観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

最終講義を聞いてー金華山仲間

2015-03-02 21:35:17 | 15
中川 尚史

高槻さま

 これまで私が拝聴した最終講義では、「何の研究をしてきたか」を述べられることは多いのですが、その結果「何が分かったか」、「何を発見したか」まできちんと話されることは少なかったように思い、その点でたいへん感銘を受けました。また、スケッチがお上手なのは存じ上げていましたが、漢詩の素養までおありだったのは新発見でした。そして何よりすばらしいと思ったのは、東北大学、東京大学、そして麻布大学と3つの大学を渡り歩かれ、それぞれで学生を育てられていることで、それがよく分かった最終講義であり記念パーティーでした。今後も直接学生を指導されることはなくなるにせよ、著書を通じて若い人を育てていかれることと思っています。かくゆう私も高槻さんのご高著はすべてではありませんがいくつか拝読させていただき、活用もさせていただいています。活用のひとつが、このHP(http://www.nikkei.co.jp/nyushi/2015/honshi/kyoto.html)の「生物」にあります。お暇なときにご覧下さい。


中川さんは私が東北大学の助手のころ、金華山の調査を終えるとよく研究室に来てくれました。サルの食について新分野を開拓し、アフリカでもさまざまなサルを研究し、最近では日本各地のニホンザルの「ハグ行動」の違いの存在と意義について指摘し話題を呼びました。(高槻)

高槻先生の最終講義を聴いて-『唱歌「ふるさと」の生態学』担当編集者より

2015-03-02 21:30:40 | 15
井澤健輔(株式会社山と溪谷社自然図書出版部)

 最終講義、退官記念パーティー、参加させてくださりありがとうございました。講義もパーティーも、とてもなごやかですてきなものでした。
 シカの話はもちろん面白かったのですが、植物から昆虫、哺乳類まで生物のさまざまなつながりのお話が印象的でした。昔、今西錦司さんが書かれた「生物社会の論理」がありましたが、現代の生態学の視点からの生物社会の論理を知りたいと思いました。
 また、出版に関わる者としては、「本は著者が亡くなった後も、人に影響を与え続ける」という言葉も印象に残っています。私も本は、一生の財産になるし、その人の生き方にも影響を与えると思うので、そういう事に関わりたいと思ったのが、現在の会社に入った動機のひとつでした。
 そして懇親会の最後の「ふるさと」改めてよい歌だと思いました。最高のしめくくりに思えました。
 最近では、多自然型河川工法や自然復元の話もひと昔前より増えているように感じます。かつての「ふるさと」のように、生活のための草刈り、伐採などが「自然と」里山の自然を維持する形とは違うかもしれませんが、人と自然が共存する世界が広がっていければよいなと思います。

記載と標本の蓄積に尽くされた高槻先生

2015-03-02 21:19:44 | 15

久保麦野
高槻先生

3月7日は退官記念講演だったとのこと、聴きに行けず本当に残念でした。博物館の三河内さんが写真をメールで送ってくれましたが、懐かしのパリタさん達のビデオレターもあったそうで、さぞかし盛り上がったのではと思います。
長きにわたり、地道に生物の記載を続けてこられた先生の功績は本当に素晴らしいと思います。先生のように後世に引き継がれるような仕事をし、また後進を育てられるような研究者になりたいとは思いますが、まだまだ自分のことで手いっぱいで 駄目ですね。
これからもご指導・ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

久保麦野さんは高槻が東大総合研究博物館にいたときに指導し、シカの頭骨の研究をしています。パリタさんは当時スリランカから留学していてスリランカの人で、奥さんのローズさんとともに、ビデオメッセージを送ってくれました。現在はオーストラリア在住です。(高槻)


はじめに

2015-03-02 20:55:45 | 15
私は観察という言葉と実際に観察することが好きです。それが生物を理解するいちばん大切なことだと思うからです。そういう思いがあったので、研究室の学生に自然についてエッセーを書いてもらうことにし、そのタイトルを「観察 Observation 」としました。
 観察すれば文章が書けるということはありませんが、観察しなければ文章が書けないのは確かです。だから観察の勧めとしての機能を持たせました。同時に人に文章を書くという意識を持ってもらうことで、観察そのものに主体性を持ってもらうことを期待しました。そう、観察とは網膜にものが映ることとはまったく違うことを知ってもらいたいと思ったのです。また観察したことを文章に表現するには正確な言葉と表現が必要なことや、技術も要ることを体験してもらおうと思ったのです。
 そうして8年ほどが経ちました。私は毎月文章を書くようにし、学生には担当を指定して文章を書いてもらうようにしました。簡単なレポートくらいしか書いたことがない3年生はだいたいうまくいきません。でも、自分が見たオリジナルな体験があれば、アドバイスすることで見違えるようによい文章になりました。そのことで文章を書くことのよろこびを知った人もいるはずです。研究の成果は卒業論文に集約され、その中から学術論文になったものもありますが、オブザベーションの記録もまたこの研究室8年間の活動の蓄積になったと思います。
 2007年に麻布大学に赴任して、この3月で定年となり退職することになりました。このエッセーシリーズが引き継がれることを期待しますが、それはどうなるかわかりません。断続的でも続けてもらえれば幸いです。それでもこの号が大きな節目になることはまちがいないことで、私は最後の文章を載せることになりました。その最後の文章は最終講義の内容にすることにしました(3月8日以降掲載)。
 そうしたこともあり、いつもは扉の写真をそれぞれの季節を象徴するような写真にしていましたが、勝手ながら私がモンゴルの草原で群落記載をしている写真を載せるわがままをさせてもらいました。
 それから卒業生に声をかけたところ、いく人からの人が文章を寄せてくださいました。また、ご挨拶を送ったら、返事をくださった方、最終講義に参加して感想を寄せられた方もあり、了解を得て掲載させてもらいました。ありがとうございました。
 研究室のみなさんがこれからも観察することを研究の基本とし、野生動物学研究室が自然から学ぶという姿勢で活発に研究を進めてくれることを期待しています。8年間たいへんお世話になりました。

