ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

クレージー・ミヨ、近況。

2015-09-27 22:20:42 | 日記
クレージー・ミヨが退院してきてから2ヶ月が経つ。

退院間もない7月のブログでは
枯れ枝のような足で壁のコールボタンを押すという
凄まじい回復ぶりについて書いた。

あれはまさしく自らの復活宣言だったのだろう。

むせ込みが心配だからと提供している“やわらか食”を
ヘルパーの介助を待ちきれずに
かぶせてあったラップをスプーンで突き破って食べる。

骨折した股関節にボルトを入れたばかりなのに
起き上がろうとして、夜間、ベッドから転落する。

腹筋を使い、ベッド柵に手をかけて半身を起こし
コールボタンを激しく叩いて破損させる。

夜間コールで「痛~~~い!!!」と叫ぶので急行してみると
何に腹を立てたのか
ベッド脇の壁を思い切り叩いたらしく
小指の下から手のひらにかけてどす黒くうっ血している。

こうした事件(事故?)が起こるたびに頭を抱えながら対策を講じるのだが
どれもこれも、ミヨが相手では焼け石に水である。

身寄りのいない彼女を世話している
昔からの知り合いや青年後見人の弁護士も
「どうしてここまで元気になってしまったのか・・・」と
もはや回復を喜べずにいるようだ。

ここだけの話
昔からの知り合いである女性たちは
「ミヨさんはもう長くはないだろう。
だったら私たちでできるだけのことを…」と
ボランティアで世話することにした。

それが、ミヨが89歳のとき。
あれから2年近く。
90を超え、骨折・入院・手術という致命的な経験を経て
なおも破壊的なエネルギーを放出しているミヨを前にして
彼女たちの顔には
「こんなはずでは…」という戸惑いの表情が露骨に浮かぶのである。

さて、そんなミヨが昨夜もやってくれた。

あんまり壁を激しく叩くので
また怪我をされては大変だ!
それに、その壁の向こうには物盗られ妄想のK子が住んでおり
壁を叩く音が不穏の原因の一つになっているらしい。
なんとかしなければと
青年後見人が厚さ5センチほどのマットを買ってきた。
これをベッドと壁の隙間に立てかければ
音と振動が軽減されるだろう、という作戦だ。

しかしきのうの夜勤者が夜間に3回ミヨの様子を見に行くと
3回とも
そのマットが床に放り投げられていたという。

いったいどうやって!?
マットはベッドと壁にしっかり挟み込まれていたはずなのに。

正気なときは微笑むだけで滅多に喋らず
オムツ交換のたびに「ありがとうございます」とお礼を言う気高きミヨ。
私でも簡単にお姫様抱っこができるくらい
軽く、枯れ枝のように細いミヨ。

そのミヨのどこに、これほどの怒りとパワーがあるのか。

どこまで行く、ミヨ? どこまで生きる、ミヨ?
私、現在57。
残念だが、彼女の最期を看取ることはできないかもしれない。

枯れるまい。

2015-09-24 01:03:35 | 日記
たまには介護から離れよう。

舞台演出家・蜷川幸雄が率いる高齢者演劇集団「さいたまゴールドシアター」。
2006年の結成当時話題になったから
ご存知の方も少なくないだろう。

現在89歳になる女性を看板女優とするこの劇団が
昨年は香港、パリでも公演を果たし、高い評価を得たという。

遅ればせながら
その話題をおととい知った。
出所は言うまでもなく、NHKオンデマンド。
配信されていた過去のドキュメンタリー番組によって
私は彼女たちの輝きに触れることとなったのである。

40人に及ぶ高齢役者の力強さは半端ではなく
89歳の看板女優・重本恵津子さんが見せる舞台魂は圧巻としか言いようがないが
番組の中で私の心をぐわんと掴んだのが
ある高齢女優の言葉だった。

「誰でも平等に歳を取る。
でも、枯れるか枯れないかは、生き方次第」

その通りだ。

形になっていないだけで、その言葉は自分の中にもある。
けれども
実際に枯れてない生き方をしていらっしゃる方からその言葉を聞くと
己の中にある浅はかさを、反省せずにいられない。

枯れずに歳を重ねよう。

これからの私のテーマである。


拝啓、NHK様

2015-09-20 01:46:37 | 日記
もともとテレビっ子ではあるのだが
介護業界に入ってレギュラー番組を見ることが難しくなったこと
そして民放ドラマのあまりのつまらなさに
テレビを見るのを放棄した。

でも、家で寛いでいるときに、なにか見るものがほしい。

だったら動画配信はどうよ?と息子のすすめを受け入れて
Gyaoを見始めたのだが
これもそんなに面白くない。
ならば、これはどうだとhuluに登録して海外ドラマを見始めたのだが
それにもすぐに飽きてしまった。

なんだかんだで落ち着いたのがNHKオンデマンド。
今はこれにどっぷりはまっている。

ドキュメンタリー番組に歴史番組
そしてひと昔前の名作ドラマ。

わおっ、これよこれ、私が求めていたのは。

でも、あれ? 私、この間までNHKなんか見なかったよね?
「見ないんだから受信料なんか払いません!」って
息巻いてたよね?
(ま、BSは見てたから払わざるを得なかったけど)

