傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

エコノミストのいい加減さ?・・・郵政組は最低ランク

2009-07-01 22:07:48 | 郵政民営化
文藝春秋の2009年7月号に、ジャーナリストの東谷暁氏が寄稿した『エコノミストは役にたつのか』で、25人のエコノミストを評価しています。
サブタイトルは、”金融危機を予測したのは数人だけ、恐慌でわかった本当の実力”で、(Ⅰ)米金融崩壊の予測、(Ⅱ)日本経済の浮沈予測、(Ⅲ)インフレ目標について、(Ⅳ)財政出動についての4つのテーマで格付け(ムーディーズ型)しています。
特記事項は、郵政改革派アナリスト(竹中平蔵、田中直毅、高橋洋一)は最低ランクで、竹中平蔵氏と「犬猿の仲」の金子勝氏は上位ランクですね。

東谷暁氏の格付けランクでは、

 1) 菊池英博 (日本金融財政研究所長)        
     ランク:Aaa
 2) 小野善康 (大阪大学社会経済研究所長)     
     ランク:Aaa
 3) 小林慶一郎 (経済産業研究所上席研究員)    
     ランク:Aaa
 4) 金子 勝 (慶應義塾大学教授)          
     ランク:Aaa
 5) J.スティグリッツ (コロンビア大学教授)      
     ランク:Aaa
 6) 榊原英資 (早稲田大学教授)            
     ランク:Aaa
 7) R.クー (野村総研主席研究員)         
     ランク:Aaa
 8) 竹森俊平 (慶應義塾大学教授)          
     ランク:Aa1
 9) 渡辺善美 (衆議院議員)               
     ランク:Aa3
10) 水野和夫 (三菱UFJ証券チーフエコノミスト)   
     ランク:A1
11) 岩田規久男 (学習院大学教授)          
     ランク:A2
12) 野口悠紀雄 (早稲田大学大学院教授)       
     ランク:A3
13) 嶋中雄二 (三菱UFJ証券景気循環研究所長)  
     ランク:Baa1
14) 伊藤元重 (東京大学大学院教授)         
     ランク:Baa2
15) 原田 泰 (大和総研チーフエコノミスト)      
     ランク:Baa3
16) 若田部昌澄 (早稲田大学院教授)         
     ランク:Baa3
17) 池尾和人 (慶應義塾大学教授)           
     ランク:Ba2
18) 高橋洋一 (東洋大学元教授)            
     ランク:B3
19) 中谷 巌 (三菱UFJリサーチ&コンサルテイング理事長)  
     ランク:B3
20) P.グルーマン (プリンストン大学教授)     
     B3
21) 竹中平蔵 (慶應義塾大学教授)          
     ランク:B3
22) 森永卓郎 (独協大学教授)              
     ランク:B3
23) A.グリーンスパン (前FRB議長)          
     B3
24) 田中直毅 (国際公共政策研究センター)      
     ランク:B3
25) 武者稜司 (ドイツ証券副会長)            
     ランク:B3

当方は、東谷暁氏の点数付け、ランク付けにコメントするほどの知見など持ち合わせはありません。
東谷暁氏の格付けランクでは、サブプライム問題を端を発した金融危機を早期に言及したのは、金子 勝氏(慶應義塾大学教授)などと、幾つか興味をもちましたが、一番に、興味をもったのは、郵政改革の竹中平蔵氏、高橋洋一氏、田中直毅氏が最低ランクに格付けされ、伊藤元重氏には、変節したと記述していますね。

『エコノミストは役にたつのか』の一部、抜粋すると、

『米金融危機を見通した人々』

竹中平蔵氏については、

”「2008年4月になってもBS朝日で、【私は、米国の金融機関が日本のように、全体としてキャピタルクランチ(貸し渋り)に陥るリスクは、いまでも少ないとみています】と発言していた。」

しかし、このとき既に、米国に銀行による資産の「投げ売り」と「貸し渋り」が広がっていた。

「同放送で、竹中氏は、民営化した郵貯の資金をアメリカに投資しろと主張して、竹中氏の「郵政民営化とアメリカの圧力とは関係ない」という発言を覚えていた人々を唖然とさせたが、アメリカ経済についての状況判断がここまで甘いのはさすがに珍しい
。」”

