「現代ビジネス」サイトに掲載の「週刊現代」(2013年10月19日号)の記事『世界的科学者(米国ウッズホール海洋研究所ケン・ベッセラー博士)が目撃した「原発汚染水の海域」と「放射能汚染の実情」』で、海洋調査した米国ウッズホール海洋研究所ケン・ベッセラー博士にインタビューによる記事にしています。
ケン・ベッセラー博士は、魚介類の汚染レベルは食べて安全といえないと語っています。
安倍首相は、所信表明演説で「食品や水への影響は、基準値を大幅に下回っている。これが「事実」です」と強弁したが、信憑性を持たせるには国際グループによる調査体制の実測値でもって表明すべきですね。
「週刊現代」の記事『世界的科学者(米国ウッズホール海洋研究所ケン・ベッセラー博士)が目撃した「原発汚染水の海域」と「放射能汚染の実情」』で、当方が最初に注視した部分は、
”「福島原発事故でも事故直後の2011年4月、他の日本人研究者と連名で「福島原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」という論文をまとめた。この論文は、世界で最も権威のある科学雑誌『ネイチャー』への掲載も決まっていた。ところが、日本の気象庁がベッセラー氏の記述は風評を煽るとして削除を求めた経緯がある。つまり、ベッセラー氏は日本の役所が隠したい内容でも科学者の良心に従って、その危険性を説いてきた反骨の科学者と言える。」”
です。
この科学雑誌『ネイチャー』への掲載削除問題については、朝日新聞の特集連載〈プロメテウスの罠〉で記載されており、本ブログ「朝日新聞:〈プロメテウスの罠〉で気象庁データを公開に尽力したのは森ゆうこ議員!」(2011-11-19)で取り上げてました。
当該ブログは、朝日新聞の特集連載〈プロメテウスの罠〉の要約を記述しました。
気象庁気象研究所の放射能研究の中核の地球化学研究部の青山道夫氏、環境・応用気象研究部の五十嵐康人氏は、予算凍結を無視し、他の研究機関の水面下から協力を受け、観測サンプル採取作業を継続し、その結果を科学雑誌『ネイチャー』に掲載の話になり、
”「6回目(ネイチャーに出そう)は、青山道夫氏が、3月末、モナコで国際原子力機関(IAEA)の会議の特別セッションで福島原発事故に関する報告が、研究者仲間の米国のウッズホール海洋研究所のケン・べッセラー氏から英誌「ネイチャー」に掲載を薦められ、青山道夫氏は、海水の動きの権威の(独法)海洋研究開発機構の研究者の深澤理郎氏に声を掛け、青山、ケン・べッセラー、深澤の3人連名で論文を出すことにし、4月18日には、英文の素案がまとまる。
素案は、「過去の大気圏核実験がもたらしたレベルより数けた高く、86年のチェルノブイリ原発事故で黒海やバルト海が汚染されたレベルより少なくとも1けた高い」など。
ネイチャー誌は、大きな関心を寄せ、ただちに掲載を決定。
青山道夫氏は、上司の地球化学研究部長、緑川貴氏から「問題ないんじゃないか」と投稿計画申請の許可印を貰う。
7回目(削除してくれないか)は、上司(緑川貴氏)から許可をもらった青山道夫氏の論文について、翌4月19日、韮澤浩・企画室長から異例の論文説明を求められる。
25日、加納裕二・所長から説明を求められ、韮澤浩・企画室長、緑川貴・部長を供われ、青山道夫氏は加納所長に説明。
加納「専門家は判断できるかもしれない。しかしマスコミは、『福島の海はチェルノブイリ事故の1万倍の汚染』と書きかねないですよ」
加納「チェルノブイリ事故との比較は削れないものか」
と加納裕二・所長からの削除要求部分は、共同筆者のケン・べっセラー氏が担当した部分であり、
加納「書き直さないなら、『気象庁気象研究所・青山道夫』の名前でこの論文を出すのは許可できない」
と、青山道夫氏の論文許可おりず。
8回目(センセーショナル)は、青山道夫氏の論文は、ネイチャー誌は、「所属機関のトップが反対する論文は掲載できない」と、掲載とりやめになる。
青山道夫氏の論文は、地球化学研究部内の情報交換会では、問題なく、「公表すべきだ」の意見であったが、加納裕二・気象研所長は、気象庁に、この論文を見せ、意見を求め、関田康雄・気象庁企画課長は、
”「チェルノブイリ事故時の海のデータと比べるのはサイエンスとしてどうでしょう。誤解を招くのではないでしょか」”
