コラム「ひびき」  ☆☆お堀端クリニック☆☆

小田原市お堀端通りにある神経内科クリニックです。
折に触れて、ちょっとした話題、雑感を発信いたします。

絶対音感

2012年05月24日 | コラム
世の中には、ちょっと聴いただけで、その音がピアノの鍵盤のどの音かわかる人がいます。いくつかの音が混ざっっていても、4-5個の成分なら弁別できるらしい。こういう才能は、4-5歳くらいまでに身につけないと、その後、いくら頑張っても獲得することは出来ないのだそうだ。
犬や猫を飼っている人は、たいてい自分の飼い犬や猫に名前をつけていることでしょう。名前を呼ぶと、しっぽを振って全身をくねらせて近づいてくるのがたまらない、とおっしゃる。人が話す簡単な単語や会話なら理解してそれにあった行動をとる、だから言葉を理解しているに違いないとも見ておられる。
しかし、数ある動物種の中で、言葉といえるものをもっている、あるいは持つ可能性のある動物は、トリとクジラとヒトしかいないそうです。詳しい議論や学説は省略しますが、言葉を持つ可能性のない動物の聴覚の多くは、実は、絶対音感なのだそうです。ある特定の周波数の音に反応する細胞は決まっており、その細胞はその音にしか反応しません。音の高低、強弱を聞き分けることは出来ますが、いろいろなヒトが、いろいろな音の高さ、長さ、間合い、強弱で呼びかけた「ポチ」という音の連鎖を同じものとしては反応出来ないらしいのです。だから、誰が発音しても、「ポチ」と呼ばれると、自分のことだとわかって、しっぽを振るというのはどうも嘘らしい。何かもっと別の要素をうまく利用してコミュニーケーションを図っているらしい。
さて、ヒトの絶対音感です。どうも、ヒトも生まれつきは、みな絶対音感らしい。したがって、4-5歳までに獲得するのではなく、この頃までに多くの人は生まれつきの絶対音感を喪失するらしい。喪失する過程で、代わりに、いろんなヒトがまるで違った音のつながりとして発音している「ポチ」を一つの単語として認識するようになるのです。言語の獲得過程です。
様々な、一見異なる感覚の入力から、かなりファジーな処理を経て、一つの単語、文脈、情報を受容する過程で、単一入力→単一出力という絶対音感的処理方法を棄ててしまう訳です。そのお陰で、脈絡のなさそうな膨大な情報の束から、意味のあるつながりを見つけ、さらに未来への予測につなげるという学習が成立してきます。複雑、複数入力→単一出力には、曖昧さをもった情報処理の方法が役立っているのです。



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