放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

Linac-MR System

2009年01月11日 | Weblog
放射線治療と医学物理

今回も論文紹介ではなく、Weblogです。

Linac-MR systemについて報道されていました。
記事によると、6MVの照射中に撮像されたMR画像において、画像の劣化を起こすことなく撮像できたという報道です。

このLinac-MR systemは6MVのエネルギーを発生させることのできるLinacと、0.2Tの永久磁石タイプのMRを組み合わせた装置です。

詳細は以下に記されています。
http://mp.med.ualberta.ca/linac%2Dmr/

この Cross Cancer Instituteのサイトに簡潔な特徴が述べられています。

6 MV Linac
0.2 T permanent magnet MRI scanner
real-time imaging
real-time tumour tracking
image guided adaptive radiotherapy
27 cm gap for the head prototype
70 cm gap for the whole body prototype

CBCTを用いたtumor trackingでは撮影した瞬間の腫瘍位置は判明するものの、リアルタイムでのtrackingとなると少々難があります。
X線透視では、腫瘍位置は金属マーカ等を利用して知ることができる反面、腫瘍の形態や性状をリアルタイムで知ることはできません。
そこで、MR装置の登場となったようですが、画像の質やリアルタイムの画像取得に加え、照射装置へのフィードバック等まだまだ技術開発途中という印象です。

MRの磁場が発生しているため、線量計を配置することも困難であり線量の保証にも工夫が必要です(Medical Physicsに論文が掲載されています)。

しかし、技術が成功すれば臨床に応用される日もあるかもしれません。
装置が複雑かつ狭いので、点滴等には相当注意が必要かも。

カナダのMedical Physics頑張っていますね。

ASTROの名前変更

2009年01月09日 | Weblog
放射線治療と医学物理

最近多忙につき、なかなか更新ができませんでした。
今回は論文紹介ではなく、気になったnewsとします。

ASTROの名前がAmerican Society for Radiation Oncologyに変わるみたいですね。

確かにIVR等の手技はRadiologyの管轄か、Radiationに関係のない科が施行することも多いですので、時代に即した名前の変更かと思います。
名前の変更も4回目のようですし、必要とあればどんどん脱皮する姿勢がうかがえます。

また、名前の変更といえばJRSの「Radiation Medicine」も「Japanese Journal of Radiology」となるようです。

インパクトファクターがつけられる日も近そうです。






DMLCのQA

2008年11月28日 | QA for IMRT
放射線治療と医学物理 第50号

Chen-Shou Chui, et al.: Testing of dynamic multileaf collimation, Med Phys, 23, 1996

IMRTのフィールドではターゲットへ均一な照射を保ちつつ、決定臓器の線量を低下させることができる。方法は種々提案されているが、dynamic MLCを使用したIMRTではビーム中の適切なリーフのコントロールにより、さまざまな強度の分布を作成することができるのみではなく、フィールド毎部屋に入る必要もなく、照射に有する時間を大幅に削減することができる。
しかし、あるセグメントから次までリーフが動く際の加速および減速、およびリーフの位置正確性は照射された強度分布に好ましくないアーチファクトを引き起こすかもしれないため、テスト方法の考案は重要である。
本論分では、これらのdynamic MLCの機械的状況を調査するために5種類のテストをデザインし、下記の内容をより詳しく調べている。
1. リーフスピードの安定性
2. リーフ移動と垂直の方向の線量プロファイルにおける側方不平衡の効果
3. リーフの加速および減速の効果
4. 位置の正確性とリーフ端の効果
5. QAの基礎となる単純なテストパターンの作成

リーフスピードの安定性
0.14cm/MU(最低)から1.0cm/MU(最高)移動速度のMLCにて速度を9種類選択し、同スピードにて対抗するMLCを動かし、最終的に作成される線量分布を得る。スピードの差異が認められれば線量分布に不備が見られるはずである。本論文ではわずかな線量の差(±1%)は見られたものの、これはフィルム測定に起因するものであると帰結している。

