「なんのために生きてるんスか?」
「・・・償い、かな」
「それ、今度の合コンで使ってみます」
浅野いにお「おやすみプンプン」3巻
より
―
僕のことを知ってる人なら僕がうそばかり
ついてるって知ってるはず、
だけどなんでそんなにうそばかりなのかを
知らないと思う
本当のことを言って
人を死なせてしまったからだ。
それまでは「建前」が嫌いで
「嘘」はもっと嫌いだった。
けど、本当だと思って言ったその言葉で
僕はその子を死なせてしまった、
かなり酷いことだったと思う。自分を
殴り飛ばしたい気分だった。自分で自分を
殺してやりたい、くらいだった。
いい嘘と悪い本当がある。それがわからないくらい
バカだった。言うだけ言って、何も考えない
自分を責めた。
いや、その子の死んだ理由が僕の言葉だけかと言うと
わからない、けど僕はそれ以来
「うそでもいいから笑顔になって」
と願い、祈るようになった
あの子の泣いた顔が離れないから。
―
僕が書く日記やテキストは
嘘っていうか妄想ばかりなのだけど、
結局、完全な嘘ってのはないのだ。
どこかに本当のことが、言葉が
混じるんだって
思うようになった。
君が笑顔になってほしいって気持ちが
きっと、ずっと本当だからだと
思う、そして
君が泣かないように笑えるように。
今日は雨でも君には「晴れたよ」
そう。。
うん、湿度は高いけどね。
―
それから数年後。
力ない声で笑った君のこけた
頬を見て、なでたくなったけど僕は恋人じゃない。
かつて僕が本当に思ってることを言って
死なせてしまったあの子の笑顔が
重なる。
だから僕は今、延々と作り話をして
へたくそな嘘をついて
君を無理やり笑わせる。
けど
君には通用しない。
きっと君の目に映る僕の顔は
不細工で情けなくて、惨めだ。
でも、それでも君の笑顔が「嘘」でないなら
僕はしあわせなんだ。
ある日君の車椅子を押して僕、戦争での出来事を語る、
去年の暮れに、当たり所がよかったんだね、
銃弾が腿だったからほら、ここなら痛くもないし
死ぬこともない、除隊なんだ。よかったよまた
君と歩けて。
君は消えそうな声で言う
「あと、半年」
半年?
「終わるの」
戦争・・・
「それも。私の中では」
・・・それは
「うん。医者に言われた。私、あと半年の命」
うそだと言ってくれ、と僕は言う、
君は笑って、うそならよかったんだけど、としかし
涙、僕は唐突すぎてわからず、どんな顔をしたのか
思い出せないくらい。
しかし君が言った
「本当のことだよ」
僕に、できること、ないかな。
何かできること――
「私は、この病院で7年。
本はたくさん読んだ。知っている限り
この世界での死は、私たちにとっては
すべての終わりだということ、だけど
もしあなたが私に最後にプレゼントして
くれるなら」
うん
「うそを」
うん
「うそ、を、ついて。私の死が、私の終わりでは
ない、ということ」
それから君が死ぬ日まで
意識を失う寸前まで、僕は嘘をつき続けた。
けど、その君も
最後にはそれが本当か、嘘か
わからなかったはずだ。
最後の頃君が寝たきりでチューブで
呼吸をしていた時に僕が、まるで眠ってるような
君に言った、
「好きだ」
と。
―
どこまで本当なのかわからないけど
僕もわからないけど
これからも、よかったら僕の嘘の言葉で
本当の気持ちを綴る、この日記を
たまに読んでみてください。
よろしく。
あも
「・・・償い、かな」
「それ、今度の合コンで使ってみます」
浅野いにお「おやすみプンプン」3巻
より
―
僕のことを知ってる人なら僕がうそばかり
ついてるって知ってるはず、
だけどなんでそんなにうそばかりなのかを
知らないと思う
本当のことを言って
人を死なせてしまったからだ。
それまでは「建前」が嫌いで
「嘘」はもっと嫌いだった。
けど、本当だと思って言ったその言葉で
僕はその子を死なせてしまった、
かなり酷いことだったと思う。自分を
殴り飛ばしたい気分だった。自分で自分を
殺してやりたい、くらいだった。
いい嘘と悪い本当がある。それがわからないくらい
バカだった。言うだけ言って、何も考えない
自分を責めた。
いや、その子の死んだ理由が僕の言葉だけかと言うと
わからない、けど僕はそれ以来
「うそでもいいから笑顔になって」
と願い、祈るようになった
あの子の泣いた顔が離れないから。
―
僕が書く日記やテキストは
嘘っていうか妄想ばかりなのだけど、
結局、完全な嘘ってのはないのだ。
どこかに本当のことが、言葉が
混じるんだって
思うようになった。
君が笑顔になってほしいって気持ちが
きっと、ずっと本当だからだと
思う、そして
君が泣かないように笑えるように。
今日は雨でも君には「晴れたよ」
そう。。
うん、湿度は高いけどね。
―
それから数年後。
力ない声で笑った君のこけた
頬を見て、なでたくなったけど僕は恋人じゃない。
かつて僕が本当に思ってることを言って
死なせてしまったあの子の笑顔が
重なる。
だから僕は今、延々と作り話をして
へたくそな嘘をついて
君を無理やり笑わせる。
けど
君には通用しない。
きっと君の目に映る僕の顔は
不細工で情けなくて、惨めだ。
でも、それでも君の笑顔が「嘘」でないなら
僕はしあわせなんだ。
ある日君の車椅子を押して僕、戦争での出来事を語る、
去年の暮れに、当たり所がよかったんだね、
銃弾が腿だったからほら、ここなら痛くもないし
死ぬこともない、除隊なんだ。よかったよまた
君と歩けて。
君は消えそうな声で言う
「あと、半年」
半年?
「終わるの」
戦争・・・
「それも。私の中では」
・・・それは
「うん。医者に言われた。私、あと半年の命」
うそだと言ってくれ、と僕は言う、
君は笑って、うそならよかったんだけど、としかし
涙、僕は唐突すぎてわからず、どんな顔をしたのか
思い出せないくらい。
しかし君が言った
「本当のことだよ」
僕に、できること、ないかな。
何かできること――
「私は、この病院で7年。
本はたくさん読んだ。知っている限り
この世界での死は、私たちにとっては
すべての終わりだということ、だけど
もしあなたが私に最後にプレゼントして
くれるなら」
うん
「うそを」
うん
「うそ、を、ついて。私の死が、私の終わりでは
ない、ということ」
それから君が死ぬ日まで
意識を失う寸前まで、僕は嘘をつき続けた。
けど、その君も
最後にはそれが本当か、嘘か
わからなかったはずだ。
最後の頃君が寝たきりでチューブで
呼吸をしていた時に僕が、まるで眠ってるような
君に言った、
「好きだ」
と。
―
どこまで本当なのかわからないけど
僕もわからないけど
これからも、よかったら僕の嘘の言葉で
本当の気持ちを綴る、この日記を
たまに読んでみてください。
よろしく。
あも