お疲れ様でしたークマを調べた橋本

2015-03-02 18:18:16 | 15
高槻先生

 先日は記念講演と記念パーティ、お疲れ様でした。とてもお疲れになったのではないでしょうか。予想以上に多くの、そして多彩な方々が参加しておられたので驚きました。

 講演ではこれまで聞いてこなかったような様々な研究結果が聞けましたし、先生の信条というか、いわば「高槻節」ともいえるお話もあり、大いに刺激を受けました。特に、麻布に移られてから、論文数も対象動物も増えたことは印象的でした。
 それらの中でタヌキの研究をご報告されていましたが、私は同じ食肉目のツキノワグマを対象としており、そのご指導をしていただいたことが何かお役に立ったのではないか、などと、自惚れたことを思いながらお話を伺っていました。

 東大では一つの研究テーマを深く掘り下げることを求められ、そのためにツキノワグマの研究も長く行うことの重要性を指摘しました。しかし期間が短い研究でもレベルの高い研究はできること、ただし、それをするには長い研究・観察の経験が必要であることなども感じさせられました。
 ただ、このような研究をする上で、生活が安定していることも本当に重要だとも感じています。この点では先生を羨ましく思う限りです。

 パーティでは多くの方々のお話が聞け、内容も豊富で、それだけでお腹いっぱいでしたし、同窓会にもなりましたのでとても楽しめました。おまけに岸元さんや羽澄さんの引退宣言?まであり、いろいろな情報が得られ、とても有意義でした。

 とはいえ、これからもまだまだ調査を続け、多くの論文を読ませてください。社会に向けての発言をもっとして欲しいと南さんはおっしゃってましたが、高槻先生はしていないわけではないし、(特に大学の)研究者は
色々あっていいと思っています。


森に問いかける

2015-03-02 15:49:58 | 15
吉田裕之(株式会社環境総合研究所)

高槻成紀 様

 大勢の研究仲間や先生のご指導を頂戴した方達に囲まれた先生のお姿は、何時にまして、凛として、清々しく、達成感に満ちているように感じておりました。
 最終講義をお聞かせ頂き、少ししか理解できていないにも拘わらず、判ったような誤解をし、「森に問いかけもせず」に結論付けをしている現在の自分を恥じました。
お時間が取れましたら、谷戸沢にもお出かけ頂ければ幸いです。今後ともご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
 吉田様は最終講義で紹介した東京都西部の日の出町にある廃棄部処分場跡地での調査でお世話になっています。最終講義で私が論文を書くときには「森に、書いてもいいですかと聞いてから書く」という意味のことを言ったことについてのことです。(高槻)


最終講義-ラグビー仲間

2015-03-02 11:58:52 | 15
薬袋啓一(町田市)
高槻さん
 今日はラグビー部の仲間の海野、唐澤と清里でゴルフをして来ました。ところで、最終講義、お世辞ではなく、本当に良かったです。私も建築学科の先生達の最終講義を何回も聞いていますが、一番感動しました。母も妹も来た甲斐があったと喜んでいました。最前列で、真剣に聞いていた、男のお孫さんの表情も忘れられません。写真もいいですね。帰宅したら、母達に見せます。また是非遊びにきて下さい。


おじいちゃんの講義を聴く高槻柊(2年生)

薬袋(みない)さんは東北大学のラグビー部の同期で、お母様が植物が好きなのでいっしょに岩手の早池峰に登ってハヤチネウスユキソウを見たりしました。たぶん90歳くらいになられますが、最終講義に見えていました。最前列で見ていたのは孫の2年生で、じいさんの遺伝か、昆虫少年です。(高槻)


草原を歩く若者

2015-03-02 11:40:57 | 15
柿沼 薫(東京工業大学)

高槻先生

 久しぶりに先生の講義を拝聴し、また懐かしい方々と再会ができて、私にとっても思い出深い1日となりました。どうもありがとうございます。
 最終講義で紹介された、モンゴルの草原を歩いている若者たちの今と昔の写真は、大変印象的でした。この時代に生まれ、研究できることに感謝し、また精進しようと思いました。
 私も今年はモンゴルへ行く予定です。今後ともどうぞよろしくお願いします。


ホロンバイル草原を歩く日本とモンゴルの若者。最終講義ではこの同じ草原を1939年に歩いた同じ年頃の日本兵の写真を紹介した。


ヤマネに出会った!