先日、友だちが言った。
「最近、NHKとテレ東しか見なくなったんだよね。
これって、年?」

わっかるわあ。

肉体的な衰えは、まず、目から来るという。
しかし精神的な熟成(衰えではなく、熟成)は
NHKを好んで見始めたことにより痛感する。

受信料、喜んでお支払いします。
だからどうかNHK様、これからも骨太のドキュメンタリー番組やドラマを
せっせ、せっせとお作りくださいませ。

あなた方が若者に迎合したつまらない番組しか作らなくなったら
受信料を徴収しに来るオヤジを
私、ボコボコにしちゃうかもしれないからね。







懲りないヤツだぜ、ジジイⅩ

2015-09-17 00:46:02 | 日記
またしても恐縮だが、ジジイⅩの続々編である。

きのう、事務所を民生委員と地域包括センターの職員が訪ねてきた。
「すみません、ここに住んでおられる○○さんという男性が
こちらの方から殴る、蹴るされたと訴えてこられたんですが…」。

○○さんとは他でもない、ジジイⅩのこと。
話を聞いてみると
ヤツは近くのクリーニング店に行って
「殴る、蹴るされたので民生委員を呼んでほしい」と頼み
あわてて飛んできた民生委員が“すわ、高齢者虐待!”と
大急ぎで地域包括センターに電話を入れ
“これは一大事だあ!”とこけつまるびつやってきた地域包括センターの職員が
ジジイⅩから話を聞く。
しかし、どうにも二転三転するジイサンの話。
こりゃあ認知症のおじいさんの被害妄想なのだろうが
とりあえずジイサンが住んでいるという高齢者住宅まで行ってみるかと
民生委員を伴ってウチにおいでなすった、というわけである。

殴る、蹴るの張本人とされているウチの責任者がこれまでの経緯を説明すると
やれやれ、これは困難事例として報告しておきましょうと
地域包括センターの職員は帰っていったが…

まったくヤツはなんてことをしてくれるのか。
ウチの大切な利用者様ではあるが
実際、よーやるわ!

事の発端は
アナタが若くかわいい女性ヘルパーに
「もしイヤでなかったら素手でチンチンヲ洗ってほしい」と
エロいことを言ったからでしょーが!?
それがどうして、虐待事件に摩り替わってる!?

昨今の高齢者虐待事件に乗って
まんまと被害者に成りすまそうとしているジジイⅩだが
断じて言う。
ウチの責任者はヤツを殴る、蹴るなんぞまったくしていない。

それどころか
エロ話が他の利用者に漏れてはジジイⅩの尊厳にかかわる。
そんな配慮から応接室にヤツを連れて行った。
それを、監禁された、暴力を振るわれたと
ヤツは自ら話を大きくしているのだ。

気の毒なのは、ヤツの娘である。
60代の娘はこの話を夫にも子どもたちにも言えず
すっかり憔悴しているらしい。

気の毒だが
ヤツがこんなでは、どうにもならない。



続・ジジイⅩ

2015-09-13 23:28:15 | 日記
きのうの続編である。

休みであった私の元へ同僚から「ついに110番!」と
一言だけのメールが届いた。

なんだ? 今度は何が起こったか!?

そして今、私は彼女との電話で真相を知る。
きのうブログに書いたジジイⅩが近くのコンビニに行って
「監禁され、暴力を受けた。警察に電話してくれ!」
と、助けを求めたのだという。

監禁、暴力と聞いて、警察も慌ててやってくる。
しかしそこには
先日のわいせつ行為を知らされて飛んできたジジイⅩの娘と息子がいて
「おとーさん、なんて馬鹿なことを!」と大騒ぎ。

それでもヤツは怯むどころかウチの責任者を指差し
「こいつだ、俺を監禁して暴力を振るったのは。
さあ、逮捕してくれ」
と、大声で叫ぶ。

ヘルパーに素手でイチモツを洗ってくれと言ったことを注意しようと
応接室にヤツを連れて行ったことが
責任者による監禁、暴力になっているらしい。

事情を知って、あきれ返るおまわりさん。
おやじ、もう勘当だ!と出て行く息子。
「だから俺は“イヤじゃなかったら素手でチンチンを洗ってくれ”と
ちゃんと断ったんだ。どこが悪いんだあ!!!」と
杖を振りかざして猛り狂うジジイⅩ。
「断ればいいってことじゃないでしょう?
ヘルパーさんにそんなことを言うこと事態、頭がおかしいでしょう?」
と、語気強く父親をののしる娘。
そして、監禁と暴力行為で訴えられそうになりながら
なんとか事態収拾を試みようとするウチの責任者。

そんな騒動が、昼前から夕方まで繰り広げられたのだという。

「もう素手でチンチンを洗ってほしいとは言わない」
「股間にクリームを塗ってくれとは言わない」
ヤツがそう約束してくれれば
ウチとしてはこれまで通りのサービスを提供しようと言っているのだが
プライドを傷つけられたジジイⅩは
矛先の収めどころを見失い
どんどん、どんどん、おかしくなっているようである。