小麦はこうして高くなる***シカゴ市場なんて関係ない

2008-02-20 15:49:55 | 農業(政策)
日本の製粉業者が直接海外から小麦を買い付けることができない。
しかも、政府が買い付けたのにマークアップだ管理費だのを
上乗せしたのを買わされる。

ここまでは昨日の復習。

そして小麦の値段は、さらにさらに雪だるま式に高くなる。

製粉業者は一般製粉用玄麦または飼料用小麦を政府から買い受けるとき、
その買い受け量に応じて「財団法人:製粉振興会」に「近代化資金」なるものを
拠出する。

この「拠出金」なんと年間合計85億5000万円(H18.7~19.6)。
ここから、
「麦引取円滑化対策事業」に16億8000万円、
「契約生産奨励金」に61億4000万円、
これらが「社団法人:全国米麦改良協会」を通じて
麦の生産農家にわたる仕組みができている。

データ元
http://www.zenkokubeibaku.or.jp/index.html
http://www.seifun.or.jp/gaiyou/index.html

小麦 マークアップって…

2008-02-19 21:54:12 | 農業(政策)
たとえばである、東大阪のちっちゃい(^2)会社の営業マンが
4万円の仕事を取ってきた、コストは11万円かかる。
そんな仕事を請ける会社があるか?
(首都圏だったら荒川区のちっちゃい(^2)会社の…といったら実感あり?)

では、コストは11万円に変わりないがこの仕事を請けたら、
あっちゃこっちゃから、なんかかんかで4万円+12万円入る。

この仕事を請けるべき?

答えはもちろんYES!
だって「ごっつ」儲けが出るやん!

こんな「なぜかおいしい」仕事を請け負っているのは
東大阪(荒川区)のちっちゃい(^2)会社ではなく、
日本の麦生産農家!

4万円しかしないブツに
どうしたらプラスαの12万円が付くのか?

それを払っているのはアナタです!
(パン・麺・粉もんいっさい食べてないのでしたら別ですけど…)

ここから話は1トン当たりとする。

まず、コスト対売値である。
国産の小麦の生産費は112,600円
国産の小麦の売値は  41,700円

もちろん生産に着手する気など起きるはずはない。
作れば作るだけ赤字確実!

が、「お国」の手厚い「保護」!?
生産条件不利補正(面積あたり)71,500円
生産条件不利補正(数量あたり)35,200円
品質改善奨励額        10,000円
生産・流通改善奨励額       300円
流通合理化奨励額        1,100円

これらを売価に加えると159,800円となり、
生産費112,600円に対し収益ありとなる。

これが今・日本の小麦生産の実態である。

では上記のトン当たり118,000円はいずこから…
ということになる。

この国に入る小麦はすべて政府が「買い上げ」
これを企業に「売り渡す」という
「今って何時代?」
がまかり通っていることはご存知ですか?

まずは「マークアップ」という用語を学びましょう。
「国家貿易等の麦の制度を運営するために必要となる
保管料等の政府管理経費及び国内産麦等の生産を振興するために
必要となる経費(品目横断的経営安定対策に要する経費)
に充当されるもの」だそうです。

で、
平成19年10月のデータでは、
輸入小麦(5銘柄加重平均価格)34,300円
港湾諸経費           2,102円
マークアップ         16,868円

この結果、輸入小麦の売渡し価格は53,270円!

比べてみましょう。
国産小麦 41,700円
輸入小麦 53,270円

品質・用途を問わなければ、国産安いですよねぇ!
(メーカーさんによれば国産は品質の低さ&バラつきの多さで
安くても買いたくないらしいのですが…)

でも、安くて国産っていうのは、
いわゆるanti-foreign-bias大(国産大好き)の
ヒトビト(含むnoshishi)にとっては「よさげ」に見える話です
が…

なぜ、4万円が16万円になり、
国産小麦が生産されるのか?
なぜ、3万円の輸入小麦が5万円払もわなきゃ
買えないのか?

