あの車両を訪ねて

全国の保存・放置車両を訪ねています。

名古屋鉄道モ514、モ755/名鉄旧谷汲駅

2018-10-28 | 岐阜県


2000年代前半に全ての路線が廃止となった、名古屋鉄道の所謂“600V区間”。その中でも谷汲線は、最後まで昭和ヒト桁の車両が活躍していたことで知られていました。
そんな谷汲線の終点谷汲駅では、2001年の廃止から17年が経った今でも、当時活躍していた車両達が保存されています。



2001年9月30日限りで廃止となった谷汲駅ですが、現在も駅舎やホーム、線路に至るまで現役当時とほぼ変わらぬ姿で保存されており、1面2線のホームの両側にそれぞれモ514、モ755が留置されています。



駅舎から向かって右側の線路上にて保存されているのは、モ510形モ514です。
モ510形は、名鉄の前身会社の一つである美濃電気鉄道が1926年、すなわち大正15年(!)に製造した車両です。美濃電気鉄道が合併の後に名古屋鉄道となった際にモ510形と形式名が変更となり、その後2005年3月末の600V区間全廃時まで約80年もの間現役を保った長寿形式でした。
晩年まで活躍したモ513、モ514の2両の内、モ513は岐阜市内の公園に保存されました。一方モ514は2006年に当地へと搬入され、以降綺麗な姿を保っています。



当形式が長寿を保った理由の一つに、岐阜市内線~揖斐線の直通急行運用に抜擢されたことが挙げられます。鉄道線である揖斐線と軌道線である岐阜市内線を直通できるスペックを持ち合わせていたのが長らく同形式のみであったことから、1997年にモ780形が製造されるまでその任に就いていました。
車内は直通急行として運行するに相応しい転換クロスシートとなっています。1列+2列が車体中央で逆転しているのはなかなか見かけない構造ですね。



戸袋窓は特徴的な「丸窓」。この頃製造された車両では時折見られたもので、昭和3年製造の上田交通モハ5250形が丸窓電車として有名ですね。



前照灯も点灯し、凛々しい姿で展示されるモ514。一時期名鉄標準であるスカーレット一色になっていましたが、この急行色は非常に似合っていると感じます。ぜひ今後も、この綺麗な姿を見せて欲しい所ですね。

さて、モ514のお隣には、モ750形モ755が展示されています。



モ750形は、現在の名古屋鉄道の前身鉄道会社である(旧)名古屋鉄道が1927年にデセホ750形として製造した形式です。デセホ700形の改良形として751-760の10両が製造されました。
その後、(現)名古屋鉄道へと移行した際にモ750形へと形式名が変更され、退役を迎えています。
当形式は先述したモ510形とは異なり、名岐線(現在の名古屋本線の一部)や犬山線、瀬戸線など名鉄の各線で活躍した後、揖斐線系統へと移っています。またこのモ755は、1932年の鉄道省高山線の下呂延伸に伴い運行開始された柳橋~下呂間の直通特急列車へと充当されたと言う輝かしい歴史を持っています。



車内は至って普通のロングシートとなっていますが、造形の古さは魅力的ですね。ワンマン化改造が行われているので、中扉には整理券発行機が、また各運転台直後には運賃箱が設置されています。
そしてこの車両、実は年に一度「復活」することで知られています。



毎年秋に開催されている「赤い電車まつり」において、黒野方にアントを連結し、構内を数十メートル程移動する乗車体験会が行われています。私もこのイベントに合わせて現地に赴いたので、モ755の現役さながらの姿を見ることができました。

廃止から年月が経っても、活気溢れる駅に現役さながらの車両達。魅せる保存、と言うのはとても良いものだと感じる一日でした。

〈物件データ〉
設置場所:岐阜県本揖斐町 名鉄旧谷汲駅
公開時間:9時~16時半(月曜は休館)

撮影データ:2018年10月21日11時半~13時半頃 ※モ755の黒野方が順光になるのは午前、谷汲方が順光になるのは午後でした。参考までに。













明知鉄道アケチ1形アケチ1/山岡駅かんてんかん 森の列車カフェ

2017-03-24 | 岐阜県


名古屋駅から中央西線の快速で約1時間10分。山間にある恵那駅から出ている全長25.1kmの第三セクター鉄道・明知鉄道明知線の単行レールバスに乗り換え、更に30分ほど揺られた所に位置する山岡駅。いわゆる「棒線駅」である同駅の脇に留置されているのが、今回ご紹介するアケチ1形アケチ1です。



廃車後長らく倉庫として使用されて来た同車でしたが、2014年に再塗装が行われピカピカに、更に昨年車内を中心に改造が行われ、「森の列車カフェ」としてオープンしました。



片方は元のボックスシートにテーブルが設置され、もう片方は木材を用いた座席へと改装されています。このカフェでは寒天を用いたスイーツや地元の食材を使った料理を提供しており、私も車内でゆっくりとデザートに舌鼓を打つ至福の時間を過ごさせてもらいました。



この車両は運転台に自由に入ることができる他、貫通扉を出た所にささやかなテラスがあるため、貫通扉も自由に開閉することが出来ます。開業当時の車両の貴重な生き残りなので、訪れる際には是非慎重に扱って頂きます様…ちなみに、明知鉄道の転換時から知っていると言う食堂のおばちゃんの話は必聴です。

<物件情報>
設置場所:岐阜県恵那市 明知鉄道山岡駅構内 山岡駅かんてんかん「森の列車カフェ」
公開時間:通年(車内はカフェの営業時のみ、金~日の10時~15時)

撮影データ:2017年3月12日13時半頃