傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

東日本大震災:まずは、生活再建・産業再建が緊急課題では?

2011-06-09 05:30:31 | 政治

東日本大震災による被災の復旧・復興のスピード感の無さで、与野党で政治的問題として権力闘争しているが、一方、メディアは、単なる復旧ではなく、防災重視の安全な町つくりし、新たな産業振興の復興が肝要という論調を報道しています。
当方は、政官業が復興、復興と声だかに叫んでいるが、果たして、大規模な復興計画が三陸沿岸の被災者に相応しいのか疑問を持っています。

当方は、積年の「政官業」の既得権で日本社会は「老化体質」「自閉気質」に陥り、「格差」が醸成され、「貧困社会」に陥り、大胆な社会変革が必要という考えであり、東日本大震災は、日本の構造改革の好機という思いがあります。
現在の復旧・復興に関する報道に接して、生活再建・産業再生による復旧計画を第一にするのか、防災重視の安全な町つくりの復興計画を第一とするのか問われれば、まずは、生活再建・産業再建が緊急課題と思いますね。

過日、TVのワイドショーで、仮設住宅に空家が出始めたと報道に接して、日本社会は「その日暮らし」の表層的な豊かさの実態を改めて思い知らされました。
番組では、仮設住宅へ入居可能の被災者で、入居をせずに、避難所暮らしを続行しているとし、その理由は、仮設住宅に入居すると「自立」と見なされ、高齢者にとっては、食料など支援がなくなり、今後の生活の目処の不安が主たる理由で、避難所生活で、避難者同士の新たなコミュニティ(住めば都)ができ、仮設住宅に入居し、新たなコミュニティに不安だということもあります。
要は、高齢者にとっては、将来の生計に不安があり、土着的なコミュニティが生活の基盤になっているということです。
社会保障・福祉の分野では、「自助」「共助」「公助」といわれるが、三陸沿岸の被災地は、高齢少子社会で、「共助」が生活の基盤になっているということでしょうね。
自宅・家財道具を一切を流失した高齢者にとっては、新たに生活設計できないという現実に直面しているのです。

6月7日の朝日新聞の記事『「養殖やめたい」岩手の漁協困窮 「国の支援遅い」』が、
”「東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県中南部の養殖漁業で、廃業を望む漁師の割合が5割以上となっている組織が漁業協同組合内で相次ぎ、一部では7割に達していることが分かった。各漁協は「素早い公的支援がなければ岩手の漁業が崩壊しかねない」と危機感を募らせている。

 県内24漁協のうち12組合が5日までに主に養殖の継続について、ホタテなど種類別に組合員の意向を調査してまとめた。各漁協の調査方法は異なるものの、約半数の組織で廃業を望む漁師が5割以上となった。継続希望者は全体を平均すると3分の2にとどまる。

 震災前に80人がワカメやホタテを生産していた吉浜漁協(大船渡市)では、55人が「廃業したい」と答えた。大船渡市漁協のホタテ養殖では、45人中継続を希望するのは17人にとどまる。大槌町漁協のワカメ養殖でも、継続希望は60人中25人と4割に過ぎない。

 8割が継続を希望する三陸やまだ漁協(山田町)でも、半数以上が国の支援などを条件につけた。

 また各組合によると、漁師らの間では、組合を脱退して返還される出資金を生活資金に充てたい、という考えが出ている。返還が可能になる来年3月ごろに離漁者が続出する恐れがある。

 岩手県の養殖ワカメの生産量は全国の半分近くを占めて1位。養殖昆布も北海道に次ぐ2位だ。それだけに漁業関係者の危機感は強く、田野畑村漁協の工藤求(もとむ)組合長は「国の支援はスピード感がない。無策のままだと漁をあきらめる人がますます増える」と焦る。

 国を待たない独自の動きも出始めた。小本浜漁協(岩泉町)は生活資金として1人20万円の見舞金を支給。町と協力して漁船購入を補助する。釜石東部漁協は、組合員で共同利用するため漁船19隻を発注した。

 重茂漁協(宮古市)の伊藤隆一組合長は「国は『面倒を見る』姿勢を示して我々を安心させて欲しい」と訴えている。

■「年取り借金できぬ

 市街地が壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町。町内の漁協に所属するワカメとホタテの組合組織は5月末、解散を決めた。10~30人が所属し、収穫や出荷を助け合ってきたが、高齢化が進み、出荷量は減り、仲買人に買いたたかれることも増えていた。そこに、津波が追い打ちをかけた。

 「仕方がない」。同町でホタテなどの養殖をしてきた女性(63)はつぶやいた。夫を津波で亡くし、自宅や養殖用の資材、漁船が流された。「船や資材をそろえると1千万円以上かかる。年を取って借金できない。悲しいけれど、津波がやめるきっかけになった」

 ワカメの養殖などをしてきた男性(67)も、漁を続ける気力が残っていない。「妻や息子と切り盛りしてきたが、2人とも津波にのまれて遺体で見つかった。1人ではやれません」

