけでは電子書籍の利用者のニーズを満たせない。著作権切れの書籍などをデジタル情報による無料コンテンツへ加工する作業は、ボランティアか無償提供目的の公益の事業などが行なっている。日本では国立国会図書館や複数の大学図書館、美術館などが著作権適用期間を過ぎた古い書物や古文書の電子化を行なっているが、これらは互いに異なるファイル形式で記述しているために、利用者には不便である[3]。また、逆に商業的な電子書籍の流通網は基本的に使用できないために、閲覧者の利便性を損なう面もある。
大手IT企業の動き
オンライン書店最大手のAmazonや検索サイトのGoogleの2社は、これまで紙媒体で存在するメディアの電子書籍化を大規模に進めている。Google社は著作権者に無断で電子書籍化を進めてそれらをネットワーク上で公開することで権利を侵害したとして、米国内で著者・出版社団体から訴えられ、2年以上にもわたる係争の結果、多額の和解料の支払いとユーザーに対する課金および著作権料徴収を徹底するという条件を飲むことでようやく和解に至っている。
新聞・出版社などの立場
世界的に日刊新聞の発行部数は下降しており、日本では出版業界も1990年中頃から後半にかけて販売が減少し、これらの電子書籍への参入を後押ししている。"Wall Street Journal"や"FOX"を保有する米Newsグループでは2009年から2010年に電子書籍への参入するとされる。"San Francisco Chronicle"や"ESPN"を保有する米Hearstも2009年に電子書籍への参入するとされる。米最大手の書店"Barnes & Noble"も2009年内に電子書籍販売サイトを立ち上げる。
図書館
公立図書館では、2002年北海道岩見沢市立図書館が電子書籍の閲覧サービスを始めたが、需要が少なかったため、書店の指定した2カ月の無償での試行の後、取り止めとなった。
大学図書館では、紀伊國屋書店が手がけるOCLC[4]の学術教養系和書・洋書の電子書籍配信サービス、ネットライブラリー(NetLibrary)が、早くから普及している。特に2009年10月、凸版印刷と紀伊國屋書店の協業後、学術教養系和書電子書籍のコンテンツ数が増えている。
電子書籍を閲覧するための専用端末は電子ブックリーダーとも呼ばれ、書籍に比較していくつもの課題が求められる。
読みやすい画面
小型で書籍より軽いか同等
長時間動作
コンテンツの購入が容易
初期コストとなる専用端末の価格が廉価である
他にも、耐衝撃性や簡易な耐水性、複数の電子書籍フォーマット対応、盗難防止の工夫などが求められる。
また、携帯型情報端末ゆえに類似機器の機能の対応も可能な限り求められる。
画面のカラー化
動画、静止画、音楽の再生機能
インターネット接続機能
向上した技術
表示部に電子ペーパーが使われ始めている
大容量で低価格となったフラッシュメモリの採用で、多数の電子書籍を格納できる
バッテリーの性能の向上と電子回路の省電力化技術によって、長時間使用が実現
特に電子書籍専用端末に向いた最新技術には新たな種類の電子ペーパーがあり、これまで以上に省電力で高コントラストの表示が実現するとされる[1]。米Pixel Qi社は電子ペーパーと液晶の2つのモードを持つものがある。
端末本体価格は依然高いことが挙げられる。この辺りは普及による量産効果や共通規格の策定も絡んでコモディティ化などによる低価格化競争も期待されるが、現時点でそういった電子書籍データフォーマットの共通化などといった動向はみられず、依然として紙媒体を置き換えるほどの普及を見せるかどうかは未知数である。
アマゾン キンドル
専用端末の例 [編集]
シグマブック・ワーズギア
松下電器産業(現パナソニック)が2003年7月に発表した電子書籍専用端末。電子書籍独自のファイルフォーマットに対応し、eBookJapanのebi-jファイルに対応する。この機器は単三の乾電池2本で3~6カ月使用でき、また電源を切っていても内容は表示されたままという電子ペーパーディスプレイ(モノクロ)を採用して重量は300gという事である[5]。大きな特徴は見開きの画面であることが挙げられる。漫画は見開きを一つのページ単位で描画する作家が多く、見開きを一つページにして迫力あるシーンを描画する作家もいれば、片方のページに描いた内容をもう片方のページで説明するなど見開きで見ることができるというのは作家(特に漫画家)にとって非常に重要な要素の一つである。ただし、同端末はモノクロしか表示できないにもかかわらず価格が3万円台という事もあり、出版業界を大変革させるに至らなかった。