その原因はこの「マークアップ」にあるんです!
平成17年のデータになりますが
食用小麦の450tが輸入、70tが国産です。

国産の70t対し
トン当たり118,000円の補助金を払うと
826億7000万円。

輸入の450tに対し
トン当たり16,868円マークアップすると
759億1000万円。

輸入小麦に上乗せされ、消費者が払わされているお金
さらにそれ以上の税金が国内の小麦生産者に
だらだらだら~~~だらだらだら~~~~
と流れています。

最近、小麦の価格が30%上がるっていうニュースを
見ましたが、生産者が工夫して生産費・品質ともに
輸入品と戦うぞぉ~~っていう姿勢がない限り、
補助金に頼りっぱなしでいる限り、
小麦生産者は一般消費者の敵ですな。

小麦生産者のみなさんが政府の助成金目当てに
小麦を生産することをやめてくれれば、
消費者は安くて高品質な小麦にありつけるのですが。

データ元
http://www.zenkokubeibaku.or.jp/mugi/jyukyuu/jyukyuu2.pdf
http://www.zenkokubeibaku.or.jp/mugi/jyoseikin/joseikin01.pdf
http://www.zenkokubeibaku.or.jp/mugi/syoureikin/syoureikin_1.pdf
http://www.maff.go.jp/j/press/soushoku/boueki/080215_1.html
http://www.kinki.maff.go.jp/introduction/syokuryou/syokuryo/site/mugiuriwatasi.pdf 
http://www.maff.go.jp/j/press/2006/20061122press_6.html 
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20041110press_2s4.pdf
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/kokusaijikyuu.pdf
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/seisanhi-komugi2006/seisanhi-komugi2006.htm


ぶったまげぇ~~民主党マニフェスト

2007-07-10 08:53:35 | 農業(政策)
民主党のマニフェストを見た。
小沢氏の願いはただひとつ、
「二大政党制の実現」
ってことは、まぁわかった。

それよりなにより、
3つの約束7つの提言の中の約束その3、
これには驚きました!あきれました!ゾ~~ッとしました!


「農業の元気で、地域を再生。農業の「戸別所得補償制度」を創設します。」
そのための予算は1兆円!

以前、「強くない農業、元気のない地域?」というタイトルでブログを書いた。
http://blog.goo.ne.jp/noshishijp/e/e7d220abfe3fcb86296f3540f8e87a30
その中で、現自民党政権の農政について「あ~だ、こ~だ」
モンクを言った。(以下、復唱)

「強い農業づくり交付金」として566億円、
「元気な地域づくり交付金」として538億円。

所得税納税人員のうち、給与所得者は4278万人、
申告所得者のうち農業は15万人。

15万人を強くし、元気づけるのに1000億円。


なんじゃこりゃ~~
と怒っていたのだが、
今回の民主党の約束はなんと一桁アップの1兆円。

申告所得者15万人の背景にはいったい何人の有権者がいるのか?
「田舎」の票には選挙結果を左右する力があるのか?
「田舎」は過疎化してヒトが減ってるってホント?



BSE 月齢20ヶ月

2006-01-26 15:11:48 | 農業(政策)
BSEに罹患した牛のお肉がヒトの口に入るのを防ぐために、日本では全頭検査を行なっていた。しかし、「牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則」の一部改正(?)により、BSE検査の対象となる牛の月齢は平成17年8月1日以降、21ヶ月齢以上となった。

これは、「全頭検査を行なうことには科学的根拠がない。だから、やらない。でもうちの牛肉を買ってくれ。」と言うアメリカとの妥協点を見つけるために政府のみなさんが知恵を絞って出した、「月齢21ヶ月未満の牛からBSEが検出された前例がない。したがって、21ヶ月未満の牛の検査は日本でも実施しない。だからアメリカも21ヶ月未満の牛を日本に向けて輸出してもOKでしょう。」というウルトラC級の発想によるものだった。
こうして、牛肉の輸入が再開された。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/txt/s1015-4.txt

どうしてアメリカがこうも日本向け輸出に躍起になるのかはhttp://blog.goo.ne.jp/noshishijp/e/bdbcc2680a4ad03576d559b9d82ddd93をご参照ください。

ま、脊椎が除去されずに送られてきたのはアメリカ的おおらかさ(?)ということでおいといて…ここで、言っておきたいことが二点。

BSEが検出された日本の22頭のうち、月齢21ヶ月のもの、23ヶ月のものがあった、イギリスでも24ヶ月のものがあった、ということ。

日本では月齢にかかわらず、現在もなお全頭が検査されている、ということ。
なぜなら、月齢21ヶ月未満のものに関しても、都道府県が検査を希望する場合、その費用は政府の補助金によりまかなわれているからだ。どの都道府県も安全性をアピールするために実質全頭検査を行なっている。

