杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・漁業関係者が被った被害~イージス艦「あたご」事件

2008-03-01 07:55:50 | Weblog
私の「杉浦」という姓からもわかるように、知る人ぞ知る、ルーツは愛知県です。ヤクルトの杉浦(打ったあとのバットの離し方がかっこよかった。ちょっと前の選手ですが。)タレントの杉浦直樹、政治家の杉浦正健さんも皆同郷です。子どものころクラスには杉浦姓は、たいてい2,3人にて、名札には「杉浦ひ」と書かれていたものです。

母方の実家は、愛知県の三河湾に面した碧南(へきなん)という町で代々網元(あみもと)を営んでいました。朝2,3時という夜明け前から船を出し、午前中には漁を終えて戻り、捕れた魚を市場に出して、日銭を得るという過酷な仕事です。

漁船一隻は、家が建つほどの値段で、本当に貴重なものです。ある台風のときに船の舫(もやい)がほどけて船が沖に流れ出し、青年だった伯父は命綱一本で台風の海に飛び込み船を引き戻して来たという武勇伝があるほどです。

漁船仲間で事故があれば、その日から一斉に漁に出るのを止めてみんなで連日捜索に当たります。長引けば長引くほど漁には影響が出て来るわけです。でも、船板一枚下は地獄という命がけの仕事を共にする仲間としては、そうすることが長い間の習わしになっているということです。
網元は何人かの漁師を使っているわけで(「あんごさん」とおじたちは呼んでいましたが)がいるわけで、それは従業員のようなものですから、網元はその面倒を見ることになっているのだろうと思います。

収穫できる魚の時期もあり、何日もに及ぶ操業の停止は大きな被害になるわけです。
今回の漁船の被害者吉清さんのお兄さんが「冷たいようだが、ここまでやったので許してくれ」といって仲間の捜索を打ち切ることを決断されたのは、苦渋の選択だったわけです。

このような思いでいる被害者側に対して、防衛相を含むこの事故後の醜態はどう映るんでしょうか。

近時、世間は被害者問題に真剣に取り組んでいます。被害者の思いを考えれば・・・と、加害者側をどんどん厳罰にしています。
今回の事故自体が、そもそも、個々の生活者の命や営みなど眼中になかったような杜撰な艦船の運航によるものだったようです。
そのうえに、防衛相をも含んだこの事後対応は、あまりにもひどすぎるものではありませんか。被害者はこの有様をどんな思いでご覧になっているのでしょうか。

北九州での幼児3人が乗った車が橋から転落してなくなった交通事故の悲惨さはよく理解でき、逃げた運転手が飲酒量をごまかすために水を飲んでから出頭したことに大きな非難が集まりました。
それと比べて今回はどうでしょうか。

今回の問題は放置してはいけない問題だということをもっと理解していかなければならないと思います。




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2 コメント

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Unknown (ルビイ)
2008-03-01 23:18:07
近時、マスコミ等の報道の影響もあり世間は被害者の思いを考えれば・・・と加害者側をどんどん厳罰にしていますが、これは個人の犯罪に限られており公権力がからむ犯罪に対してはそんなことはないと思います。
沖縄米兵による少女暴行事件、イージス艦「あたご」事件に対しての政府の腰の重い対応をみても明らかなように思います。
なお、個人の犯罪に対する過度の厳罰主義というのは非民主的な国家において国家権力が国民に対して権威を示すために用いられることが多く懸念を感じ得ません。
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政府のご都合主義 (杉浦ひとみ)
2008-03-01 23:24:20
ルビイさんのおっしゃるとおりですね。
個人が加害者の場合には、厳罰を科し、犯罪の取り締まりのために国民の監視に利用せんとしているように思いますが、加害者が国の場合には、被害者保護などまったく度外視です。
このようなことからも、被害者保護さえも政府に利用されているのではないかと思うわけです。
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