2006年にはシグマブック後継のカラー液晶ディスプレイを採用した単ページ仕様のWords Gear(ワーズギア)[6]が発表されたがやはり普及せず、2008年3月に電子書籍端末の製造を終了、同年9月30日には配信サービスも終了した。
リブリエ
ソニーが発表した電子書籍専用端末。対応する電子書籍のファイルフォーマットは独自形式を主体とするが、シグマブックとの違いはその多機能性である。電子辞書を使用することができ、また朗読機能も有している。しかし、書籍に対して本体価格が高くモノクロ表示しかできないこと・書籍は閲覧期間を制限されたレンタルのみという制限もあり、電子書籍の普及に貢献するには至らなかった。その後、ソニー・リーダーを海外で登場させた。端末の製造は2007年5月に終了、配信サービスも2009年2月に終了した。
アマゾン・キンドル
Amazon.comによる電子書籍端末。電子書籍のファイルは独自形式(.AZW)を採用。
nook(ヌック)
Nook(Barnes & Noble Nook)は、Barnes & Nobleが開発した電子ブックリーダー。OSはAndroidベース。2009年10月20日に米国で発表され、11月30日に259米ドルの値段で発売。
GALAPAGOS(ガラパゴス)
シャープ製ブックリーダー。通常の電子書籍フォーマット+日本の雑誌などのリッチテキストコンテンツに対応したブックリーダー。OSはメーカーWebページにて「Linuxベースを採用」と記載。またNTTドコモよりFOMAハイスピードの3G通信機能を搭載された機種で、ブックリーダー(SH-07C)(シャープ製)という機種も発売されている。
ソニー・リーダー
ソニー製ブックリーダー。電子ペーパーを使っている。画面はモノクロ表示である。2006年9月に米国で販売が開始され、2010年12月10日に日本でも発売された。
読者が無線や有線によってインターネットに接続すれば、書籍の購入が即時に行えて本棚に場所を占めずにすみ、出版社に相当するコンテンツ・プロバイダ側でも在庫確保と資産コスト、絶版による販売機会の喪失が避けられる。環境の観点からは、紙・在庫・流通・店舗などの負荷軽減の側面と、電力消費や機器の陳腐化や廃棄などの負荷発生の側面がある。また著作権や課金などの課題が存在する。
新聞・雑誌・書籍という従来型の出版形態に代わって携帯型の電子装置の表示画面でこれらを読むという考えは古くから存在し、1990年から小型の専用機器が販売され、電子書籍の普及に向けた事業がはじまった[1]。最初の電子書籍用リーダーは1990年に発売された8cm CD-ROMを記録メディアに使った日本のソニー製電子ブックプレイヤー「データディスクマン」である。その後、1993年にNECが3.5インチ・フロッピー・ディスクを使用した「デジタルブックプレーヤー」を発売した。5.6型モノクロ液晶画面と数個のボタンで操作する点はサイズなど含めて今日のキンドル (Kindle) と似た形態だった。また電子辞書も広義では電子書籍用リーダーの一種であるとみなされることがある。
WWWの普及期
元々World Wide Web(WWW)は電子ネットワーク上で学術論文同士を容易に結びつける合うように作られ、論文だけでなくブログに代表される多様な形態の無料コンテンツの拡大でインターネットは今では巨大に成長したが、この成長過程では有料コンテンツの販売も試みられ、一定の需給関係を作っているが課金の手間などによって比較的限定的なものにとどまっている。
著作権切れ著作配布の開始
インターネット利用が一般化した2000年前後より、テキストファイルによるコンテンツの提供がプロジェクト・グーテンベルクや青空文庫などで著作権切れ作品の有志によるテキスト化や著作者自身によるコンピュータ・ネットワーク上での配布も存在する。
2000年代
2000年以降ではコンテンツへの課金方法が整備され、利益を創出する有料メディアとして、小説以外にコミックや雑誌または写真集などの電子書籍も登場している。
コンテンツ形態
