おちゃまな生活

競馬、旅行、洋楽、食べ物…と何でもありのブログです。
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読書記録 無盡蔵 濱田庄司 講談社文芸文庫

2005年06月06日 22時48分47秒 | 読書
 タイトルは難しい字ですが、「むじんぞう」と読みます。著者曰く「ことごとく蔵するなし」と読みたいそうです。
 
 この本は「日用品の素朴な美を認め、益子に築窯、制作し、民芸運動の創始者として活動した濱田庄司のエッセイ集です。
 
 民芸運動、現代的な意義はいざ知らず、当時は画期的な考え方だったと思います。
民芸品とは、「概ね無名の工人たちが、民衆の実生活に用いるためにつくった品、つまり民衆の工芸品」を指すそうです。その取り上げ方は「形を成す以前の眼に見えない根の力」を見つけていく手法をとります。「仕事の形だけにとらわれず、仕事の奥のもの、暮し、暮らしの奥のものの心、そういうもの全てがこちらに乗り移るように、受け取る。」
 彼は「知る前にまず見よ」といいます。
さらに、単なる、民芸品の蒐集だけにとどまらず、伝統の仕事振りを素直に受け取り、これを消化し、おのずから異なる現代の仕事として応え進んで、これらを暮らしの中に役立てる。活動をしていきます。(といっても、濱田庄司の作品は芸術作品ですが)
 
 この、この芸術家(職人)のコメントが深いんです。ちょっと紹介します。
「私が好きなものを持つのは、それが自身の眼で選んだ心の食べ物なので、もう食べ尽くして座右に残っている形は、すでにものの形ではなく、感謝のしるしとしてのお守だ。」

 「味は部分で感じは全体で」
「味は一種の定石で、観る方も作る方も、大抵年期でゆけるが、感じはそうはゆかない。時間と金では学べない」
 
「よき無地は美しい。狙った無地はすでに一種の模様、しかし、模様はいろいろつけながら、却って感じは無地とでもいい得られるんものがある。よき民芸品の模様はほとんどこの例に洩れない。」
 
 私自身も、あまり理解はしていませんが、含蓄がある言葉だと思いました。

これを機に 「柳 宗悦」「河井寛次郎」「バーナード・リーチ」を読んでみたくなりました。

読書記録 「新史 太閤記」 司馬遼太郎著 新潮文庫

2005年05月10日 23時15分38秒 | 読書
 司馬遼太郎版の「豊臣秀吉」の立身出世物語です。
 「女ったらし」という言葉を耳にしたことはありますが、「人たらし」という言葉どうでしょう?
「人たらし」という言葉は以前TVを見ていたら、成長企業のトップの方がご自分を評して使っていました。秀吉はその「人たらし」の天才の一人だったと思います。それも稀代の。秀吉は生まれながらの猿面を人間的魅力に転じ、見事な演出力で、次々と同世代の名将たちを統合し、日本を制覇していきます。その演出力は意識せず出きるもでありかつ計算であり、その相反するバランスが、秀吉の凄みであると思います。
 この「人たらし」になぜなれうるかというのを、この本を読み考えますと、二つあると思います。
 一つは、自己分析と他人からの評価が同じであることが揚げられると思います。秀吉は自分の容姿や性格、門地を十二分に理解し、その理解は他人とほとんどズレていない。なかなかできるようで出来ないと思います。本当に冷静に自己分析ができるか、他人の評価を受け入れられるか?それをいとも簡単に出来るのが、「人たらし」になれるかどうかだと思いました。
 二つ目は、人に対する興味だと思います。秀吉を見出した信長は徹底した能力主義であり、人を道具として捉えます。その点、秀吉は人を人として捉え演出力で重用していく。(ここが、司馬文学ではうまく表現されていると思います。)私たちも自分がすきというのは陥りやすいが、なかなか他人の魅力を見出していくのは難しいのでは、特に年を重ねれば重ねるほどと思いました。
 ふと、人間の魅力ってなんだろうと考えさせられました。
 

読書記録

2005年03月18日 01時10分45秒 | 読書
 司馬遼太郎さん 覇王の家  新潮文庫
内容:戦国時代の騒乱を平らげ、長期政権(覇王の家)の礎を隷属忍従と徹底した模倣のうちに築き上げた徳川家康とその家臣団の物語。
感想:徳川家康とその家臣団の評価はその後300年続いた江戸時代の評価につながる。徳川家という極端に自己保存の神経に敏感な性格を根底として作り上げられた政治体制は、一方で日本に特殊な文化を生ませる条件を作ったが、同時に世界の普遍性というものに理解の届きにくい民族性を作り上げ、現代になってもなお根を遺しているという不幸をつくった。(下手なまとめ:あとがき部)
 会社や組織の中で徳川家康の思想は現代でも随所に見られると思います。外資みたいなわけの分からんものに、組織を牛耳られるのはイヤだ。会社は危なくても社員みんな社長を盛り上げ、頑張っていこうみたいな。私もそんな経験はあるようなないような。

 この作品は、司馬遼太郎氏のシンポジュウムで宮城谷昌光さんが上げてました。そのほかに「新史 太閤記」もう一作品上げてました。いまは太閤記読んでます。
 宮城谷作品も大変好きで、絵画的な文章が好きです。中国作品ですが、大河ドラマとかにしたら受けると思います。