と酷評しています。
同様に、田中直毅氏については、この時期の発言は、あまりにも能天気ではないだろうか?と酷評していますね。

『予想を外した面々の言い分』

金融危機で、アメリカ経済が停滞を始めた時、サブプライム関連の金融商品をあまり購入していなかったお陰で、「ほとんど無傷」といわれた日本経済が急速に落ち込み、2008年10月24日時点での1年間の株価下落率は、アメリカが38.7%なのに、日本は53.2%とずっと高かったことに対して、

”「田原総一朗氏のような小泉改革の熱狂的支持者が、「これは改革を中断したからだ」との発言を繰り返したのは分かる。
しかし、小泉政権内にいたとはいえ、経済学者を名乗っている竹中平蔵氏が、いまも、『週刊エコノミスト』2009年5月19日号に、”構造改革が止まり、企業や国民の期待成長率が下がったから” などと嘯いているは呆れざるえない
。」”

『跋扈する自虐説と変節』

日本経済が変調し、自虐説解釈として、代表例が小泉改革停滞による景気後退説で、その他に、「罪と罰」論、「懺悔の書」が登場したが、「懺悔」もなしに、自らの立場をいつの間にか変えてしまうエコノミストの典型に、伊藤元重氏としている。

”「伊藤元重氏は、小泉政権に参画して「小さな政府」を論じ、『中央公論』2005年10月号では、”日本の国民が・・・・・「大きな政府」の選択をするとは考えにくい”と断じていたが、2008年11月12日付け日経MJでは、”オバマ氏が志向する経済政策の方向は明らかにこうした大きな政府を目指したものである。そして日本国内でも十分な需要をつくるためには同様な方向しか道はない”と論じた。」”

と紹介し、そして、誰より奇妙な議論を展開したのは、田中直毅氏だったと書いています。

”「田中氏は小泉政権に参画して、たとえば『日経ビジネス』2003年10月6日号でも、”大きな政府ではもはや政権は取れないというのが現実”などと論じていた。ところが、アメリカが「大きな政府」に移行したせいか、『週刊東洋経済』2008年9月27日号では日本は、”いわば「小さな政府」を選んだ”と論じ、”日本政治は、「小さううえに脇のこと」ばかりに関心を寄せてきた” などと批判している。では、これから何をすべきかというと、非正規雇用の拡大を阻止することらしい。
”正規雇用を増やすための努力をしないと、政治の役割を放棄していることになる
」”

”「しかし、55年体制が続いた80年代まで非正規雇用は多くなかった。
急速に非正規雇用が増えたのは、「小さな政府」がスローガンとされた90年代からである。
田中直毅氏は、「政府」と「政治」をごちゃ混ぜにして言葉遊びをすることで、問題を曖昧しているだけではないだろうか
。」”

と東谷氏は、田中直毅氏の姿勢を疑問視していますね。
そして、東谷氏は、

こうした論者は、エコノミストのある種の欠陥を体現したともいえる。
 事態の変化によって足場を変えれば、いかなる変化にも対応できるのは当然である。
 しかし、何の説明もなしに前提を変えてしまうエコノミストの議論を信じろといっても、それは無理だろう
。」”

と記述しています。
また、東谷氏は、高橋洋一氏については、小泉改革や「上げ潮派」の隆盛を背景に、次から次へと耳目を集める政策を提案したが、必ずしもそこに新しいものがあったわけではなかったと辛口の評価ですね。

東谷暁氏のエコノミストの格付けランクを見ると、小泉改革に関係した人物のランクが低く、ランクの低い人間が関与したことが、日本経済、郵政民営化路線が順調でない傍証ではないかと邪推したくなりますね。
特に、田中直毅氏は、「郵政三事業の在り方について考える懇談会」座長を務め、 現在も、「郵政民営化委員会」委員長であり、郵政問題の遠因でもないかと憶測したくなりますね。




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