大きく分けてダウンロード型とオンラインで閲覧するストリーミング型の2つの形態が存在し、ファイル形式やデータ形式もさまざまで、世界的に使われているPDFやEPUBの他、シャープのXMDFやボイジャーの.bookなど20種類以上のファイルフォーマットが存在する。これは日本の書物特有のルビ振りや段組をレイアウト崩れ無く、異なる端末媒体で忠実に再現できるようにする点、音楽配信と同じく強固な著作権保護技術(コピーガード/デジタル著作権管理)が求められた点、参入したソフトウェア開発会社が複数存在したことが挙げられる。このため、多くは世界水準として認められているとは言えない。
今日のネットワーク経由の電子書籍は、印刷と製本などの有形物のコスト負担がないために価格が安く出来ると一般に考えられるが、実際にはコンテンツの複雑な権利関係のため、印刷物より高価格のものが存在する(フランス書院が該当)。日本では、Amazon.comの「Kindle Store」とは異なり、話題の新作がすぐに電子書籍として発売されるケースは少ないとされてきた。しかし2010年に入ると潮流が変わり、小説やタレント本などの単行本・雑誌などが書籍発売と同時に配信される事例が増加している。
電子書籍は書籍出版の一形態と考えられ、そのページ内の情報はインターネット・ウェブと同様にコンテンツと呼ばれる。コンテンツそのものが多様な種類があり、これを提供する側もさまざまな関係者が存在する。
電子ブック
書籍をテキストデータ化させた形式の電子書籍の商品としては、1990年7月にソニーが発売したData Discman DD-1向けのソフトまで遡れる[2]。1990年代にはWindows PCなどで電子ブック規格(EB,EBXAなど)の電子書籍(8cm CD-ROM)を閲覧出来るキットが発売された。
PDA・PC
電子書籍をコンテンツとして販売する形式は、1999年にシャープのISP兼ポータルサイトのSharp Space Townでザウルス向けに開始された「ザウルス文庫(現:インターネットの本屋さん)」がはしりとされている。このコンテンツにおいてXMDFフォーマットを初採用した。 また、同時期にはWindows PC上の専用閲覧ソフト(リーダー)を利用する電子書店パピレスやeBookJapanなどが営業開始となった。 2002年にはNTTドコモによる「M-stage Book」がInfogate接続のPC・PDA向けに、ソニースタイルがCLIE向けにコンテンツ数は少ないものの電子書籍コンテンツの販売を行っていた。ソニーは2004年にLIBRIeの展開に合わせて出版業界との共同出資という布陣でパブリッシングリンクを設立し、同社による電子書籍配信サイト「Timebook Town」を開始したが、2009年2月にサービス終了となった。 ポータルサイトのYahoo!JAPANは、2003年9月にコミック(単行本)の配信に特化した「Yahoo!コミック(現:Yahoo!ブックストア)」を開設し、現在まで配信作品を増加させている。 このように新規参入と撤退の動きが比較的激しい。
電子書籍に近い業態として、同人誌(原稿)を著者側がPDFやJPEGなどのデータ化させたものをコンテンツとして受託販売する「DLsite.com」のようなサイトも存在する。
電子書籍をコンテンツとして販売する以前は、前出の電子ブックしか無い状況であったが、辞書用途についてはマイクロソフトからBookshelf・Encarta、マイペディア、広辞苑などのCD-ROMによるPCソフト(辞書ソフト)が存在している。また、1997年には手塚治虫漫画全集をDVD-ROM収録したものが市販されている。
携帯電話 [編集]
日本ではネット文庫と同様、(自作の)文章をテキスト記述した勝手サイト(HTML)をWWW上に公開し、口コミで評判が広がるケータイ小説という形で電子書籍に近い形態のものが普及した。
2003年11月にauが売り出したWIN10シリーズの機種と、2004年前半にNTTドコモが売り出したFOMA 900iシリーズ(どちらもフィーチャー・フォンの先陣である)において実現したJavaアプリ(EZアプリ・iアプリ)のリッチ化により、PC向けの電子書籍サイトで採用されていた.bookフォーマットのリーダーであるT-timeのアプリ版リーダーがセルシスとボイジャーによって開発されたことで、ビットウェイがプラットフォーム供給者となり、供給を受けたNTTソルマーレ(コミックシーモア)などのコンテンツプロバイダがコミック配信のメニューサイトを開設した。その後着うたサイトと同じく徐々に同業者や供給者である出版社自社も参入した。これらは特に携帯コミックと形容されている。現在はウェブコミックの勝手サイトを含めると1000サイト以上存在する。
