クレージー・ミヨが退院してきてから2ヶ月が経つ。
退院間もない7月のブログでは
枯れ枝のような足で壁のコールボタンを押すという
凄まじい回復ぶりについて書いた。
あれはまさしく自らの復活宣言だったのだろう。
むせ込みが心配だからと提供している“やわらか食”を
ヘルパーの介助を待ちきれずに
かぶせてあったラップをスプーンで突き破って食べる。
骨折した股関節にボルトを入れたばかりなのに
起き上がろうとして、夜間、ベッドから転落する。
腹筋を使い、ベッド柵に手をかけて半身を起こし
コールボタンを激しく叩いて破損させる。
夜間コールで「痛~~~い!!!」と叫ぶので急行してみると
何に腹を立てたのか
ベッド脇の壁を思い切り叩いたらしく
小指の下から手のひらにかけてどす黒くうっ血している。
こうした事件(事故?)が起こるたびに頭を抱えながら対策を講じるのだが
どれもこれも、ミヨが相手では焼け石に水である。
身寄りのいない彼女を世話している
昔からの知り合いや青年後見人の弁護士も
「どうしてここまで元気になってしまったのか・・・」と
もはや回復を喜べずにいるようだ。
ここだけの話
昔からの知り合いである女性たちは
「ミヨさんはもう長くはないだろう。
だったら私たちでできるだけのことを…」と
ボランティアで世話することにした。
それが、ミヨが89歳のとき。
あれから2年近く。
90を超え、骨折・入院・手術という致命的な経験を経て
なおも破壊的なエネルギーを放出しているミヨを前にして
彼女たちの顔には
「こんなはずでは…」という戸惑いの表情が露骨に浮かぶのである。
さて、そんなミヨが昨夜もやってくれた。
あんまり壁を激しく叩くので
また怪我をされては大変だ!
それに、その壁の向こうには物盗られ妄想のK子が住んでおり
壁を叩く音が不穏の原因の一つになっているらしい。
なんとかしなければと
青年後見人が厚さ5センチほどのマットを買ってきた。
これをベッドと壁の隙間に立てかければ
音と振動が軽減されるだろう、という作戦だ。
しかしきのうの夜勤者が夜間に3回ミヨの様子を見に行くと
3回とも
そのマットが床に放り投げられていたという。
いったいどうやって!?
マットはベッドと壁にしっかり挟み込まれていたはずなのに。
正気なときは微笑むだけで滅多に喋らず
オムツ交換のたびに「ありがとうございます」とお礼を言う気高きミヨ。
私でも簡単にお姫様抱っこができるくらい
軽く、枯れ枝のように細いミヨ。
そのミヨのどこに、これほどの怒りとパワーがあるのか。
どこまで行く、ミヨ? どこまで生きる、ミヨ?
私、現在57。
残念だが、彼女の最期を看取ることはできないかもしれない。
退院間もない7月のブログでは
枯れ枝のような足で壁のコールボタンを押すという
凄まじい回復ぶりについて書いた。
あれはまさしく自らの復活宣言だったのだろう。
むせ込みが心配だからと提供している“やわらか食”を
ヘルパーの介助を待ちきれずに
かぶせてあったラップをスプーンで突き破って食べる。
骨折した股関節にボルトを入れたばかりなのに
起き上がろうとして、夜間、ベッドから転落する。
腹筋を使い、ベッド柵に手をかけて半身を起こし
コールボタンを激しく叩いて破損させる。
夜間コールで「痛~~~い!!!」と叫ぶので急行してみると
何に腹を立てたのか
ベッド脇の壁を思い切り叩いたらしく
小指の下から手のひらにかけてどす黒くうっ血している。
こうした事件(事故?)が起こるたびに頭を抱えながら対策を講じるのだが
どれもこれも、ミヨが相手では焼け石に水である。
身寄りのいない彼女を世話している
昔からの知り合いや青年後見人の弁護士も
「どうしてここまで元気になってしまったのか・・・」と
もはや回復を喜べずにいるようだ。
ここだけの話
昔からの知り合いである女性たちは
「ミヨさんはもう長くはないだろう。
だったら私たちでできるだけのことを…」と
ボランティアで世話することにした。
それが、ミヨが89歳のとき。
あれから2年近く。
90を超え、骨折・入院・手術という致命的な経験を経て
なおも破壊的なエネルギーを放出しているミヨを前にして
彼女たちの顔には
「こんなはずでは…」という戸惑いの表情が露骨に浮かぶのである。
さて、そんなミヨが昨夜もやってくれた。
あんまり壁を激しく叩くので
また怪我をされては大変だ!
それに、その壁の向こうには物盗られ妄想のK子が住んでおり
壁を叩く音が不穏の原因の一つになっているらしい。
なんとかしなければと
青年後見人が厚さ5センチほどのマットを買ってきた。
これをベッドと壁の隙間に立てかければ
音と振動が軽減されるだろう、という作戦だ。
しかしきのうの夜勤者が夜間に3回ミヨの様子を見に行くと
3回とも
そのマットが床に放り投げられていたという。
いったいどうやって!?
マットはベッドと壁にしっかり挟み込まれていたはずなのに。
正気なときは微笑むだけで滅多に喋らず
オムツ交換のたびに「ありがとうございます」とお礼を言う気高きミヨ。
私でも簡単にお姫様抱っこができるくらい
軽く、枯れ枝のように細いミヨ。
そのミヨのどこに、これほどの怒りとパワーがあるのか。
どこまで行く、ミヨ? どこまで生きる、ミヨ?
私、現在57。
残念だが、彼女の最期を看取ることはできないかもしれない。