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インテリアコーディネーターのブログ。
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2月27日 京からかみ

2008-02-27 | イベントレポート
唐長」さんをご存知ですか?
京都には古くから御所を中心に、十数軒の唐紙屋が存在しましたが、蛤御門の変(はまぐりごもんのへん 江戸時代後期)で、ほとんどを焼失。わずかに唐長の持つ版木だけが残りました。唐長は、室町時代からほとんど変わらない技法を代々受け継いで守っている「京唐紙」の老舗です。

ところで、「唐紙-からかみ」とは平安時代、唐(中国)から来た紙の総称です。その中でも、雲母(=ケイ酸塩鉱物のグループ名。“きらら”、“きら”とも呼ばれる。その名の通り、キラキラ光る粉)で文様を刷った紋唐紙は日本で模倣して作られ、これを「からかみ」と呼ぶようになりました。当初は料紙(=りょうし 一般的に仮名や写経をするときに使う加工紙のことをいう)として使われていましたが、江戸時代に大量生産が可能となると、襖紙として使われるようになり、一般庶民にも身近なものになりました。ここ京都は、唐紙の主な生産地で、京都で作られたものは特に「京唐紙」と呼ばれます。
唐紙の作り方は、版画をイメージするとわかりやすいと思います。唐長では古いものは江戸時代初期、新しいものだと明治、大正のものまで、600枚の版木が保存されているそうです。この板木(下の写真)に雲母と布のり(=ふのり 布海苔 海草の一種でこれを煮とかして使います)を混ぜたものをつけ、和紙に文様を刷り込んで作ります。ここで版画と違うのは、ばれんで強くこするのではなく、優しくなでるように、手で摺り付けるという点。現在では、襖、障子、壁紙などに使われていますが、大きな面積のものを製作する際には、この柄のつなぎ具合がとても難しいのだとか。
 
たしかに、身幅ほどの版木ですから、その大変さは容易にわかりますよね。

2004年12月4日にオープンしたCOCON KARASUMA ~ 古今烏丸~に唐長の店舗が入り、社内でも話題になりました。「唐紙」・・・。普段目にしている襖紙とは格段に違う輝きを放っています。「いつかどこかで使いたいね。」という話しをしてから3年が経過し、私たちの中ではすっかり雲の上の存在となってしまっていました。

そんな唐紙に久しぶりにトキメイたのは、2月12日に訪れた今月度の町家セミナー(前回は畳のはなしとして、レポートしました。)、「京表具」編です。
毎回会場には、現物の見本がたくさん並びます。セミナーの開始時刻よりも少し早めに着いた私は、後輩とともに、簡易的につくられた枠の中に襖建具が納められる様子を眺めていました。
その中で、明らかに異彩を放つ一枚。
独特の色合いも、上品に輝くその光沢も、その他の物を曇らせてしまうだけの力がありました。
「あれ、絶対高いと思う・・・。」
唐紙の存在をすっかり忘れていた私は、それがそうだとも気付いてはいませんでした。
ただ、私の視力では捉えることが容易ではない距離からでも、その美しさだけははっきりと認識することができたのです。
講義が始まり、その建具を間近に見て、「なるほど」と理解することになりました。
講義の中では唐紙のサンプル帳もたくさん回覧されました。それを見ているのがあまりにも楽しくて、せっかく話してくださっている内容がほとんど耳に届かないくらい夢中になってしまいました。

唐紙。それは、ハッキリとした存在感のあるパターンを持っています。
そのサンプルを目の前にすると、少し使い道をためらわなくてはならないほど、主張の強いデザインに見えるのですが、それが、襖のような大きな面になっても、ちっともいやらしくないのです。
雲母の優しくも静かな光は、空間に優しく溶け込む術を知っています。
だから、住空間の「名脇役」になることができるのでしょう。

住宅には、たくさんのアイテムがあります。それぞれが「主役」として存在してしまっては、全く落ち着きのないものになってしまいます。あくまでも、住宅は「器」でなければならない。
そのために、その空間に存在するアイテムは「埋もれる」のではなく「溶け込める」力が必要なのだと思います。

「唐紙」にどうしてそこまで惹かれてしまうのか。
見本帳の中のたくさんの図柄を眺めながら自問自答を繰り返すうちに、そんな答えが見つかりました。

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