世の中には慣例というか、今まで普通に使っていた、また、呼んでいた言葉が急に使われなくなることが、よくあります。
例えば「看護婦」と言う言葉。平成13年に法律により「看護師」という名称に変更されました。
ほかにも、「保母」さん、「保父」さんは、平成10年に法律により「保育士」という名称に統一、変更されました。
これらは日本国の法律によって正式に名称が変更された事例です。けれども、法律とは関係なく、こういう言い方はやめましょうと、倫理的観点から時代によって改められていった言葉は数限りなくあると思います。
それらを、ここでいちいち書きあげると差別語を並べ立てることになるのでやめておきます。
さて、本題ですが、うちなぁぐちについてもやはり、これは差別的だろう、これは侮蔑しているだろうという言葉もたくさんあります。うちなぁぐちは日本語と違って絶対的に話者が少ないのと、教育機関で教えられていないという事と、国家や法律などが存在しないなどの様々な理由により、倫理的によろしくないと言う言葉については、ほとんど話しあいや意見交換などがなされていないというのが現状だと言えると思います。
そこで、私はうちなぁぐち、もしくはうちなぁやまとぅぐちについて、何でもありの今の世の中に、それは違うのでは?と言う意見を提示していこうと思います。
今回取り上げたいのは「ないちゃー」という差別的、侮蔑的な言葉について。
こう書くと「えっ!」と驚く方もいらっしゃるはずです。普通に使っている方もいらっしゃるかもしれません。また差別的、侮蔑的な意味で使ったことは一度もないと、怒り出す方もいらっしゃるかもしれません。その気持ちは良く分かります。確かにこの言葉を使う気持ちは、差別的な意味あいで使っていない方が大多数かも知れませんが、その言葉自体が良くない意味を持っていたとすればどうでしょう?
この「ないちゃー」という言葉をどう思うか?と大正6年生まれの首里のおばあちゃんに聞きました。そうしたら、開口一番「わんねーしかん(私は嫌い)」と言いました。どうしてですかと聞くと「うしぇーとーんねーっし(馬鹿にしているようだ)」とのこと。ほかにも、うちなぁぐちが母語話者の方、複数に聞いたのですが、ほとんどの方が良くない言葉だとおっしゃっていました。
第一に疑問に思うのがどうして?です。どうして、あまり良くない言葉だと思うのならばこんなにも世間に広まってしまったのか。これは色々な答えがあるのでしょう。ともかく、良くない言葉だという理由を説明しましょう。
まず、「ないちゃー」の「ないち」とは「内地」のことで、沖縄から見て日本本土の事を指します。これは、うちなぁぐちではなく、日本語です。
そして、うちなぁぐちでは、土地名の語尾を伸ばしていうと、「やなぐち(悪口)」になるという特徴があります。
あまり書きたくないのですが、説明の為に自分の出身地を例にあげます。まず、私は那覇生まれですが、うちなぁぐちでは那覇を「なーふぁ」と言います。この語尾を伸ばして発音すると、那覇の人をさげすんだ言葉「なーふぁー」となるんです。もう一つ、私は沖縄市山内で育ちました。山内はうちなぁぐちでは「やまち」と発音します。これも語尾を伸ばし「やまちゃー」と言うと、山内の人をさげすんだ意味になるんです。ですから「ないち」の人をさげすむ言い方は「ないちゃー」となるんです。
じゃあ、どう言う言い方が良いのかと言うと、「ないちぬっちゅ」、漢字を当てると「内地ぬ人」と言えば、差別的な意味合いはなくなります。
けれども、「内地」と言う言葉は、明治12年の沖縄県設置以降、琉球王国が日本に組み込まれてから使い始めた日本語であり、うちなぁぐちではないのです。それならば、それ以前は何と呼んでいたのかというと「やまとぅ(大和)」と呼んでいました。すなわち、うちなぁぐちでは「日本」のことを「やまとぅ」と言うのです。ただ、この「やまとぅ(大和)」も伸ばして「やまとぅー」とすると、やはり馬鹿にした言い方になりますので気をつけましょう。
したがって、「日本人」と言いたいのならば「やまとぅんちゅ(大和ん人)」と言うのがうちなぁぐちなんですね。
最近ある場所で「私、ないちゃーなんですよ」という方がいました。これも「私、やまとぅんちゅなんですよ」と言いかえればまったく問題なないんですけどね。
※写真について
私の友、仲嶺三味線店のオーナーでもある仲嶺 幹(なかみね みき)と仲良く写真を撮りました。彼は若干30代でうちなぁの名工と評価されています。彼の店は那覇市安里にあります。是非一度はめんそーり。光龍のブログを見ましたと言えば、喜んでくれると思います。
text:比嘉光龍
ないちゃー と言う言葉が差別的だとは知っていましたが
そのような意味で差別的な言葉だと言う事は初めて知りました。
気をつけて使わない
といけませんね。
内地という言葉は廃藩置県後のものだったんですねえ…言語的な歴史は浅いのですね。
比嘉光龍(ふぃじゃ ばいろん)