携帯コミックの黎明期は単行本(またはその原稿)をスキャンしたものを1話単位で販売課金・配信するだけであったが、2006年頃からは本に掲載せず直にサイト上で描き下ろしを配信する形態のものが現れ、次第に「ウェブコミック」と称されるようになる。
日本での有料携帯電話用コンテンツの市場規模は、2005年から伸び始め、2007年には300億円にもなったというデータもあるが、多くが携帯コミックであり、利用者層が限られている。
auグループは2009年6月から電子書籍コンテンツの閲覧に最適化した高解像度液晶を搭載したフィーチャー・フォン「ブックケータイ biblio」を発売したが、大きさ・重さなどが災いしヒットにならず2010年春に後継機種を出さずに終売した。(2010年末に登場したbiblio leafは電子ブックリーダーである。)
スマートフォン
欧米ではスマートフォンのiPhoneが画面が大きく操作性も向上し、Amazon.comのKindle向けのコンテンツを購入できるなど充実したことで電子書籍の普及が始まっている。
日本でもiPhoneは普及しているが、ケータイ小説を除けばコンテンツ整備が遅れていた[1]。これは配信サイトに当たるApp Storeにおけるコンテンツの立ち上げとiOS用のリーダーの開発が必要であった為であるが、その中で日本のApp Store上で2008年12月から産経デジタルが産経新聞紙面を配信するサービスが開始され、当時は先駆的な試みとして話題となった。
2010年に大きく潮流が変わり、多くのコンテンツプロバイダが参入するようになっている。
2010年はAndroidOS搭載のスマートフォンが本格的に発売されたことで、それに対応した電子書籍サイトの開設も進められている。これに関してはNTTドコモと大日本印刷の2Dfacto、シャープのGALAPAGOSなど、端末のベンダー側からもコンテンツ供給のアプローチが行われている。
既存物の権利
コンテンツの多くは紙媒体での出版を前提とした契約下で関係者が製作に携わったものであり、その電子化と公開ではそれら関係者の利権がからみあい、デジタル情報ゆえに新たな契約が対象とする配布媒体・データ形態の範囲がわかりにくい、コンテンツの電子化にも技術面以外の様々なハードルが存在している。
著作権切れの無料物
プロジェクト・グーテンベルクやネット文庫のような著作権切れコンテンツも存在するが、そういった過去の作品だけでは電子書籍の利用者のニーズを満たせない。著作権切れの書籍などをデジタル情報による無料コンテンツへ加工する作業は、ボランティアか無償提供目的の公益の事業などが行なっている。日本では国立国会図書館や複数の大学図書館、美術館などが著作権適用期間を過ぎた古い書物や古文書の電子化を行なっているが、これらは互いに異なるファイル形式で記述しているために、利用者には不便である[3]。また、逆に商業的な電子書籍の流通網は基本的に使用できないために、閲覧者の利便性を損なう面もある。
大手IT企業の動き
オンライン書店最大手のAmazonや検索サイトのGoogleの2社は、これまで紙媒体で存在するメディアの電子書籍化を大規模に進めている。Google社は著作権者に無断で電子書籍化を進めてそれらをネットワーク上で公開することで権利を侵害したとして、米国内で著者・出版社団体から訴えられ、2年以上にもわたる係争の結果、多額の和解料の支払いとユーザーに対する課金および著作権料徴収を徹底するという条件を飲むことでようやく和解に至っている。
新聞・出版社などの立場
世界的に日刊新聞の発行部数は下降しており、日本では出版業界も1990年中頃から後半にかけて販売が減少し、これらの電子書籍への参入を後押ししている。"Wall Street Journal"や"FOX"を保有する米Newsグループでは2009年から2010年に電子書籍への参入するとされる。"San Francisco Chronicle"や"ESPN"を保有する米Hearstも2009年に電子書籍への参入するとされる。米最大手の書店"Barnes & Noble"も2009年内に電子書籍販売サイトを立ち上げる。
図書館
公立図書館では、2002年北海道岩見沢市立図書館が電子書籍の閲覧サービスを始めたが、需要が少なかったため、書店の指定した2カ月の無償での試行の後、取り止めとなった。
