杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・注目したい 新「日米安保宣言」にむけた協議

2009-07-17 02:01:10 | 平和問題
新『日米安保宣言』協議へ 核の傘、温暖化も包括 
東京新聞朝刊(2009年7月16日)面の記事です。

 日米両政府が、テロなど世界規模の課題に対応するため、
  新たな「日米安保共同宣言」
に向け協議する方針を固めた、と報道されています。
そして、16日に来日するキャンベル米国務次官補らと協議を始めるということです。

米国の「核の傘」から地球温暖化対策を含む広範な分野で日米同盟の拡大・強化を図るもので、日米同盟を「礎石」とする
  オバマ米政権の東アジア戦略
を具体化するものとなる、と解説されています。

そして、協議では、
  米国が核抑止戦略を説明し、テロ対策、ミサイル防衛(MD)での日米協力   日本の新たな「防衛計画の大綱」の検討作業、
  米国の国防戦略見直し(QDR)
  米軍再編
などが議題となるほか、北朝鮮など地域情勢でも意見交換することになる、とされています。
いずれもしっかりその経過を知りたい事柄です。

また、2005年2月に発効した京都議定書について、アメリカ合衆国は先進諸国の中で唯一離脱していますが、オバマ政権が地球温暖化対策で積極方針に転じたことから、温暖化問題についても、日本と連携を取った動きが予想されます。

この協議による新宣言が出されるのは、現行の日米安全保障条約が締結されて50周年を迎える2010年になるということです。

現在の日米安保共同宣言が合意された1996年以降に生じた「テロとの戦い」など、新たな安全保障環境に対応した日米安保の再定義が目指されることになります。
日本の外務省幹部は
「最初の協議なので、テーマや枠組みなど協議の前提について意見交換する」
と話しているということで、理論的には、新しい目的設定や関係構築の可能性も、あるように読めます。いつ頃から協議前提の意見交換が、内容を詰めたものになっていくのかについても、マスコミはしっかりおってもらいたいです。


オバマ大統領が今年2月のワシントンでの日米首脳会談で、
  日米同盟は「東アジアの安全保障の礎石だ」と指摘したこと
  クリントン政権下で現在の共同宣言をまとめたキャンベル氏を、東アジア・太平洋担当の国務次官補に指名していたこと
などが、アメリカの今回の取り組みへの姿勢を示唆しているものとしてあげらていますが、日本側はどのような方針で望むのかについては、紹介されていないのですが、憲法前文にあるような真の「名誉ある地位」( われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ)が確保できる姿勢で臨んで欲しいと思います。


ちなみに、
日米安保共同宣言とは・・・・・
1996年4月に当時の橋本龍太郎首相、クリントン米大統領の首脳会談で発表された冷戦後における日米安保を再定義した文書。
これによれば、日米安保はアジア・太平洋地域における安定の基礎と位置付けており、日本周辺事態での日米協力の研究を促進することを定め、これを基に99年に周辺事態法が制定されました。



参考

日米安全保障共同宣言         (外務省のホームページから)
-21世紀に向けての同盟-(仮訳)

1996年4月17日

1.本日、総理大臣と大統領は、歴史上最も成功している二国間関係の一つである日米関係を祝した。両首脳は、この関係が世界の平和と地域の安定並びに繁栄に深甚かつ積極的な貢献を行ってきたことを誇りとした。日本と米国との間の堅固な同盟関係は、冷戦の期間中、アジア太平洋地域の平和と安全の確保に役立った。我々の同盟関係は、この地域の力強い経済成長の土台であり続ける。両首脳は、日米両国の将来の安全と繁栄がアジア太平洋地域の将来と密接に結びついていることで意見が一致した。
 この同盟関係がもたらす平和と繁栄の利益は、両国政府のコミットメントのみによるものではなく、自由と民主主義を確保するための負担を分担してきた日米両国民の貢献にもよるものである。総理大臣と大統領は、この同盟関係を支えている人々、とりわけ、米軍を受け入れている日本の地域社会及び、故郷を遠く離れて平和と自由を守るために身を捧げている米国の人々に対し、深い感謝の気持ちを表明した。
2.両国政府は、過去一年余、変わりつつあるアジア太平洋地域の政治及び安全保障情勢並びに両国間の安全保障面の関係の様々な側面について集中的な検討を行ってきた。この検討に基づいて、総理大臣と大統領は、両国の政策を方向づける深遠な共通の価値、即ち自由の維持、民主主義の追求、及び人権の尊重に対するコミットメントを再確認した。両者は、日米間の協力の基盤は引き続き堅固であり、21世紀においてもこのパートナーシップが引き続き極めて重要であることで意見が一致した。