リーフ移動と垂直の方向の線量プロファイルにおける側方不平衡の効果
リーフスピードの安定性にて評価されるように、各々のリーフ幅内の強度は均一と想定される。しかし、リーフの移動方向に垂直な方向では線量プロファイルが均一となることはなく、ステップ様に線量分布が描かれる。ここではリーフスピードの安定性にて作成したフィルムにおいて、リーフ移動方向の垂直方向に分布を得ることで評価している。二次電子および散乱光子のためにリーフの幅内にも均一な線量の領域は存在しない。

リーフの加速および減速の効果
Dynamic MLCの照射中、リーフは通常セグメントからセグメントまで異なったスピードで動き、目的とする強度の分布を作成する。このテストはリーフスピードの安定性試験にて行うリーフ移動を故意に中断し、再開した場合の線量の差を見ることにより行う。もしも加速およびリーフ減速時にリーフの停止位置が不正確であったりすると、均一な線量のプロファイルは得られない。

位置の正確性とリーフ端の効果
通常の照射の場合、JAW, ブロック、リーフの位置精度の低下は照射野境界の線量不確実性が増すのみであるが、Dynamic MLCでは線量の分布全てに影響が発生する。停止位置の正確性をテストするためにここでは左右のリーフの移動パターンを同一とし、停止のタイムラグを使用して調査している。左から右に動くリーフ試験の場合、左のリーフが規定場所に届かなかったり、右のリーフが規定場所を過ぎたりすると、ホットスポットとして認識され、逆の場合はコールドスポットとして認識される。このホットおよびコールドスポットの幅が位置の不正確性を示す。もしも位置の不正確性が系統だったものでない場合、ホットスポットとコールドスポットが混在するかもしれない。また、ホットスポットはリーフ端からのextra leakageによっても発生する。実際のテストでは異なった場所でリーフを止めることでペアを作成し、種々のポイントにおける位置の正確性を判定している(半値幅)。
結果において4つのペアが示されている。これらは全てホットスポットであり、線量において5%、半値幅において4mmであった。このホットスポットは機械的なキャリブレーションのエラーかリーフ端の効果によって発生する。前者は光照射野の動きによって判定ができ、これよりリーフ端の効果であることが結論付けられた。

QAの基礎となる単純なテストパターンの作成
実際の臨床で行うQAとしては単純かつ短時間で行えることが必須である。このために、テストに必要な特徴としてデジタル化して評価するのではなく、視覚的に検疫でき、また全てのペアを連続的に評価できなくてはならない。この評価のため、位置の正確性とリーフ端の効果試験にて使用した方法を少し変更し、複数のペアを作成するようにプログラミングが行われています。これによりリーフ位置の正確性に問題がない場合は同じ黒化がなされ、なんらかの問題がある場合には視覚的に評価できる。このテストは毎日か、dynamic MLCを使用する日のみ、セラピストによって行うことができ、また重力の効果を考慮したい場合はガントリーを90度傾けて行う(約10分で全て行うことができる)。このフィルムの配置はここでは5cm深に設定している。またあらかじめエラーを故意におこし、黒化の度合い(視覚的検疫が可能か)を調査している。

Dynamic MLCを使用した治療における線量分布の重要な誤差要因として、位置精度やモータの問題に加え、MLC移動の垂直方向のプロファイルや、リーフ端のプロファイルも重要である。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Dynamic MLCの品質管理はIMRTでは必須である。実際に行う際の参考としたい。

詳細は論文で。


radiochromic filmを用いた皮膚線量の評価

2008年11月13日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第49号

S Devic, et al.: Accurate skin dose measurements using radiochromic film in clinical applications, Med Phys, 33, 2006

皮膚基底層の深さは目の周囲や足底など部位によって変化する。本来は放射線腫瘍医の関心のある深さの線量評価をすべきであるが、ICRPおよびICRUは実際の線量評価点として70μmの深さを推奨している。実際の皮膚線量測定の際には実効測定点が水等価にて数μmから数mmの線量計が用いられる。これらの領域は荷電粒子平衡が成り立たない領域であるため、測定機器の選択は重要である。