最後に、カナダの話。
カナダからの牛肉の輸入は再開され、今日もカナダから日本へ牛肉が届けられている。
カナダでは1997年に肉骨粉を飼料として与えることをやめた。そしてそれ降に生まれた牛からBSEは発生していなかった。が、1月23日、ついに5頭目のしかも1997年以降に生まれた牛がBSEに感染していることがわかった。原因は、畜産業者が手元にあまっていた古い飼料を与えたことではないかとされている。
2003年5月、カナダで4頭目のBSEが発見されて以来、カナダからの輸入を禁止していた韓国は、24日に予定されていた輸入再開の会談を取りやめ、輸入禁止の続行を決めた。

公益法人

2005-12-03 12:22:51 | 農業(政策)
農林水産省所轄の公益法人は社団法人282、財団法人164、計446法人。
これらの法人は天下ったお役人を理事として受け入れ、その見返り(?)として多額の補助金や権益を受け取る。
 公益法人が本当に公益となっているのなら、堂々と補助金額と天下った役人数、それによって行なわれた
公益事業をパッと一覧表で見せろ!と声を大にして言いたい。
 たとえば、農村振興局だけで19の所轄法人がある。補助金の額は比較的容易に調べられるが、天下りの人数となると
各法人のHPを開け→情報公開→理事名簿と大変な手間である。ましてや、活動内容となると1つ1つのHPをじっくりと見て、
見れば見るほどわからなくなり、と不透明極まりない。

農村振興局平成16年度補助金等概要報告書 補助金額(円) 天下り数

社団法人 畑地農業振興会 3,900,000 1
財団法人  農村開発企画委員会 133,735,000 4
社団法人 地域社会計画センター 14,483,000 -
(財)農村地域工業導入促進センター 34,270,000 9
財団法人 都市農山漁村地域活性化機構 273,994,000 7
財団法人 日本土壌協会 85,589,000 5
(社)農業土木機械化協会 5,000,000 3
社団法人 農業土木事業協会 5,000,000 4
社団法人 土地改良測量設計技術協会 29,686,000 -
社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会 36,924,000 3
(財)日本農業土木総合研究所 502,413,000 -
(社)農業農村整備情報総合センター 64,278,000 2
(社)農村環境整備センター 304,348,000 6
社団法人 地域資源循環技術センター 70,936,000 4
財団法人日本グラウンドワーク協会 53,503,000 3


総額16億円の行方はいかに…。

http://www.maff.go.jp/koueki/
http://www.maff.go.jp/koueki/itiran/nouson/nouson.htm
http://www.maff.go.jp/koueki/soti/2/2/08/noson.html

大豆と補助金:なぜ大豆の生産が増加しているのか

2005-10-20 11:50:30 | 農業(政策)
2005年農林業センサスの速報が出ている。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/census2005-08/census2005-08.pdf 
5年前のセンサスの結果と比べ耕作放棄地面積は4万ha増加し38万haになった。
もったいない。大豆を作ろう。大豆はおいしいぞぉ~。

大豆の収量は10aあたり約180kg(昨年は不作で約140kg程度だったようだが)。大豆の販売価格は60kgあたり6000円前後。ということは、売り上げは18000円。その手間は12時間、費用(種苗費・動力費・農機具費・肥料費・農薬剤費・水利費)は約17000円(むっちゃ大目に申告されていると疑っているが…)。12時間働いて1000円ではボランティアじゃないか!やっばり農家ってかわいそぅ~!と感じるかもしれない。しかし、ここに一点ウソがある。販売価格と生産者価格にはえ~~と驚く違いがある。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/seisanhi-daizu2004/seisanhi-daizu2004.pdf 

1961年 大豆の輸入の自由化
→「大豆なたね交付金暫定措置法」制定。不足払い制度。
1987年 基準価格に銘柄・等級格差を導入する法律改正。
2000年 大豆なたね交付金暫定措置法及び農産物価格安定法の一部を改正。

この結果、大豆作経営安定政策(通称:豆経)に参加すると、まず「60kgあたり」補填基準価格約6000円の4%を積み立てなければならない(ただし、生産者が4%積み立てると同時に国庫からこの積立金に12%が拠出される)。
で、生産者はこのわずか240円で、「交付金」8020円&「担い手支援・良質大豆生産誘導対策」300円&「高品質畑作大豆生産推進」1000円、しめて9320円をただもらいできる(すべて60kgあたりである)。万一、補填基準価格より安くでしか売れなかった場合も積立金から補填を受けることができる(差額の80%、したがって5000円でしか売れなかったときは積立金から800円もらえる)。至れり尽くせりである。
そんなこんなで、生産者価格は15080円(6000円(売り上げ)+9320円(補助金)-240円(積立金))になる。
6000円ぶんの大豆を生産するのに国庫から10000円お金が出ているのである。
農家の公務員化(?)はここまで来ている。
http://www.maff.go.jp/soshiki/nousan/hatashin/daizu/index.html 

ということは、10aあたり15080円×3-17000円(費用)=28240円。作業時間12時間だから時給2400円くらいにはなる。公務員よりちょっと儲かってる?