<地域情勢>
3.冷戦の終結以来、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいている。ここ数年来、この地域の諸国の間で政治及び安全保障についての対話が拡大してきている。民主主義の諸原則が益々尊重されてきている。歴史上かつてないほど繁栄が広がり、アジア太平洋という地域社会が出現しつつある。アジア太平洋地域は、今や世界で最も活力ある地域となっている。
 しかし同時に、この地域には依然として不安定性及び不確実性が存在する。朝鮮半島における緊張は続いている。核兵器を含む軍事力が依然大量に集中している。未解決の領土問題、潜在的な地域紛争、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は全て地域の不安定化をもたらす要因である。

<日米同盟関係と相互協力及び安全保障条約>
4.総理大臣と大統領は、この地域の安定を促進し、日米両国が直面する安全保障上の課題に対処していくことの重要性を強調した。
 これに関連して総理大臣と大統領は、日本と米国との間の同盟関係が持つ重要な価値を再確認した。両者は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(以下、日米安保条約)を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、共通の安全保障上の目標を達成するとともに、21世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した。 (a)  総理大臣は、冷戦後の安全保障情勢の下で日本の防衛力が適切な役割を果たすべきことを強調する1995年11月策定の新防衛大綱において明記された日本の基本的な防衛政策を確認した。総理大臣と大統領は、日本の防衛のための最も効果的な枠組みは、日米両国間の緊密な防衛協力であるとの点で意見が一致した。この協力は、自衛隊の適切な防衛能力と日米安保体制の組み合わせに基づくものである。両首脳は、日米安保条約に基づく米国の抑止力は引き続き日本の安全保障の拠り所であることを改めて確認した。
(b)  総理大臣と大統領は、米国が引き続き軍事的プレゼンスを維持することは、アジア太平洋地域の平和と安定の維持のためにも不可欠であることで意見が一致した。両首脳は、日米間の安全保障面の関係は、この地域における米国の肯定的な関与を支える極めて重要な柱の一つとなっているとの認識を共有した。
 大統領は、日本の防衛及びアジア太平洋地域の平和と安定に対する米国のコミットメントを強調した。大統領は、冷戦の終結以来、アジア太平洋地域における米軍戦力について一定の調整が行われたことに言及した。米国は、周到な評価に基づき、現在の安全保障情勢の下で米国のコミットメントを守るためには、日本におけるほぼ現在の水準を含め、この地域において、約10万人の前方展開軍事要員からなる現在の兵力構成を維持することが必要であることを再確認した。
(c)  総理大臣は、この地域において安定的かつ揺るぎのない存在であり続けるとの米国の決意を歓迎した。総理大臣は、日本における米軍の維持のために、日本が、日米安保条約に基づく施設及び区域の提供並びに接受国支援等を通じ適切な寄与を継続することを再確認した。大統領は、米国は日本の寄与を評価することを表明し、日本に駐留する米軍に対し財政的支援を提供する新特別協定が締結されたことを歓迎した。


<日米間の安全保障面の関係に基づく二国間協力>
5.総理大臣と大統領は、この極めて重要な安全保障面での関係の信頼性を強化することを目的として、以下の分野での協力を前進させるために努力を払うことで意見が一致した。
(a)  両国政府は、両国間の緊密な防衛協力が日米同盟関係の中心的要素であることを認識した上で、緊密な協議を継続することが不可欠であることで意見が一致した。両国政府は、国際情勢、とりわけアジア太平洋地域についての情報及び意見の交換を一層強化する。同時に、国際的な安全保障情勢において起こりうる変化に対応して、両国政府の必要性を最も良く満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢について引き続き緊密に協議する。
(b) 総理大臣と大統領は、日本と米国との間に既に構築されている緊密な協力関係を増進するため、1978年の「日米防衛協力のための指針」の見直しを開始することで意見が一致した。
 両首脳は、日本周辺地域において発生しうる事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する必要性につき意見が一致した。
(c)  総理大臣と大統領は、「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間の後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」が1996年4月15日署名されたことを歓迎し、この協定が日米間の協力関係を一層促進するものとなるよう期待を表明した。
(d)  両国政府は、自衛隊と米軍との間の協力のあらゆる側面における相互運用性の重要性に留意し、次期支援戦闘機(F-2)等の装備に関する日米共同研究開発をはじめとする技術と装備の分野における相互交流を充実する。
(e)  両国政府は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は、両国の共通の安全保障にとり重要な意味合いを有するものであることを認識した。両国政府は、拡散を防止するため共に行動していくとともに、既に進行中の弾道ミサイル防衛に関する研究において引き続き協力を行う。


