・北欧の犯罪者自助支援組織 ＫＲＩＳ（クリス）

スウェーデンで、１９９７年にＫＲＩＳ（クリス）という団体が設立されました。
これは、過去３０年ほど刑務所に入っていたChrister Karlssonが、刑務所から出た者に対して更生のための支援がなさ過ぎることを問題と考え、数人の犯罪者とともに声を上げたところ、ストックホルムで理念に賛同する人がおり、スウェーデンを発祥の地としてできた、元受刑者の自助組織です。

ＫＲＩＳという名前は、「リベンジ」というような意味ですが、それは社会に対する復讐ではなく、自己に対する思いで「やってやるぞ」というような意味合いだそうです。

スウェーデンで２９カ所に支援の拠点（居場所）があり、５５００人の会員がいるそうです。
そして、今はヨーロッパなどにもその組織が拡がっています。

ただ、その呼び掛けは、大々的な広告ではなく、当事者個人から一対一で伝わっていっています。更生のための決意は立ち直っている先人からの話が一番説得力があるということです。

そして、この組織は、行政からの特別な支援を受けているものではないという点も重要です。受刑者が信頼して頼るためには、組織は権力に身を売っては行けない、という非常にストイックな考えに貫かれています。
（ただし、スウェーデンでは、刑務所から出た人にも住居の保障があるなど、このＫＲＩＳとは別に、福祉の視点からの対策が講じられているところは、日本とはまったく異なるところです）
このようなところに、一週間ほど、視察に行ってきました。

スウェーデンの少年刑務所にも行ったのですが、そこでの処遇について話をうかがっているときに、そこの所長さんは「どうせ社会に帰るんだから・・・」と何気なく話しておられました。

考えてみれば、非常に合理的な話で、「被害者の方の感情は？」などと聞くことがナンセンスに感じてしまうほどでした。
犯罪者を優遇するように見えて、更生させることでそうでない場合の社会の損失よりはずっと得を取る、という社会的コストの考え方には、なまじの感情論よりもずっと説得力を感じました。