noriba-ba's garden

モロッコ旅日記最終章~「何でモロッコ?」「だからモロッコ!」~

いよいよ最終章を迎えたモロッコ旅日記。

思い返せば

3月29日の「何を求めてモロッコへ?」から始まって

約一か月、12回に亘って綴ってきた旅日記。

何しろ一年以上も前の旅のことなので

記憶が曖昧でよく覚えていないことも多かったが

撮りためた写真とメモを頼りに

おぼろげな記憶を辿りながら何とか書き進め 

ようやくゴールすることができた。


このモロッコの旅は

初めて私が衝動的に出かけた旅だった。

特にこれといった理由もなく

ただ「見たことのない風景を見たいから!」という

たったそれだけの理由で…。

だから「何でモロッコ?」と人に問われるまでもなく

実は私自身が「何を求めてモロッコに?」と

自分に問いかけ続けていた。

今から思えば、その答えを見つけることが

ひとつの大きな旅の目的だったのかも知れない。

 

こうして終わってみると

日記を書くことで旅の光景や思い出が

私の中でまざまざと甦って来て

まるで再びモロッコを旅したような気がする。

そしてこの旅日記を通して

新たに気づいたことや見えてきたものがある。

おそらく一年経った今だからこそ

客観的に振り返ることができたのだろう。


その気づいたことの中に

この旅の目的でもある「何でモロッコ?」の

答えをいくつか見つけることができた。

そのことはすでに各回で詳しく書いている通りだが

旅日記の最後に整理してまとめることで

私の気持ちとモロッコの旅に

ひとまず区切りをつけたいと思う。


ずいぶん前置きが長くなってしまったが…

ついでにもう一言。(笑)

私が見つけた「何でモロッコ?」の答えだが

これはあくまでも個人的な見解であり

誰もがそう思うかどうかはわからない。

もしかすると間違っているかも知れないので

あらかじめ断っておきたい。


さて、ここからが本題だ。

この旅で見つけた「何でモロッコ?」に対する

私なりの答えをいくつかまとめてみる。


その1つめは

絵葉書にならない風景を見るためだ。

今でも忘れられない光景がいくつもある。

郊外の道端や草むらに散乱している夥しいゴミ。

行く先々の街や村で見かけた路上の露店商。

街角でたむろする男たちやかいがいしく働く女たち。

子育てに手を焼く母親や父親の姿。

そして村はずれで目を輝かせて遊ぶ子どもたちや

観光客に飴をせびる子どもたち。

こうした人々の暮らしぶりが垣間見える光景は

決して絵葉書にはならないだろう。

でも、こんな風景こそが私が見たかったものなのだ。

それが見えただけでもモロッコに来た甲斐がある。


2つめは

目に見えることが全てではないことを知るためだ。

モロッコに来て様々な景色を見てきた。

しかし、来て、見るだけではわからない

聞いて初めてわかることがたくさんあった。

たとえば…道路沿いにたくさん植えられたサボテン

ナツメヤシやオリーブ、アーモンドやオレンジの木なども

この国が食糧自給率100%だということを聞いて

初めてその理由がわかった気がした。

また、カスバ街道で見た地下水道溝も

昔の人が砂漠や農地に水を引くために手掘りで

アトラス山脈から延々と水路を築いたこと。

今では140か所ものダムを造り

人々の暮らしや農業を支えていること。

そして原子力発電所は一か所もなく

自然エネルギーを目指していることなども

聞いて初めて知ることだった。

どんな国も深く知らなければ分かったとは言えない。

そんな大切なことを教えられたように思う。


3つめは

絵葉書の景色を実感するためだ。

この旅に行く前にツアー会社のパンフレットで見た

あの青く幻想的なシャウエンの街の風景。

この風景を自分の目で実際に見たいと素直に思った。

それでモロッコに行くことに決めたのだが

実はこれがいちばん大きな理由かも知れない。(笑)

だから「何でモロッコ?」とみんなに聞かれて

とっさに出てきた答えが

「見たことのない風景を見たいから…」だったのだ。

でも、入口は何でもいい、これで良かったと思う。

だって問題はその先なのだから…。


4つめは

様々な体験から刺激を受け、感覚を呼び覚ますためだ。

この国では、見るもの、聞くもの、出会うもの

全てが私にとっては刺激的だった。

この出会ったことのない様々な体験が五感を刺激し

私の眠っていた原始感覚を呼び覚ました。

あのフェズのなめし皮加工場の強烈な臭いを始め

古い市場で感じた湿り気の混じった空気感

目がクラクラするほどの色とりどりの色彩

明るい太陽と迷路の暗い影

サハラ砂漠のどこまでも続く地平線や砂の感触

そして人々の喧騒や暮らしの生活音…。

こうした視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感だけでなく

迷路のような細い道でふと感じた不安感や

人々の活気あふれるエネルギーなど

ありとあらゆる感覚を総動員して刺激を感じ

私の中に取り込んでいった気がする。

これほどまでの強烈な刺激は

今まで行ったどの国でも感じたことがない。

モロッコでしか味わえなかったことかも知れない。

 