6.総理大臣と大統領は、日米安保体制の中核的要素である米軍の円滑な日本駐留にとり、広範な日本国民の支持と理解が不可欠であることを認識した。両首脳は、両国政府が、米軍の存在と地位に関連する諸問題に対応するためあらゆる努力を行うことで意見が一致した。両首脳は、また、米軍と日本の地域社会との間の相互理解を深めるため、一層努力を払うことで意見が一致した。
 特に、米軍の施設及び区域が高度に集中している沖縄について、総理大臣と大統領は、日米安保条約の目的との調和を図りつつ、米軍の施設及び区域を整理し、統合し、縮小するために必要な方策を実施する決意を再確認した。このような観点から、両首脳は、「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)を通じてこれまで得られた重要な進展に満足の意を表するとともに、1996年4月15日のSACO中間報告で示された広範な措置を歓迎した。両首脳は、1996年11月までに、SACOの作業を成功裡に結実させるとの確固たるコミットメントを表明した。

<地域における協力>
7.総理大臣と大統領は、両国政府が、アジア太平洋地域の安全保障情勢をより平和的で安定的なものとするため、共同でも個別にも努力することで意見が一致した。これに関連して、両首脳は、日米間の安全保障面の関係に支えられたこの地域への米国の関与が、こうした努力の基盤となっていることを認識した。
 両首脳は、この地域における諸問題の平和的解決の重要性を強調した。両首脳は、この地域の安定と繁栄にとり、中国が肯定的かつ建設的な役割を果たすことが極めて重要であることを強調し、この関連で、両国は中国との協力を更に深めていくことに関心を有することを強調した。ロシアにおいて進行中の改革のプロセスは、地域及び世界の安定に寄与するものであり、引き続き慫慂し、協力するに足るものである。両首脳は、また、アジア太平洋地域の平和と安定にとり、東京宣言に基づく日露関係の完全な正常化が重要である旨述べた。両者は、朝鮮半島の安定が日米両国にとり極めて重要であることにも留意し、そのために両国が、韓国と緊密に協力しつつ、引き続きあらゆる努力を払っていくことを再確認した。
 総理大臣と大統領は、ASEAN地域フォーラムや、将来的には北東アジアに関する安全保障対話のような、多数国間の地域的安全保障についての対話及び協力の仕組みを更に発展させるため、両国政府が共同して、及び地域内の他の国々と共に、作業を継続することを再確認した。

<地球的規模での協力>
8.総理大臣と大統領は、日米安保条約が日米同盟関係の中核であり、地球的規模の問題についての日米協力の基盤たる相互信頼関係の土台となっていることを認識した。
 総理大臣と大統領は、両国政府が平和維持活動や人道的な国際救援活動等を通じ、国際連合その他の国際機関を支援するための協力を強化することで意見が一致した。
 両国政府は、全面的核実験禁止条約(CTBT)交渉の促進並びに大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散の防止を含め、軍備管理及び軍縮等の問題についての政策調整及び協力を行う。両首脳は、国連及びAPECにおける協力や、北朝鮮の核開発問題、中東和平プロセス及び旧ユーゴースラヴィアにおける和平執行プロセス等の問題についての協力を行なうことが、両国が共有する利益及び基本的価値が一層確保されるような世界を構築する一助となるとの点で意見が一致した。

<結語>
9.最後に、総理大臣と大統領は、安全保障、政治及び経済という日米関係の三本の柱は全て両国の共有する価値観及び利益に基づいており、また、日米安保条約により体現された相互信頼の基盤の上に成り立っているとの点で意見が一致した。総理大臣と大統領は、21世紀を目前に控え、成功を収めてきた安全保障協力の歴史の上に立って、将来の世代のために平和と繁栄を確保すべく共に手を携えて行動していくとの強い決意を再確認した。

1996年4月17日
 東 京

日本国内閣総理大臣
アメリカ合衆国大統領

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