たしかに、アメリカは2002年の農業法で再び多額の補助金を生産者に出している。それによって、安い輸入大豆がどんどん日本に押し寄せてきている。しかし、これに対抗して補助金を吐き出すことは正当化できるのか?国税をアグリビジネスに注ぎ込むバイパスになっていないか?
国産大豆の生産が増加していることをうれしく思っていたのだが、こんなからくりがあったとは・・・

ところで、国産の大豆はいくらぐらいで売られているのか。ネットショップをのぞいてみても1kg500円は下らない。ということは、60kgで30000円である。味噌・醤油・豆腐などの製造業者の仕入れ値を見てみても、60kgで10000円を下っていないようだ。補助金など出さなくても農家の工夫で黒字を出すことは可能ではないか。

「強くない農業、元気のない地域?」

2005-09-24 14:43:20 | 農業(政策)
 以前にも書いたが、平成17年度の予算では「強い農業づくり交付金」として
470億円ものお金が国庫から支出された。
http://blog.goo.ne.jp/noshishijp/e/0593cc0c6349d183006423c57af67232

 平成18年度の「農林水産予算概算要求の概要」では、さらに増額されて、
http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kessan/h18/yokyu/3.pdf
「強い農業づくり交付金」として566億円が要求されている。
これに加えて、「元気な地域づくり交付金」なるものがあり、平成17年度に466億円
であったのが、18年度には538億円となっている。

所得税納税人員のうち、給与所得者は4278万人、申告所得者のうち農業は15万人。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/008a17a.pdf 
15万人を強くし、元気づけるのに1000億円。一人当たり74万円。怒れ!サラリーマン!

金さえあれば、農業は強く元気になるのか?
むしろ、金は弱々しい依存主義を増幅するだけではないか。

「ノーブンキョウ」

2005-09-22 22:00:15 | 農業(政策)
ノーブンキョーとは、社団法人・農山漁村文化協会を指す。
http://www.ruralnet.or.jp/nbk/nbk.html
農林水産省から「食育推進全国活動推進事業」という名目で8913万円の補助金
(平成16年度)を交付されている団体である。
もちろん役員には元農林水産省事務次官がいる。

「ショクイク」

2005-09-21 14:13:43 | 農業(政策)
 平成18年度の「農林水産予算概算要求の概要」によると、
http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kessan/h18/yokyu/3.pdf
「にっぽん食育推進事業」と言う名目で48億円の要求・要望額があげられている。(ちなみに、平成17年度の予算額は6億円であった。)
 シンポジウムだフェアだコンクールだアンケートだ、リーフレットを配れマスメディアで啓発だ、と、そういった活動が行なわれているらしい。
 食育の必要性は間違いなくある、と考える。が、文部科学省の管轄ということで家庭科の授業を充実させたらいいんじゃないの?と考えた。
すると、さすがにお役人さまは抜かりが無い、文部科学省と厚生労働省と農林水産省がすでにスクラムを組んでいるようだ。
 平成18年度に向けて、文部科学省は「食育推進プランの充実」と言う名目で4億3800万円の要求・要望額(平成17年度の予算額は3億2300万円)、厚生労働省は「食育の推進」と言う名目で7億5000万円の要求・要望額(平成17年度の予算額は5億円)をあげている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/08/05083103/all.pdf
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/06gaisan/dl/syuyou2.pdf

牛肉―アメリカの怒りはどこから?―

2005-04-05 15:34:44 | 農業(政策)
2004年、日本の米国からの輸入6兆8千万円、日本の米国への輸出13兆7千万円。
アメリカが「とにかく何でもいいから買え」と言いたくなる気持ちはわからなくはない。
http://www.customs.go.jp/toukei/suii/csv/d42ca003.csv

しかし、アメリカは牛肉輸入国である。2003年、836万トンの牛肉を生産し、94万トンの牛肉を輸入し、82万トンの牛肉を輸出している。つまり、アメリカには12万トンの牛肉が不足していたことになる。にもかかわらず、なぜ対日・対韓輸出にこだわるのか。

