この国の最も尊敬すべき点、それは高齢者をとても大切にする態度です。高齢者に限らず目上の者に対する敬いの気持ちには特筆すべきものが有り、それは決して「上下関係」等では無くごく自然なものなのです。それにはこの国の大多数を占めるカトリックの教えも深く関係しているとは思われますが、こういう環境に有れば「長生きして良かったな」と心から感じることでしょう。僕も今年の2月に母を失ったせいか、現地のおばあちゃん達と最近よく会話をします。貧しくても、いつも屈託の無い笑顔をして対応してくれます。母も晩年にはフィリピンに永住さしてやりたかったのですが叶いませんでした。
僕は日頃からつい「日本も30年程前は」と書いてしまいますが、今回の話題についてもこれまた同じで、昔は子供ですら「くそジジィ」「くそババァ」などと悪態をつき乍らも、心の底ではその存在は両親とはまた別格の絶対的な存在で有り、威厳を持つ両親とはまた異なる位置付けの、社会の中で重要な役割を持つ存在であった様に思います。
何よりも、この国の人々は「人を思いやる」優しい心根を持っています。そこには何の打算も無いですし、それが世界各国で大きな評価を受けているフィリピン人の看護師や介護福祉士のホスピタリティにも繋がっているのでしょう。よくバスやLRT、MRT(電車)の中で然りげ無く女性(若い人も含め年齢に関係なく)に席を譲る男性陣を目にしますが、このスマートさは本当に見習いたいものです。話が逸れてしまいましたが、古き良き時代の日本を彷佛とさせるこの国の文化や習慣、国の発展と共に変化していくのは時代の流れですが、良い部分だけはいつまでも見失うことなく変わらないでいてほしいものです。フィリピンでは目上の方への挨拶の仕種として、相手の手を取ってその手の甲を自分の額にあてる「bless」という行為があります。ちなみに僕も年下の方々からそれを受けるのですが、長年この国と係わってきているにも拘らず未だに照れるのは、年齢相応の中味を持っていないからなのでしょう。最後に、皺だらけの現地のおばあちゃん達の写真を掲載します。