本報告の目的は、荷電粒子平衡が成り立たないビルドアップ領域の最初の数mm以内の線量測定の正確性を調査することである(6MV)。ここではAttix平行平板型電離箱、自作外装線量計、radiochromic film(HD-810、EBT、HS、XR-T)、TLDにて皮膚線量を測定し、その結果をモンテカルロ法と比較している。
ビルドアップ領域に加え、ビルドダウン領域の線量についてradiochromic film EBTにてPDDを測定し、その精度を調査している。

ビルドアップ領域の測定方法
 測定器はSolid water phantom(1.04g/cm^3)の表面に設置。SSD=100cm。referenceとして1.5cm深も測定。LINACはVarian 2300 C/D。

radiochromic filmを含め、論文にて用いられた線量計の実効測定点(radiochromic film はsensitivity layerの中間の厚さ)、および最大深および実効測定点における水と検出器の制限衝突阻止能比は以下のように記されている。
HD-810: 0.0004g/cm^2, 4μm, 0.9996
Attix chamber: 0.0048g/cm^2, 48μm, 1.012
Extrapolation chamber: 0.0069g/cm^2, 60μm, 1.010
HS: 0.0153g/cm^2, 153μm, 0.9993
EBT: 0.0153g/cm^2, 153μm, 0.9997
XR-T: 0.0157g/cm^2, 157μm, 0.9997
TLD-100 (0.15mm): 0.0185g/cm^2, 185μm, 1.002
TLD-100 (0.4mm): 0.0496g/cm^2, 496μm, 1.001

ビルドダウン領域の測定方法
 EBTフィルム(3cm x 23cm)をSolid waterではさみ、6Gy(最大深)照射。照射野10x10cm^2。ガントリー角度90度。PDDを測定。

 照射野の大きさとビルドアップ領域、ビルドダウン領域のPDDの関係
一辺5, 10, 15, 20, 25, 30cmの正方形照射野を使用して、上記影響を調査。

結果
1. ビルドアップ領域における各種線量計の実効測定点におけるPDD値と70μm(皮膚)でのPDDおよび補正係数との関係は以下である。
Skin. PDD 17.0%
Attix. 16.0%, 1.062
EBT. 19.9%, 0.854
HS. 20.0%, 0.850
XR-T. 20.3%, 0.837
TLD(0.15). 21%, 0.810
TLD(0.4). 29, 0.586

2. ビルドダウン領域における各種線量計の実効測定点におけるPDD値と70μm(皮膚)でのPDDおよび補正係数との関係は以下である。
Skin. PDD 32.66%
EBT. 32.75%, 0.997
HS. 32.75%, 0.997
XR-T. 32.76%, 0.997

3. 照射野を変更した場合における、ビルドアップおよびダウン領域におけるEBTの実効測定点におけるPDD値と70μm(皮膚)でのPDDおよび補正係数との関係は以下である。
Entrance skin dose correction
5x5. 0.804, 10x10, 0.854, 15x15, 0.908, 20x20, 0.910, 25x25, 0.925, 30x30, 0.928
Exit skin dose correction
5x5. 0.998, 10x10, 0.997, 15x15, 0.997, 20x20, 0.998, 25x25, 0.997, 30x30, 0.998

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本報告ではガフクロミックフィルム4種類(HD-810、XR-T、HS、EBT)の構造がFig,1に詳しく記載されている。これを確認するだけでも非常に参考になると思われる。またビルドアップ領域では比較的大きな補正係数が必要であるのに対し、ビルドダウン領域ではほぼ1.000であることに注目したい。

詳細は論文で。



CTのMTF評価を簡便にするために

2008年11月07日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第48号

Ronald T. Droege, et al.: A practical method to measure MTF of CT scanners, Med Phys, 9, 1982