2015-03-01 23:20:53 | 15
4年 鈴木詩織 

 この2年間で私はヤマネの食性と巣箱選択性を調べるために調査地である八ヶ岳へ5回行きました。どの調査も比較的毎回天候に恵まれ、ヤマネの糞もたくさん回収することができました。私の調査ではヤマネの糞を回収するために87個もの巣箱をかけたので、人手が必要で、たくさんの人に手伝っていただきました。とても感謝しています。
 調査に行くと、普段は入ることのない森林に足を踏み入れました。小さい様々な花が咲いていて綺麗でした。また、空気が澄んでいて気持ちよかったです。
 そんな調査の中で一番うれしかったのは、2014年5月の調査でヤマネに会うことができたことです。巣箱の中身を確認しながらひとつひとつの巣箱のフタをあけていきました。かなりの巣箱にコケなどが入っていました。だいたいは高槻先生が先に歩いていって「なーし」とか「あったよ」とかいい、私たちが追いついて記録をとり、次の巣箱に行くということをくりかえしていました。すると先生が大きな声で「ア!ヤマネだ!いたぞーっ!」と大声を出しました。私たちが急いでその巣箱に行くと、先生は一度フタを閉じていました。それから「そーっとあけるから、カメラを用意して」といって、巣箱のフタをあけました。コケの中にヤマネが眠っていました。「まだ冬眠から覚めてないのかなあ」と言いながら撮影しました。それを確認してから先生は「逃げるかもしれないけど、それならそれでいいから、開けてみよう」といってアクリルのフタをはずすことになりました。先生がアクリル板をとめているネジをはずし、アクリル板をゆっくりあけました。でもヤマネは起きるようすはありません。



それでもう一度撮影し、またアクリルのフタをして、ゆっくりと巣箱を気にもどしました。そのあと、そのほかの巣箱でもヤマネをみつけて、みんな大喜びしました。そのヤマネも眠そうにコケに頭をつっこんで寝ていましたが、ゆっくりと起きてぼーっとこちらを見て、それからまた眠りました。




「ヤマネ、見つけたよーっ』

 3年生の初めに、ヤマネに会える可能性は低いと先生から聞いていたので、出会えた時には驚きとうれしさでいっぱいでした。
 この先、私は動物や自然とは無関係の所に進みますが、学んだことを心に留めて過ごしていこうと思います。

高槻先生と歩く森

2015-03-01 22:25:45 | 15
3年 宮岡利佐子

 私はあることがきっかけで、高校生の時に野生動物に興味を持ち、麻布大学の野生動物学研究室に入室を決めた。そして高槻先生に指導していただきながら、テンの食性調査をすることになった。調査地は大学から40分ほどのところにある高尾駅周辺で、先生と一緒に調査に行くことが多かった。先生は花や鳥、蝶を見つけると、その名前や特徴を私たちに教えてくださった。ものすごい量の知識なので、驚きつつ慌ててメモを取るが、情報の多さにメモが追いつかず花の名前を書くだけで精いっぱいだった。そのメモを何度も見返し、花の特徴を思い出しながら覚えるようにし、最近では歩きながら少しだけ花の名前がわかるようになった。それでもまだまだ分からない植物が多く、一人で調査に行くと“たくさん植物が生えているな”となんとなく歩くだけだが、先生と一緒に行くと景色が変わったように楽しい調査地になる。
 研究室では自分の調査や研究以外に、研究室活動としていろいろな作業や活動がある。ロードキルや駆除されたタヌキやアライグマ等の死体の解剖や除肉、ウシやガゼル、ヒツジ、タヒ等の糞の洗浄などを経験することもできる。また、自主ゼミを通して仲間の研究内容を把握し、それについてみんなで意見交換する場もある。解剖に関しては、時々イルカや、トラなどのめったに見られないような動物の解剖もある。この解剖や糞の洗浄は、先生が研究室に呼びかけ人員募集や、情報を流してくださる。先生はこのように私たちにいろいろなことを経験できるような機会を与えてくださっている。解剖では、動物によって臓器の大きさや側頭筋の付き方、肉球の形などの違いを、実物を見ながら知ることができた。また草食獣の糞の洗浄を行うことで、食肉目であるテンの糞しか洗浄したことがなかった私は、食肉目と草食獣の食性の違いを糞を通して実感することができた。
この研究室に入室し、普段気付かないような小さな花に目がいくようになったり、いろいろなところに調査へ行くことができたり、様々な作業をすることで、そこで知識を得て楽しさを知るなど、行動することで学ぶことがたくさんあることを実感している。



果実を台において訪問する動物を撮影する準備をする筆者(2014年12月)

 先生には、いろいろなことを体験する機会を下さった感謝の気持ちと、これからも私の調査・研究に関してお世話になることが多々あると思うので、よろしくお願いしますという気持ちを伝えたい。