がんばれナラの木

震災にあわれた東北地方の皆様を力づけたくて
The Oak Treeを地方ことばに訳すことを始めました

大きなナラの木

2011年08月03日 | お話
大きなナラの木
高槻成紀 2011.4.18 
立木浩子さんによる方言指導

「ナラの木」にインスピレーションを得て

とても明るい光が降り注いでいました。
そこにはドングリがたくさん落ちていました。
そのうちのひとつのドングリが言いました、
「ああ、いい気持ち。君は?」
ととなりのドングリに聞きました。
「うん、私もとってもいい気持ち」
そこはなだらかな山の中で
ドングリたちの上には
それはそれは大きなナラの木がありました。
その木は傘のように枝を拡げ
その枝には小鳥が来ることもあれば
リスがぴょんぴょんと跳ねて
となりの枝に飛び移ることもありました。



ある秋の日、夏から少しずつ育っていたドングリが実りました。
リスは忙しそうに木の下に落ちたドングリを拾って
口にくわえてはぴょんぴょんと走って
土の中に埋めました。
そのとき、珍しいお客さんがありました。
大きなクマがドングリを食べに来たのです。
その秋は山にドングリがあまり実らなかったのです。
それでお腹がぺこぺこになったクマは
この大きなナラの木まで歩いて来たのです。
クマの食べること 食べること
ドングリをムシャムシャと食べ、
それでもまだやめないで食べ続けました。
たくさんのドングリのおかげで おなかいっぱいになったクマは
岩のあいだで眠り込んでしまいました。
その眠りは次の春まで続いたのでした。



このナラの木を昔から知っているゲンじいさんが言いました。
「おらが若(わげ)ぇ頃は こったな でげぇ木ぃ いっぺぇあったったじゃ。
んだども、だんだんと木ぃ切るようになってぇ、
山さ木ぃねぐなってしまったもや」
ゲンじいさんは山を眺めながら続けました。
「んだども、太(ふって)ぇ木ぃだけは切らねがった。
神様みでなもんだがらな。
んだがら、なんぼ木ぃねぐなったったって、
こったな木ぃ切ってぇなんねぇじゃ」
ゲンじいさんの じいさんの、またそのじいさんも、
このナラの木を知っていたのです。
そのじいさんの孫の、その孫が生まれるずーっと長いあいだ、
ナラの木は、暑い夏の日も、秋の嵐も、長くて寒い冬ものりきって、
しっかりと大地に立ってドングリを実らせてきました。

ドングリが聞きました。
「ナラの木さん、嵐ってこわいの?」
「んだなぁ、怖(こえ)ぇってば怖んだども、大丈夫だ。
おらだづナラの木ぃは お前(め)だづが思(おべ)でるよりも
ずっと強(つえ)ぇがら」

明るい日差しの中で、小さなドングリたちはそのナラの木と楽しげにお話を続けるのでした。

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