IGRTに使用されるCBCTの画像評価の項目の中には、高コントラスト分解能の評価としてMTFが用いられています。MTFの取得にはワイヤー法等が用いられますが、テストツールを正確に配置することの煩雑さ、計算過程が複雑である等の問題点があります。一方で、本論文に紹介されている方法は、バーパターンの画像内のピクセル値の標準偏差を使用してMTFを求めています。この方法はミスアライメントの影響を受けにくく、CT装置に備えられているROI中の平均値と標準偏差を計算する機能を用いているため、簡単かつ早く結果を得ることができると記載されています。

本論分によると、MTFは以下の式にて表すことができます。
MTF(f) = π√2 / 4 ・M(f) / M0 f>fc/3
M(f): 標準偏差
実際に測定した標準偏差M’は均一なROI中にて得られた標準偏差Nにて補正することができます。
M = √(M’^2 - N^2)
M’: パターンの境界内において、もっとも大きな正方形のROIにて得られた標準偏差
N: PlexiglasのCT値における標準偏差Np、水のCT値における標準偏差Nwにより、
N^2 = (Np^2+Nw^2) /2
M0は下記の式で表すことができます。
M0 = |CT1 – CT2|/2
Plexiglas / Waterバーアレイを用いた場合、CT1: PlexiglasのCT値、CT2: CT1と同位置(x, y)でスライスの異なる、均一な面(水のみのスライス)における水のCT値

ここでは通常のMTF測定法(0.1mm直径ステンレススチール)によって得られたMTFと簡便法の結果を比較し、差異がないことを記述しています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

操作が簡便であり、かつ結果をすぐに得ることのできるこの方法は非常に優れている。また、画像のノイズに結果が影響しない点も重要である。しかし、この方法ではカットオフ周波数が7.5 cycles/cm以下の場合、2.5 cycles/cmの評価はできないことに注意が必要のようである。

詳細は論文で。



CBCTの画質評価と許容値の設定

2008年11月05日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第47号

Jean-Pierre Bissonnette, et al.: A quality assurance program for image quality of cone-beam CT guidance in radiation therapy, Med Phys, 35, 2008

IGRTとして使用されているCBCTの画像におけるQAに関する報告です。本論分を発表したPrincess Margaret Hospitalの施設の充実度には本当に驚きます。ここではCBCTの画像評価のQAを作成するために10台のCBCT(Varian OBI. 4台、Elekta Synergy. 6台)を利用して、3年間の臨床使用におけるデータを元に許容値を考察しています。

CBCTの画像は画像registrationアルゴリズムの信頼性および正確性に影響し、その結果IGRTの正確性に影響を与える可能性があります。また、long方向のflat panelの位置のずれは、画像の質は保たれたままでも誤った位置情報を与えてしまう可能性があります。

 Flat Panelは一般的にピクセルgainの変動、defectiveピクセル、ピクセルoffset、暗電流の変異を補償するために校正されています。暗電流やピクセルoffsetは画像再構成の前に各々のプロジェクションから暗電流を差し引くことで消去しており、このDark imageはflat panelに照射することなく50画像を平均化して得られ、各々ピクセル毎の標準偏差が自動的に記録されます。ピクセルごとのgainの変動とdefective pixelはflood imageを利用して補正されています。このflood imageは遮蔽体(吸収体)なしでopen照射を行い、照射50画像を平均化して得られます。この作業(flood image)によりピクセル固有のgain factorが得られ、defectiveピクセルは近くのピクセルの値を平均化することにより消去されます。
Flood imageは取得環境下に依存し、本論分ではElekta LINACにおいて2.0cmアルミニウムを装着、およびVarian OBIではbow-tie filterを装着して取得しています。

Flat panelは撮影用X線および加速器からの散乱線、漏洩線にて電気回路が照射され、時間の経過とともに少しずつパフォーマンスが低下してくることが予想されます。これを評価するために平均化されたdark、flood imageを26ヶ月取得し、100x100の中心部のピクセル値を記録し、この標準偏差をモニターすることによりflat panelのパフォーマンス低下を調査しています。評価方法には中心ピクセルの平均値を標準偏差で除算することでSNRを算出し、26ヶ月の経過を調査しています。