 4月末からアルバイトで生コン会社のミキサー車を運転するのは、同県大船渡市でホタテ養殖をしていた道下孝人(たか・と)さん(47)。2年前に買った船は無事だったが、養殖施設は壊滅し、借金だけ残った。育ち盛りの子が3人いる。「いつかは漁に戻りたいが」と話すが、当面はミキサー車のハンドルを握るつもりだ。

 同県宮古市田老で80年近く漁に携わってきた松本永次郎さん(93)も津波で2隻の漁船と家を失った。漁協は共同で漁を再開させる方針だが「自分のやり方と合わない」。漁を続けるかどうか、悩んでいる
。」”
と、養殖漁業の再建の難しさを報道しています。

漁業の再建策については、小松正之氏が「WEDGE Infinity」への寄稿『漁業復興 カギは漁業権の開放』で、
”「60歳以上の高齢者が基幹漁業の約50%を占めていて、後継者も25%しかいない状況では、将来的に水産業の発展は見込めません。漁協が既得権を手放さず、漁業権が開放されないため、新規参入が現実的になかなか難しいというのが現状です。漁協の小規模漁業者たちだけでは、ビジネスとして「儲かる漁業」にはほど遠い上、集約が進まなければ資源管理の問題も解決されません。そこで、(3)水産法制度改革による新規参入化と雇用の創出 が非常に重要となってきます。」”
と、漁業も農業と同類の既得権構造の問題を指摘します。

被災地は、高齢少子社会で、自力で再建が困難な状況である一方、政官業が「復興・復興・復興だ」と声だかに叫んでいますが、なにか現実と遊離しているのではないかという印象を持っていました。
ブログ「社会科学者の時評」様のエントリー『米国の「属国」日本:国民を救済できない国家』で、「至難に遭っている民を救えないこの国」とし、長周新聞の記事
①『漁業復興の前例あるのに放置 東日本大震災から二カ月 大資本の復興ビジネス優先』(2011年5月27日付)
②『外資が収奪する全国モデル 政府の東北「復興」計画 農地や漁業権奪い企業化』(2011年6月1日付)
③「『復興の為』掲げ 全国民収奪 東電は公金投入で救済 巨額の米国債は売らず」(2011年5月30日付)
を紹介しています。

当方は、長周新聞は未知でしたが、記事は、「社会科学者の時評」様のサブタイトル「【誰のための政府・政治・行政か-浮かばれない犠牲者・救われない被災者たち-】」ではないが、抜け目のない大資本が「復興」の名を借りて目論む「復興ビジネス」を批判しており、同感の思いです。
被災現場は将来不安で途方にくれているのに、政官業は「復興・復興・復興!」を「錦の御旗」にした「復興ビジネス」の経済原理で動いているのは想像できます。

本ブログ「東日本大震災:高台移住案、漁師ら反発相次ぐ…画一的より多様性」で、復興の成功事例として、
”「地震と津波で壊滅した奥尻島は、多くの住民は高台に移住し、漁民は海の近くに新たな盛土の高台を住居にし、津波の発生時に即非難できるように施設を作り、安心と安全と生活面で工夫しています。」”
と奥尻島を成功事例と紹介したが、その後の奥尻島が経済活性化したかといえば疑問です。人口減少が続いており、復興成功とは言い難いですね。
東日本大震災で、被災地を特例扱いにしても復興させるのは至難の技で、被災者が疲弊し、大資本が元気なるだけでないかと危惧しますね。
それよりも、自然相手の生業で土着的に生計できる道の復旧が現実的ではないかと思われます。

本ブログ「東日本大震災以降、政治も社会も粗雑になってきた(雑感)」で、
”「着の身着のまま身一つの被災者は、家族・家屋・生活の糧を失い、時間の経過とともに、「将来不安」の悩みが深刻になります。
まずは、現実は先にたつのが「現金」でしょうね。
本ブログで、
”「被災者の現実を考えれば、明日からの生活の糧をどうするかという切実な悩みに直面しますね。
この際、「復興院」的組織を設置するのであれば、大震災の被災者には、まずは、半年間、大人・子供に1人につき10~15万程度を無条件に支給(一種のベーシック・インカム?)することが先見ではないかと思いますね。」”
と、現金給付し「将来不安」の軽減させ、当面の実生活への「カネ」の心配を軽減させることが先決と思いましたね
。」”
と、人間、何も社会参加せず、支援頼りだけで避難所暮らしは、苦痛となると書きました。

被災者が、何らの社会参加することが、復旧・復興の源であり、まずは、生活再建・産業再建が緊急課題ですね。
東北の復興が日本の再建の先導の起爆剤という論調が一部にあるが、現実離れの感があります。
日本の再建は、東京の一極集中から機能分散、発送配電の分離、エネルー・食料の自給自足など日本全体に関わる構造改革がなければ難しく、大資本だけがハッピイの復興だけは避けたいです。

  


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