きつねの戯言

銀狐です。不定期で趣味の小説・楽描きイラストなど描いています。日常垢「次郎丸かなみの有味湿潤な日常生活」ではエッセイも。

Happy re-birthday!

2012-05-09 10:42:24 | 日記
[この文章はフィクションであり実在の個人及び団体とは一切関係ありません]

新しいチャンネル


Happy re-birthday!

どこかで声が聞こえる
「…カエリタイ…」

白い校舎。教室の窓の外に広がる校庭。
最後列廊下側隅の席。黒い詰襟。少し明るい色の髪。
窓側の列真ん中の席。紺のブレザー。ポニーテール。

…これは私の帰りたい過去?

「…カエリタクナイ…」

全ての幻影が消えうせる。目の前は漆黒の闇。もう何も見えない。

…それは私の消したい過去?


あの日を全力で生きていたら、もうあの日に用は無いはず。過去のどこかに置き忘れた心の欠片が呼ぶから過去の幻影に引き戻される。


「カエリタイ」

もう呼ばないで。忘れたいから。
記憶をバラバラに砕いて全部捨てる。
痛いから。悲しいから。

「カエリタクナイ」

戻って何になる?また傷つくだけ。
傷は癒えてないけどもう蓋をしたから痛くない。
みんな忘れた。全部消した。


そうしているうちはまだ本当は忘れてなんかない。痛みを封印しただけで、傷口はまだ生々しく口を開けてどくどく血を流している。
そんな内はまだ何一つ終わってない。

ごめんなさい。ありがとう。さようなら。

あの時の気持ちに嘘は無いけどもうやり直すことなどできない。
嘘でも強がりでもなく、今は静かな気持ちで見送れる。
そんな日もあったね、と。

傷つけてしまった貴方と私に

ごめんなさい。

でも出会えてよかったから

ありがとう。

そして全て終わったから

さようなら。


少し前の私なら、もしも何処かで偶然遭ったら、とても平静でいられなかったと思う。
だからもう二度と会いたくないと逃げていたけど、今の私は違う。
もしも何処かで偶然遭えたら、静かに微笑んで声をかけられる。
「お久しぶりね。お元気そうで。」
「又何処かで遭えたらいいですね。」
それ以上は語らない。
心の中で告げたごめんなさいも、ありがとうも、さようならも、ただのひとりごと。
今更直接伝えるものではないから。
多分どれほど苦しんでもそれは私の一人相撲に過ぎなくて、その時は傷ついてもきっと彼の中では日々の暮らしの中で忘れ去られていたはず。
私一人がいつまでも気にしていたのはきっと忘れたくなかったから。
あの時の思いにすがって生きていたから。


今はもうあの声は聞こえない。
遠い日の風景はただの風景になり、過去は感情を伴わないただの記憶になり、日々薄れてゆく。それでいい。
現在(いま)を一生懸命に生きなくてはならなくて、振り返る余裕などないはずだから。
長い長い真っ暗なトンネルをやっと抜けることができた。


過去を悼んであげなくて

ごめんなさい

未熟だったけど、精一杯の本気だったから

ありがとう

現在に誠実に生きるために

さようなら



そして、生まれ変わった私に

おめでとう

Happy re-birthday!
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5月8日(火)のつぶやき その5 | トップ | 地獄の果てまで 恋の道行 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事