国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

中国における弱者の擁護者が権力に楯突く-陳光誠氏のこと

2006-07-25 00:12:59 | 時事問題
ニューヨークタイムズの7月20日付の記事「中国における弱者の擁護者が権力に楯突く」に関して。中国における開放政策の今後を占う上で、法治主義は非常に重要である。ニューヨークタイムズでも、中国における人権とならんで法治主義に対する関心は高い。

もちろん、中国でも最近法治主義に対する自覚が高まってきた。たとえばこの記事が扱っている陳光誠(Chen Guangcheng)氏は、盲目であり独学で法律を修めた活動家である。彼は、農民の権利の擁護者であり、それなりの成果を収めてきた。たとえば、彼の地元の製紙工場が、有害物質を含む排水を川に垂れ流すことをやめさせた。このような人物が活動できること自体、中国が法を重視していることの証拠である。しかしこの人物が昨年から、一人っ子政策に関わる集団訴訟を行う中でトラブルに遭っている。

山東省臨沂市人民政府は、物理的強制手段で一人っ子政策を遂行していた。彼は、これを非難したのだ。現在では物理的強制手段は違法である。説得と罰金で政策遂行するのが筋である。しかしこれでは成果があがりにくいので、昔ながらの物理的強制手段が用いられがちである。

さらに彼は、北京において集団訴訟を準備していた。そのとき(昨年9月)臨沂市人民政府関係者に拉致され、彼の自宅などに軟禁され、外部との連絡が絶たれている。そして今年6月についに、陳光誠氏に対する訴訟が行われた。公共財産の破壊と交通妨害がその罪名である。

前者は、今年2月、地元住民と陳氏を警備している警官との間の衝突が原因である。地元住民は、旧正月に、弱っている婦人を、警備している車で病院に連れて行くことを拒否した警官に対して怒りを爆発させたのだ。その過程で車が傷つけられた。

後者は、今年3月、陳氏が、友人が役人に殴打されたと聞き、責任者に会いたいと要求したことに関わっている。地元の党本部を訪問することが許された。そのとき警備のものが付いていき、車を遮断することを助けた。そして陳氏が道の真ん中で車を止めている写真が撮られたのだ。

陳氏の弁護団は、臨沂市を訪問すれば死を招くと脅迫され、実際市に入ることを妨害されている。警察は捜査を拒否している。住民は、陳氏の証人にならないように警告を受けているという。
(Advocate for China’s Weak Crosses the Powerful, http://www.nytimes.com/2006/07/20/world/asia/20blind.html)

この事例は、中国の法治主義を権力に楯突くために使うと、まだ復讐を受けることがあるという実態を示したものである。もっとも、このような情報が外部に届くこと自体が進歩なのかもしれない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ムンバイのテロ | トップ | てんぱる »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

時事問題」カテゴリの最新記事