上記のdark imageやflood imageに加え、ここではCatPhanを用いて均一性、低コントラスト検出率、高コントラスト分解能、画像の忠実度、CT値の直線性を調査しています。高コントラスト分解能の評価には21個の正方形の波型パターンを用いてMTFを評価しています。
 均一性の評価においては、積算不均一性として、中央と外側4箇所のCT値を測定し、
Integral nonuniformity = (CTmax – CTmin) / (CTmax + CTmin)
として評価し、
Uniformity index = 100 x (CTperiphery – CTcenter) / CTcenter
も同時に評価しています。

結果は以下です。
1. 26ヶ月のデータにおいて、dark imageの標準偏差の平均. 5.62±0.09ADC、99%信頼領域0.27ADC
2. flood fieldの平均的SNRの評価は、不明瞭な測定基準であった。
3. 正方形の波型パターンを使用したMTFでは、アイソセンターplaneから離れても(4cm, 8cm)MTFは変化しない。また照射野を小さくすることで(散乱線を減少させることで)MTFはずいぶん改善する。
4. Integral nonuniformityは0.009-0.039の間(平均0.025)、Uniformity indexは-8.9-4.5の間(平均-2.9)
5. CT値の直線性は装置に依存するところが大きい
6. 距離の測定の精度は99%信頼区間において0.45mmであり、メーカの基準値1mmよりも優れている
7. 同じメーカの装置であっても許容値が異なる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

LINACに搭載されているCBCTは非常に高エネルギーの散乱線を電気回路に受ける可能性がある。性能の低下を発見し、なるべく早く対処するためのQA作成に関する工夫が見られる論文である。ほぼ3年の使用で劣化が見られないことは記載されているが、劣化状況を把握しておくことは必要かもしれない。
許容値は相当数のデータを取得し、その統計的処理から判定する方法が妥当なところのようである。
装置や使用環境、スタッフ等の条件が異なれば、許容値が異なって当然である。
最重要なことは各施設で許容値を作製するために定量的評価のための統計的手法を学ぶことである。

知識がないまま使用するだけの装置とならないように心得たい。

詳細は論文で。



モンテカルロ法によるCBCTの線量評価

2008年11月01日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第46号

George X Ding, et al.: Accurate patient dosimetry of kilovoltage cone-beam CT in radiation therapy, Med Phys, 35, 2008

現在CBCTがIGRTの重要なツールとして使用されている。あえて記載する必要性も低いが、CBCTを使用することによって3Dでの解剖学的情報収集が可能となり、そのデータを用いて患者の位置補正をすることができる。しかし高頻度にCBCTを使用することとなれば、組織に与える吸収線量(放射線被曝)も無視できないものとなる。
また、CTの被曝の把握は重要項目となっているものの、人体内の軟部組織や骨等の不均質物質での吸収線量評価は容易ではない。
本論文ではこの問題に対処するために、モンテカルロ法を用いてCBCTでの被曝(臓器吸収線量)を把握することを試みている。

方法
モンテカルロコード: BEAMnrc/DOSXYZnrc
LINAC: Trilogy, OBI (Varian)
CBCT: 125kVp, 80mA, 25ms, 2mm thick slices,
Rotating the gantry: -4° to 364° (total 368°)
Ionization chamber: Exradin model A14 (waterproof), IC15

CBCTにて得られた画像における1点の線量を、電離箱で測定した値(Dexp)とモンテカルロで計算した値(DMCcal)とを比較し、
Dexp = fMCcal・DMCcal
と定義し、モンテカルロ校正定数(fMCcal)を得ています。
このfMCcalを種々の部位におけるモンテカルロの計算結果(DMCcal)に乗じることにより、種々の部位におけるモンテカルロ予想線量(DMC)を得ています。
DMC = fMCcal・DMCcal

