花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

和更紗について

2008-03-11 | 和更紗

presented by hanamura


ただいま「花邑」では、「和更紗の帯展」を催しています。

「花邑の帯遊び」をご覧のみなさん、
もうお越しいただけたでしょうか?
ほんとうにお嫁に出すのが忍ばれるほど素敵な帯たちが
たくさんお待ちしていますので、
「まだ」という方は、ぜひ足をお運びください。

今回の「花邑の帯遊び」は、その企画展にちなみ、
「和更紗」についてお話することにしましょう。





「和更紗」とは、その呼び名からも想像できるように、
日本でつくられた「更紗」のことをいいます。
そして「更紗」とは、模様を施して染められた「木綿布」を指します。

この「更紗」は、古代から木綿がつくられていたインドで生まれました。
インドの言葉で「最高級」という意味の「サラーサ」から
その名が付けられたといわれています。

紀元前3000年頃のインドでは、
木綿の織物を用いた手書きの「更紗」が染められていました。
やがて、染色技術がすすむにつれ、木版をつかった型染めの「更紗」や、
インド茜などを染料とした鮮やかな色彩の「更紗」が誕生します。

「更紗」の素材である木綿は、植物繊維からできているので、
実は、色が染まりにくく、褪色しやすいものです。
しかしインドには、木綿布に鮮やかな色彩を染めることができる
独自の技術が古くからあったのです。

一方、日本で木綿の生産がはじまったのは
15世紀中頃からです。
インドのように、鮮やかな色彩を木綿に染める技術は、
当然その頃にはありませんでした。
そのため、日本で木綿に染められる色は、
藍、茶、黄などの単色だけだったのです。

その日本に、「更紗」がもたらされたのが室町時代後期です。
これは世界中に「更紗」が伝わった大航海時代(15世紀中頃~17世紀中頃)以降になります。
堅牢な木綿布に染められた異国情緒あふれる文様と
茜色に代表される鮮やかな色を持つ「更紗」に
当時の人々が驚き、魅了されたのは当然のことですね。

しかし、遠い異国の地から運ばれてきた「更紗」は、
とても貴重で高価なものでした。
日本では、一部の裕福な人が茶の湯の仕覆(しふく)や箱包み、
戦さのときの陣羽織などに用いたようです。

この異国から伝わった「更紗」に魅了されたのは
もちろん日本だけではありませんでした。
ヨーロッパでは「更紗」の消費量があまりにも多かったため、
「更紗輸入禁止令」が出されたほどだったようです。
ヨーロッパでの「更紗」は、のちのファッションプリントの基礎になった
ともいわれています。

インドからもたらされた「更紗」に魅了された人々は、
やがてその国々で「更紗」を模倣した木綿布をつくるようになります。
はじめは模倣品だった「更紗」ですが、
しだいにその国独自の文化と融合した「更紗」へと変容していきました。
ちなみにインドから日本にもたらされた更紗は、
のちに「古渡り更紗」と呼ばれ、日本の染識に大きな影響を与えるようになります。

正保2年(1645年)刊行の『毛吹草(けふきくさ)』のなかに
「京都名産の『紗羅染(しゃろむそめ)』」と記載がされています。
「紗羅染(しゃろむそめ)」とは「更紗」のことで、
このときにはすでに、日本でつくられた「更紗」が出回っていたようです。
しかし、木綿の染色技術が未熟だったために、
「すぐ褪色してしまう」と嘆いていたともいわれています。



しかしその後、日本でも木綿の普及とともに染色技術が進みました。
そして、型紙を用いて顔料や染料を摺り込んでつくるという、
日本独自の技法もうまれました。
さらに、その図案は異国の文様と日本の伝統文様が融合された
独特なものになっていったのです。

この日本でつくられた「更紗」こそが、
やがて「和更紗」とよばれるようになっていきます。
江戸時代後期には、庶民のあいだにも広まって大流行し、
そのために各地でもさまざまな和更紗がつくられるようになりました。

この時代につくられた「和更紗」※を手に取ってみると、
異国情緒あふれる文様を楽しみながら図案化している作り手たちの様子が
目に浮かんでくるような気持ちになります。
海の遥かむこうの遠い異国に思いを馳せ、
わくわくするような気持ちを文様化しているように思えるのです。



画家で俳人だった与謝蕪村(よさぶそん)(1716~83)は、
和更紗が盛んにつくられていた当時の様子を
俳句にこう詠んでいます。

~ 片町にさらさ染むるや春の風 ~


※今回の花邑の「和更紗の帯展」では、
江戸時代後期の「和更紗」で仕立てた帯を中心に
取り揃えています。
なお写真の和更紗は「和更紗の帯展」にて取り扱っています。


花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は3月18日(火)予定です。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
蕪村 (熊谷)
2011-05-14 14:31:59
蕪村の俳句は「更紗」は「さらさ」、「染めるや」は「染むるや」ではないでしょうか?
お節介ですがちょっと気になりましたので・・・
返信する
コメントありがとうございます。 (杉江)
2011-05-19 05:39:24
ご指摘いただいてありがとうございます。
調べたところ、ご指摘のとおりでした。
たいへん助かりました。
修正いたしました。
返信する

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