Advance

インテリアコーディネーターのブログ。
住まいのこと。インテリアのこと。仕事のこと。子どものこと。。。

2月5日 メンテナンスフリーがもたらした弊害

2008-02-05 | イベントレポート
2008年の私のテーマは「気宇」。
今年はとにかく、心にも生活にも、そして仕事にも大らかな心で余裕を持って取り組みたい。そんな想いを胸に新年を迎えたものの、全くできていないどころか、昨年よりも余裕のなかった昨日までの日々を反省しています。
さて、今なぜ「ゆとり」なのか?それは、京町家を通して、私が生まれる以前の生活を学ぶ内に、現代社会の色や温度のない生活に気付き始めたからです。

先月、1月26日、【杣人工房 嵯峨・木のこゝろ『風』】のオープニングイベントに参加しました。
ところで、この杣人工房とは、京都市内産の木材を使って改装したモデル工房のことで、市内の11箇所(各行政区に1ヶ所)に設置される一種のショールームです。これは、京都市が、「京都市農林行政基本方針」に基づき、市民や農林家の皆様とのパートナーシップの下、活力ある健全な森林の育成を進めており、平成17年度からは地域林業や木材関連業界の活性化、森林の保全を進める具体策として取り組んでいる、「京の山杣人工房事業」の相談窓口でもあります。

地図を頼りに訪れたその工房は、木の温もりと人の温もりに溢れた工房でした。
「そこがどのような施設なのか」ということを全く理解していないまま、ただ「国産材のセミナー」があるという情報だけで訪れた私は、とまどいを隠せませんでした。
JR嵯峨嵐山駅から、雪がひらひらと舞う道をいくらか歩き、その工房の扉を開けると、全身が柔らかい毛布で包まれるような感覚を覚えました。
靴を脱ぎ、室内に入ると床暖房で、足元から温められます。中を見渡すと、友達の家にお邪魔したような和やかな空間。いらっしゃった方々が、順々に名刺交換に来て下さいました。
「写真、撮ってもらっても大丈夫ですよ。」
と、竹内工務店の竹内社長に促され、カメラを構えると、みなさんカメラが捉える場所から移動してくださいます。そして、室内をご説明いただきました。
床暖房を施工した、ホールは「メイプル」の床、こちらの部屋は「インドネシア産材。こちらには、床暖房はしていません。」「こちらは、ヒノキ。床暖房の熱による収縮を考慮して板巾の狭いものを採用しました。」「それから、こちらがスギ。スギは柔らかくて、とても足ざわりが良いのですが、床暖房の仕上げ材としては不向きです。こちらも、すでに“スキ”が出てきていますが、春ごろに、この“スキ”をつめて、もう一度施工し直すつもりです。」
「これが、スギのベンチです。背もたれにもスギの磨き丸太を使いました。どうぞ座ってみてください。」

本当に、座りごこちのよいベンチでした。

「そして、このテーブルがケヤキ」

「それから、ダイニングテーブルがイチョウ。どちらもうるしによる塗装をしているんですよ。」

「足はね、ロートアイアンでつくりました。」

「こちらは、サクラのテーブルと、『G・WORKS』というメーカーから購入したスツール。モミとスギでできています。ほら、色味が違うでしょう?座ってみてください。とても気持ち良いから。」


不動産会社とは一味違う、穏やかで優しい雰囲気の中、部屋の中をウロウロ・・・キョロキョロ・・・。それから、ようやくセミナーが始まりました。

「どこでもお好きなところに座ってくださいね。」

セミナーと言えば、テーブルがあって、講師に正対するように着席するイメージがありますが、そこに居る人たちは、思い思いの場所に座ります。床暖房が気持ちの良い床の上にあぐらをかく人、座布団の上に正座をする人、イスに腰をかける人・・・。
私は、将来ダイニングチェアとして購入したいハンス・ウェグナーのYチェア(最近では中国産のものが出回っているので注意が必要です。デザインに対する版権の期限が切れているので、問題にはなりませんが、少し悲しい気がします。そもそもYチェアは中国の僧侶が用いた曲ろく《きょくろく=僧が法会の時などに用いる椅子の一種》からヒントを得てつくられたものですが、1949年に発表されて以来、世界中で愛されているイスの一つです。)を選びました。

お話しは、和やかなムードのままに始まりました。講義というよりも「こんな考え方で家をつくっていこうよ。」といったもの。その中でも特に印象的だったのが、次の言葉です。

・・・住宅にメンテナンスフリーなんてあり得ないことですよね。

以下は、当日に配られたレジュメの一部です。

■住まいを取りまく化学物質
・つくり手も住み手も無知だった
 合板、塗料、防虫剤からも ホルムアルデヒド
・機能性やメンテナンスフリーのみを追及したメーカー
 それに頼りすぎたユーザー あふれる産業廃棄物 


どうして、こんなにみんなが忙しくなってしまったのでしょうか。
私自身も、どちらかといえば、「いかに汚れない仕上げ材を選ぶか。」といったことが、自分が将来暮らす住宅の基準の一つになってしまっていました。
今、騒ぎになっている冷凍食品の問題だって同じことだと思います。自分で調理する余裕がないために、調理済みの食品に頼らなければならない人が増えてしまいました。
工夫して、ゆとりの時間を確保するために、あらゆる商品が生まれたハズなのに、ちっともゆとりが生まれない。
作業を省くために、何かを生み出すのではなく、「手入れすること」を楽しめる工夫や、「人と一緒に成長できる家」を考えていかなければならないと思う今日このごろです。


今日も最後までおつきあいいただき、ありがとうございます。そして、応援のワンクリックお願い致します。
人気blogランキングへ