また、モンテカルロ法の妥当性を証明するために、水中(Blue phantom)でのdepth-dose, dose profileを測定、比較評価をしています。この際、測定の不確かさとして3%の再現性が記述されています。

CBCTの線量評価に用いられたファントムは頭頚部および骨盤のRadiosurgery verification phantomであり、この中にExradin A14線量計を配置して測定を行っています。

結果は以下です。
1. OBIのX方向(治療台lateral方向)のプロファイルは、bow-tie filter、heel効果により対象ではない。
2. PDDおよびプロファイルにおいてモンテカルロ法による計算と測定結果は非常に一致している。
3. Head phantomでのDexp=7.92cGy (half-fan scan mode): ほぼ頭部の中央
4. Pelvis phantomでのDexp=4.42cGy (half-fan scan mode): ほぼ骨盤の中央
5. Pelvis phantomでのDMCcal=4.33cGy, 測定よりも2%低い
6. 骨の線量は軟部組織の3-4倍となっている。
7. 患者の頭頚部CBCTにおいて、骨の吸収線量は20cGyよりも多い。脳は最大5cGy、脊髄は最大6cGy、皮膚は最大10cGy。
8. 患者の胸部CBCTにおいて、脊髄は3-4cGyであり、頭頚部CBCTよりも少ない。
9. 患者の下腹部CBCTにおいて、骨の吸収線量は10-20cGy、皮膚は5cGyよりも少ない。これらは頭頚部CBCTよりも少ない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 モンテカルロ法における計算の誤差要因はSystematic errorとstatistical errorに分けられる。ここではCalibration法によりSystematic errorを減少できたと報告している。この方法はVMCBC©としてVanderbilt大学が権利を有しているようである。
 本論文に記載されている診断エネルギーにおけるPDDやProfileはあまり公表されていない。またモンテカルロによるCT時の臓器吸収線量の把握は非常に有用である。将来的に、CTを撮影した際にピクセル値を確認すれば「CT値」と「臓器吸収線量値」が表示される日も遠くないかもしれない。

詳細は論文で。



定位放射線治療QAのためのCBCT

2008年10月27日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第45号

Jenghwa Chang, et al.: Accuracy and feasibility of cone-beam computed tomography for stereotactic radiosurgery setup, Med Phys, 34, 2007

定位放射線治療における患者setupは、一般的に定位用フレームにて行われている。このsetupや治療における検証は、コントラストの低いportal image、治療部位が小さいこと等から従来困難であった。そこで最近使用可能となったCBCTを使用することによって、高精度定位放射線治療のsetup精度向上の可能性がある。
本研究では最近使用可能となったLINACに搭載されたCBCTを用いて、radiosurgeryのsetupの検証を行っている。

この研究にて使用されているCBCT装置はVarian社のOBIである。このOBIはactive servo feedback機能を有し、ガントリーの角度にかかわらず目的とするアームの位置を自動補正する。またLINACは2100EX、カウチにはRadionics製を用いている。

定位放射線治療用のフレームはBRWである。2mmの複数の丸マーカをランド頭部ファントムに埋め込み、BRWフレームに装着させ、CT(PQ 5000)にて撮影している。またこのファントムには直径9mmの2つのpoleがついており、このpoleを囲むことでも幾何学的中心を得ている。

LINAC室内にてBRWフレームの位置を合わせるためにレーザを使用し、その後CBCTを撮影している。BRWフレームのマーカを全て撮像範囲に含めるため、X線管-FPD検出器間距離を150cmとし、FPDを15.5cmシフトさせている。ここで360deg収集を行い、half-fan画像再構成アルゴリズム(Feldkamp FBP)にて画像を作成している。

その後撮影したCTもしくはCBCTのデータはBrainSCANにてBRWの座標に置き換えられている。またTPSにてマーカ間の距離および角度を測定することにより、CTとCBCTの幾何学的精度の確認を行い、その後画像をfusionさせ、その正確性を検証している。