もちろん理由のひとつはゼニカネに違いない。
アメリカが輸入する94万トンの牛肉のお値段は26億ドル。一方アメリカが輸出する82万トンの牛肉のお値段は30億ドル。つまり、アメリカは自国に不足する12万トンの牛肉を手に入れてさらに4億ドル儲かるのだ。
2003年にアメリカが日本に売った牛肉は30万トン、12億ドルである。
日本が買わないとなると、単純に見積もって、アメリカの牛肉輸入量は64万トン、18億ドルになり、輸出量は52万トン18億ドルになり、4億ドルの黒字からプラスマイナス0になる。もちろん、輸入をストップするのが日本だけでないとなれば、当然、牛肉の輸出入で赤字が発生するであろう。

さらに、問題はゼニカネだけではない。食文化の問題がある。アメリカ人が必要としているのはハンバーガーに使われるあのポソポソしたモモ肉やステーキにするロースであり、アメリカがオーストラリアやニュージーランドから輸入する牛肉のほとんどがこれらの赤味の肉らしい。しかし、牛を解体するとハラミ・タン・テールそしてもろもろのホルモンも派生する。これらはバラエティーミートと呼ばれているが、アメリカでは需要がない。そこでアメリカが目をつけたのが牛肉を食する文化の発達した韓国とその流れを汲む日本だと思われる。

2003年にアメリカは42万トンのバラエティーミートを輸出し7億ドルの収入をあげている。このうち日本へは8万トンを輸出し2億ドルの収入になっている。つまり、日本向けのバラエティーミートはトン当たり約2800ドル、日本以外の国に向けたバラエティーミートはトン当たり約1400ドルとなる。

実際2004年、BSE問題が浮上し日本が輸入をストップした結果、日本がアメリカから購入した牛肉は12億ドルから43万ドルに、バラエティーミートは2億ドルから270万ドルになった。(ゼロでないのが不思議なのだが)
また、アメリカが輸入した牛肉は120万トン、36億ドル。輸出した牛肉は14万トン、5億ドルになり、2003年と比べると牛肉の輸出入により4億ドルプラスだったのが31億ドルマイナスになった。

2003年のアメリカの貿易赤字は約5400億ドル。牛肉問題でさらに35億の赤字が増えるとなれば、あの手この手の圧力もわからないでもない。
http://www.fas.usda.gov/ustrade/USTImFAS.asp?QI=
http://www.americanmeat.jp/

しかし、そのやりかたはどうであろう。
現在日本で行なわれているBSE全頭検査が科学的に、つまりリスク対コストからみて科学的に適正であるかという議論はさておき、全頭検査すれば買うと日本側は主張しているわけであり、検査のコストを価格に上乗せすることも可能である。検査のために必要なキットは1頭あたり3000円程度のはずである。(この根拠として、「01年10月に始まった食用牛を対象とするBSE(牛海綿状脳症)の全頭検査で、3月末までに国が投じた費用は検査キット(試薬と器具のセット)と設備代だけで約99億円に上り、感染牛1頭を見つけるのに約11億円かかった計算になることが分かった。厚生労働省の調べでは、全頭検査をした頭数は3月27日までに計301万7245頭。これまでに国内で確認された感染牛は計11頭だが、最初の1頭と農水省の死亡牛検査で感染が確認された1頭目を除く計9頭が、同検査で見つかっている。」という 2004.4.30の毎日新聞の記事をあげておく。が、この記事は全頭検査のコストを非常に高いものであると見せたいのか、99億円で9頭しか見つからなかったことを強調していらっしゃるようだが、99億円で301万7236頭の安全が確認できたと考えるべきであろう。)

ここで、もうひとつの問題がある。いつものこの国の農業政策である。
2001.10.24及び10.26.に農林水産省から公表された「BSE関連対策の概要」によると、                               (億円) 
我が国におけるBSEの清浄化          44
BSE新検査体制のもとでの食肉処理・流通体制の整備  102
農家経営等の安定                   488
畜産副産物等の適切処理の推進          376
その他                        31
このほか                    512
なんと、総額1553億円。税金をしっかり納めてるみなさん。国産の牛肉食べなきゃ損ですよ。
こんなに税金使ってるんだから!
http://jlia.lin.go.jp/cali/bse/

最後に、まったく個人的な話だが、わたしは「アメリカ産牛肉」をこれまでもほとんど食べてこなかったし、輸入が再開されても食べないであろう。まず、第一にあまり美味いと思わないこと、第二にBSE以上にアメリカの牛肉を生産するのに使われるホルモン剤と、殺菌のために認可されているコバルト線の照射が怖いからである。