コラム「ひびき」  ☆☆お堀端クリニック☆☆

小田原市お堀端通りにある神経内科クリニックです。
折に触れて、ちょっとした話題、雑感を発信いたします。

一隅を照らす

2015年06月07日 | コラム
国宝とは何者ぞ、
宝とは道心なり。
道心ある人を、名づけて国宝となす。
故に古人言く、
「径寸十枚、これ国宝に非ず。
照于一隅、これ則ち国宝なり」と。
古哲また云く、
「能く言ひて行ふこと能はざるは
国の師なり。
能く行ひて言ふこと能はざるは
国の用なり。
能く行ひ能く言ふは国の宝なり。
三品のうち、
ただ言ふこと能はず行ふこと能はざるを国の賊となす」と。
乃ち道心あるの仏子を、
西には菩薩と称し、
東には君子と号す。
悪事を己れに向へ、
好事を他に与へ、
己れを忘れて他を利するは、
慈悲の極みなり。

最澄 山家学生式
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国の宝とは何か。
宝とは道を修めようとする心です。
この道心をもっている人こそ、
社会にとって、なくてはならない国の宝です。
だから中国の昔の人はいいました。
「直径三センチメートルの宝石十個、それが宝ではありません。
社会の一隅にいながら、社会を照らす生活をする、その人こそが、なくてはならない国宝の人なのです」と。
古代の哲人がまた言うには、
「良く発言する事は出来るが行動しないのは国の師で、
良く行動して発言しないのは
国に有用な人です、
良く行動し良く発言する事は国の宝で、三種のうち、
ただ発言もしない行動もしないのは
国の賊です」と。
このような道心ある人をインドでは菩薩と呼び、中国では君子と呼びます。
いやな事でも自分で引き受け、
よい事は他の人に分かち与え、
自分をひとまずおいて、
まず他の人のために働くことこそ、
本当の慈悲なのです。

不滅の法灯 比叡山延暦寺