最後にBRWフレームにて位置合わせした後にCBCTを撮像し、3軸の差を検出している。ここではカウチの正確性(1mm程度)の問題からtranslationはしていない。また、その同様の3軸の差を検出するためにX線撮影も行っている(マーカがよく見えるため)。

結果は以下です。
1. CBCTの画像に有意な歪みは見られない。
2. CTおよびCBCTから得られたBRWのlocalizingに差はない。
3. CTおよびCBCTのデータによるimage fusionは正確である。
4. CBCTにて得られたsetup errorと2方向のX線撮影にて得られたsetup errorは1.28mm±0.61mm(1SD)であり、この理由はCBCTのsliceが2mmであることと記載されている。

筆者は将来的に、レーザを用いてsetupする従来の方法は、CBCTを用いた方法に置き換わる可能性を指摘している。これにより、quality assuranceがOBI systemとLINACのアイソセンターの一致のみを見ていればよいこととなり、単純化されると記している。またほとんどの患者において治療を通じてフレームと頭蓋骨はずれないが、過去には5mmのずれが報告されたこともあり、ここでもCBCTではフレーム内のシフトも検出できるため威力を発揮できる。Fusionが高性能にて行われた経緯から、将来的にはフレームを用いることなくマスクのみで治療も出来るようになると思われる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

CBCTの臨床での威力は容易に想像できるが、その幾何学的精度の検証や応用評価となれば話は別である。CBCTのQAを最適化し、臨床での治療効果を最大限発揮できるようにするにはこの種の論文は重要であると思われる。

詳細は論文で。



XVIおよびOBIにおけるCBCT線質、線量評価

2008年10月15日 | QA for IGRT
放射線治療と医学物理 第44号

William Y Song, et al.: A dose comparison study between XVI® and OBI® CBCT systems, Med Phys, 35, 2008

Elekta社のX-ray Volumetric Imager、Varian社のOn-Board ImagerのCBCT線量比較における報告です。
CBCTは患者の設定や治療効果の判定等、幅広く使われてきています。特にIMRTでは再現性良く位置合わせができていることは治療効果にも影響してきます。

本報告ではCBCT時のアクリルファントム中心線量と全mAs値との関係を詳細に調べています。

CBCTが撮影可能な2つの装置ですが、特性や使用時のフィルタ等は異なります。たとえば、XVIはsourceが90degについていますが、OBIは270degについています。

線量は水の吸収線量として、アクリルファントム中に電離箱を設置して測定しています。空気カーマから水の吸収線量を得ているため、質量エネルギー吸収係数の比を使用しています。ここでは半価層を種々の条件下で測定し、吸収係数の比を得ています。

CTの線量として最もよく使用されているのはCTDIです。これは比較的電離容積の長い(100mm)電離箱を使用して得るものですが、CBCTのように広いビームだと測定することはまず不可能です。そこで筆者は0.6ccのfarmer typeの線量計を使用してCTDIを測定しています。CBCTは収集の特性上、必ずしも360度回転が必要なわけではなく、中心軸上の線量分布が均一となるわけではないため、CTDIwの理念を使用して評価しています。
筆者のCBCTのCTDIは
CBCTDIw = (1/3)D central + (2/3)D peripheral
として測定、評価しています。

結果が非常にわかりやすくまとめられていますが、注目すべきはXVIとOBIの線量の差です。同じ照射条件(画像の質)にして評価しているわけではないので、一概に比較することは困難だと筆者も認めていますが、XVIの線量が低く報告されています。
XVIとOBIの実効エネルギー(アルミ半価層)の比較においても、XVIは高いエネルギーを使用していることが明らかです。

測定の繰り返しによる値の不確かさを1σとして表記していますが、この内容に関しても非常にわかりやすい記載がされています。測定時の1σが全体の不確かさを示すわけではなく、水の吸収線量をアクリル中で測定していること、校正の方法が水を基準としていることなど、最終的な不確かさは5%程度になると表記しています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