大学図書館では、紀伊國屋書店が手がけるOCLC[4]の学術教養系和書・洋書の電子書籍配信サービス、ネットライブラリー(NetLibrary)が、早くから普及している。特に2009年10月、凸版印刷と紀伊國屋書店の協業後、学術教養系和書電子書籍のコンテンツ数が増えている。
電子書籍を閲覧するための専用端末は電子ブックリーダーとも呼ばれ、書籍に比較していくつもの課題が求められる。
読みやすい画面
小型で書籍より軽いか同等
長時間動作
コンテンツの購入が容易
初期コストとなる専用端末の価格が廉価である
他にも、耐衝撃性や簡易な耐水性、複数の電子書籍フォーマット対応、盗難防止の工夫などが求められる。
また、携帯型情報端末ゆえに類似機器の機能の対応も可能な限り求められる。
画面のカラー化
動画、静止画、音楽の再生機能
インターネット接続機能
向上した技術
表示部に電子ペーパーが使われ始めている
大容量で低価格となったフラッシュメモリの採用で、多数の電子書籍を格納できる
バッテリーの性能の向上と電子回路の省電力化技術によって、長時間使用が実現
特に電子書籍専用端末に向いた最新技術には新たな種類の電子ペーパーがあり、これまで以上に省電力で高コントラストの表示が実現するとされる[1]。米Pixel Qi社は電子ペーパーと液晶の2つのモードを持つものがある。
端末本体価格は依然高いことが挙げられる。この辺りは普及による量産効果や共通規格の策定も絡んでコモディティ化などによる低価格化競争も期待されるが、現時点でそういった電子書籍データフォーマットの共通化などといった動向はみられず、依然として紙媒体を置き換えるほどの普及を見せるかどうかは未知数である。
アマゾン キンドル
専用端末の例 [編集]
シグマブック・ワーズギア
松下電器産業(現パナソニック)が2003年7月に発表した電子書籍専用端末。電子書籍独自のファイルフォーマットに対応し、eBookJapanのebi-jファイルに対応する。この機器は単三の乾電池2本で3~6カ月使用でき、また電源を切っていても内容は表示されたままという電子ペーパーディスプレイ(モノクロ)を採用して重量は300gという事である[5]。大きな特徴は見開きの画面であることが挙げられる。漫画は見開きを一つのページ単位で描画する作家が多く、見開きを一つページにして迫力あるシーンを描画する作家もいれば、片方のページに描いた内容をもう片方のページで説明するなど見開きで見ることができるというのは作家(特に漫画家)にとって非常に重要な要素の一つである。ただし、同端末はモノクロしか表示できないにもかかわらず価格が3万円台という事もあり、出版業界を大変革させるに至らなかった。
2006年にはシグマブック後継のカラー液晶ディスプレイを採用した単ページ仕様のWords Gear(ワーズギア)[6]が発表されたがやはり普及せず、2008年3月に電子書籍端末の製造を終了、同年9月30日には配信サービスも終了した。
リブリエ
ソニーが発表した電子書籍専用端末。対応する電子書籍のファイルフォーマットは独自形式を主体とするが、シグマブックとの違いはその多機能性である。電子辞書を使用することができ、また朗読機能も有している。しかし、書籍に対して本体価格が高くモノクロ表示しかできないこと・書籍は閲覧期間を制限されたレンタルのみという制限もあり、電子書籍の普及に貢献するには至らなかった。その後、ソニー・リーダーを海外で登場させた。端末の製造は2007年5月に終了、配信サービスも2009年2月に終了した。
アマゾン・キンドル
Amazon.comによる電子書籍端末。電子書籍のファイルは独自形式(.AZW)を採用。
nook(ヌック)
Nook(Barnes & Noble Nook)は、Barnes & Nobleが開発した電子ブックリーダー。OSはAndroidベース。2009年10月20日に米国で発表され、11月30日に259米ドルの値段で発売。
GALAPAGOS(ガラパゴス)
シャープ製ブックリーダー。通常の電子書籍フォーマット+日本の雑誌などのリッチテキストコンテンツに対応したブックリーダー。OSはメーカーWebページにて「Linuxベースを採用」と記載。またNTTドコモよりFOMAハイスピードの3G通信機能を搭載された機種で、ブックリーダー(SH-07C)(シャープ製)という機種も発売されている。
ソニー・リーダー
ソニー製ブックリーダー。電子ペーパーを使っている。画面はモノクロ表示である。2006年9月に米国で販売が開始され、2010年12月10日に日本でも発売された。