5つめは

モロッコの様々な顔を見るためだ。

モロッコには一体いくつの顔があるのだろう。

大西洋に面した近代都市カサブランカやラバト。

幻想的な青い街シャウエン。

歴代の王朝が築いた古都フェズ、マラケシュ。

人々が祈りを捧げるイスラム教のモスク。

雪に覆われた標高4000mのアトラス山脈。

土壁の要塞都市アイト・ベン・ハッドゥ。

かつて砂漠の隊商がラクダで行き交ったカスバ街道。

サハラ砂漠とナツメヤシに囲まれたオアシス。

いくつもの映画スタジオがあるワルザザード。

そしてメディナの迷路、ジャマ・エル・フナ広場の賑わい。 

ひとつの国でこれほど多彩な風景や気候の変化を

目の当たりにしたのは初めてだ。

それだけではなく

いろんなところで感じた、古さと新しさ、明るさと暗さ

貧しさと豊かさ、汚さと美しさ、大胆さと繊細さ

喧騒と静寂といった様々なギャップ…。

この国ではこうした正反対の二つの顔が

光と影のように混然一体となって共存している。 

モロッコに来て、いちばん印象的に感じたのが

この変化に富んだ多様性だった。

 

6つめは

予想外の出来事と出会うためだ。

旅には予想外の出来事がつきものだが

モロッコの旅でもいろいろな予想外があった。

その多くは良い意味での予想外であり

私に期待以上の感動や喜びをもたらしてくれたが

いくつかの予想外の出来事には困惑した。

そのひとつが雪によるアトラス山脈の峠道の通行止めで

急遽山越えのルート変更を余儀なくされたこと。 

それと砂漠のホテルで部屋の暖房が効かず

おまけにシャワーも冷たくて寒さに震えたこと。

そして私の冷え切った体のから手指にかけて

予想外の激しい関節の痛みに襲われたこと。

そもそも旅というのは非日常なので

そこで起こる様々な出来事や体験は予想外が当たり前。

むしろその方が思い出に残るというものだ。

確かに砂漠のホテルでのことは忘れたくても忘れられない。

なぜならこの痛みがきっかけとなり

帰国後のリウマチ診断に繋がったのだから…。

その夜は、謂わば、私のリウマチ記念日なのだ。(笑)

旅だけでなく人生にも予想外の出来事つきものだ。

私はそのことをモロッコで学んだ。


7つめは

自分の価値観を見つめ直すためだ。

日本人の私が当たり前のように思っていることが

モロッコでは必ずしもそうではない。

所謂カルチャーショックを感じることが多々あった。

気候や風土はもちろんのこと

国の歴史や信仰心、街や村の建物や雰囲気

人々の服装や食べ物、働き方や暮らし方、時間の観念

そして水や自然に対する思いなど

自分の当たり前という物差しが通用しないのだ。

これほどまでの価値観の違いを感じた国は他にない。

特にアイト・ベン・ハッドゥで感じた

まるで時間が止まっているような不思議な感覚。

10世紀以上も変わらずそこにある景色。

日々刻々と目まぐるしく変化する今日の時代にあって

変わりたいものは変わればいい

変わりたくないものは変わらなきゃいい。

誰が何と言おうと自分を貫けばいい。

そんなふうに思わせてくれたアトラスの山々…。

自分の物差しだけで推し量れない

この国にはこの国なりの当たり前があるのだ。

つくづく自分の視野の狭さを思い知らされた気がする。

それと同時に、改めて自らの価値観を見つめ直す

大きなきっかけを与えてくれたように思う。

 

8つめは

モロッコの計り知れない底力を見るためだ。

最後に訪れたジャマ・エル・フナ広場。

そこで感じたモロッコの人々の

想像を超えた活気と溢れんばかりのパワー。

その様子はまるで

食べることと楽しむことがあれば人間は幸せなのだ。

そう言っているように私には感じられ

この国の持つ計り知れない底力を見た気がした。

何も難しく考える必要はない。

目の前の今を一生懸命に生きればいいのだ。

かつて子どもだった頃のように…。

もしかすると、日本人がすでになくしてしまった何かを

この国は今も持ち続けているのだろうか。

その何かとは、生きるエネルギーかも知れない。


最後の答えは、やはり…

モロッコが好きだからだ。

最初から好きだったわけではないが

気がつくと、いつの間にか好きになっていた。

じゃあ、どこが好きかと問われたら

私は迷わず「面白い国だから…」と答えるだろう。

良いところもそうでないところも含めて

まるごと面白いと感じるのだ。

だから今、「何でモロッコ?」 と尋ねられたら

すかさず「だからモロッコ!」と答えたい。


ここまで長々と書き連ねてきたが

以上が私の「何でモロッコ?」に対する答えだ。

もちろん私が見てきたのは

モロッコのごく一面なのかも知れない。

まだまだ私の知らないいろんな面があるとは思うが

とりあえず私がモロッコの旅で感じた

モヤモヤしていた気分が少しはスッキリした。

これでようやく前を向いて

新しい令和の時代を迎えることができそうだ


これまでモロッコの旅日記に

お付き合い下さった皆さまに感謝! 


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