CBCTの線量評価は使用する限り重要である。評価の際、測定における不確かさの扱い方は非常にスマートであり、非常に参考になると思われる。

詳細は論文で。


水、複雑な照射野、不均質時のAAAの線量評価

2008年10月15日 | QA for TPS
放射線治療と医学物理 第43号

Christopher M. Bragg, et al.: Dosimetric verification of the anisotropic analytical algoroithm for radiotherapy treatment planning, Radiother Oncol, 81, 2006

放射線治療における線量投与は高精度であることが望まれ、そのためにはsimulationからplanning、照射までの不確かさを可能な限り低減する必要がある。ゆえに各々のプロセスにおける潜在的なエラーの理解と知識は不可欠である。
治療線量が増加し、複雑性が増すなかで線量計算アルゴリズムの正確性は重要課題である。
歴史的にみても不均一物質の線量計算は電子の輸送コードの困難さゆえに問題視されてきた。

Eclipseに搭載されたAAAは比較的最近開発された治療計算アルゴリズムである。
本報告ではこのアルゴリズムのパフォーマンスを評価するために、水中における簡単なビームジオメトリ、複雑な状況において測定を行っている。

装置: LINAC. Varian 2100C/D, 6 / 10MV
Eclipse (version 7.5.18 / 2.5mm grid)
比較アルゴリズム. PBC-eTAR

Simple geometryとして行っているのは、正方形、矩形、MLC作成照射野、SSD変更した場合、EDWである。
ここでPDDおよびOCRを測定している。

Complex geometryとして行っているのは、asymmetric field (Half field等)、斜入射、後方散乱体の無い場合、接線照射である。

最後に不均質体における評価である。不均質においてはコルクやstyrofoam、骨等価物質にて構成し、PDDを評価している。また、胸部ファントムを用いて、肺や骨髄における線量評価も行っている。

結果は以下である。
1. 正方形および矩形照射野の計算線量に対するPDD測定値の乖離は1.5%以内である(ビルドアップ以下、6MV, 10MV)
2. 正方形照射野のビルドアップ領域、PDDにおいてDistance to agreementは6MVで1.1mm, 10MVで1.6mmであった。同様に矩形照射野であれば2mm以内であった。
3. 検討した全ての照射野サイズにおいて、平均的な乖離はビルドアップ以下において0.2%±0.2%(1SD)、ビルドアップ領域においては0.2±2.1%(平均的なdistance to agreementは0.3±0.7mm)
4. 低線量(CAXの7%以下)領域におけるOCRの最大乖離は2%、30x30cm,10MVの照射野においては約2.5%過少評価(AAAの結果は、照射野外において過少評価の傾向)
5. 高線量(CAXの90%以上)領域におけるOCRの相違は2%より良い。最大の相違は10MV, 40cm x 40cmの照射野において6.7%の過少評価。
6. SSDを90cmや120cmに変更しても差異はない
7. MLC作成照射野においても差異は変わらない
8. Enhanced dynamic wedgeは大きな乖離が存在する(wedgeの高線量部分)
9. Half beamのOCRにおいて、計算と測定の乖離は大部分で2%以内か、2mm以内である。
10. Styrofoam(非常に低吸収)をSolid waterにて挟んだジオメトリにおいては、PBC-eTARよりもAAAがPDDの予想は良い
11. ランドファントムの肺の線量はPBCよりもAAAが正確

線量計算アルゴリズムについては多々報告されており、それらの結果からある程度のcriteriaのコンセンサスが得られると記載されている。そこでは、
・ Low dose gradient regionにおいて2-3%
・ High dose gradient regionにおいて2-3mm
と記されている。
UKにおけるIPEM report 81では
理想として、2%-2mm
受け入れられるものとして、3%-3mm
Van Dykは複雑な状況下においては、単純なビームかつ不均質物質の状況として3%
不均質物質を含んだ複雑な状況として4%-4mmを提案している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

多くの論文がAAAを支持しているが、各施設で使用前の検証は不可欠である。特徴を得るうえでも論文を参考としたい。

詳細は論文で。