とし、判断理由を、
”「ふだんならいいのですが、こんな原発事故が起きた折、センセーショナルな数字が表に出て混乱を引き起こしたらまずい、と」”。
青山道夫氏は、加納所長は研究畑でない管理職であり、論文の科学的判断ができるのかと納得せず、所長室への質問のやり取りを関係各部長に同報したが、20日過ぎても、所長から回答がなかったと。
9回目(所長があやまってほしい)は、青山道夫氏の論文投稿を不許可になった問題で、上司(緑川貴氏)が韮澤浩・企画室長から聞いた加納所長の考えを青山道夫氏に伝えたが、青山道夫氏は加納所長の判断に納得せず、共同筆者のケン・べッセラー氏、深澤理郎氏に謝罪を要求する。
加納所長ではなく、韮澤浩・企画室長からメールで、”「共著者に対する説明は、青山さんからしてください」とあり、
”「まだ事故が収束の方向にあるのかどうかわからず、報道もさまざまな専門家・機関による発表やコメントを取り上げている現状では、(気象庁)企画課、所長から了解を得ることは難しいと思います」と。
10回目(自分はしゃべれない)は、気象研究所は、放射能に関して外に話せなくなったと。
福島原発事故後、「青山は海、五十嵐は大気」と国内外に知られている青山道夫氏、五十嵐康人氏に、取材や講演依頼が相次いだ。
五十嵐康人氏への新聞取材には、企画室の研究評価官の同席の他、企画室長、五十嵐康人氏の上司の環境・応用気象研究部長までが顔をそろえ、
”「拡散についてはお話しできますが、リスク評価はうちの仕事ではないのでコメントできません。うちの名前や私の名前が出る場合は、公を代表した意見ととられますので」”
と歯切れの悪い受け答えになったと。」”
が、科学雑誌『ネイチャー』への掲載が組織の意向で不許可になった経過です。
「週刊現代」の記事によれば、米国ウッズホール海洋研究所は、独立系研究機関であり、ケン・ベッセラー博士自身が4回来日に海洋調査しており、ケン・ベッセラー博士の提言の
”「最も重要なことは国際グループによる調査態勢の構築です。世界各地にいるそれぞれの専門家の協力を得てチームをつくる。日本だけでは解決は無理です。私も協力を惜しみません」”
を受け入れることが、事実を知ることになり風評被害を軽減できる方策と思いますね。
漁業関係者が生活の糧を原発事故汚染で奪われ、日々地道に試験漁業で放射能調査をし、許容値をクリアできることを切望しているのは報道で知っているが、原発事故汚染は世界的な問題であり、世界が容認できるのは国際グループによる調査態勢による検証でしょうね。
安倍首相は、所信表明演説で、
”「汚染水の問題でも、漁業者の方々が、「事実」と異なる「風評」に悩んでいると現実があります。
しかし、食品や水への影響は、基準値を大幅に下回っている。
これが、「事実」です。」”
と強弁したが、事実に信憑性がないから風評となるのです。
安倍政権は、特定機密保護法の成立に傾注しているが、公的機関の研究者の情報開示を現在は組織の上司の判断・裁量で抑制しているが、特定機密保護法の成立すれば、法律の名のもとで抑制することが容易になり、事実の情報公開から遠のくことを危惧しますね。
安倍首相の「原発汚染水は管理下」発言は、厚顔無恥の個人的な資質問題とも言えるが、特定機密保護法の成立すれば官僚組織の防衛に利用される恐れがあります。
「付記」
当方は、マスコミ報道を全面的に信用していないが、朝日新聞の「プロメテウスの罠」については、実名で記事にしており、好感しています。
気象研究所の青山道夫氏の論文を科学雑誌『ネイチャー』に掲載不許可問題は、日本の官僚組織の宿弊と思い、本ブログでその後の経緯を書きました。
本ブログ「朝日新聞:〈プロメテウスの罠〉気象庁長官の記者会見を追及・・・朝日新聞の意地?」(2011-11-22)で、朝日新聞の「ネイチャー」不掲載の追及を取り上げました。
また、問題になった青山道夫氏については、本ブログ「汚染水問題:5,6号機を介在して外洋に放出?・・・事実なら嘘の連鎖は国策?」(2013-09-20)で、気象研究所の青山道夫主任研究官の研究発表の報道を取り上げており、安倍首相の「汚染水は管理下」は虚言と書きました。
それにしても、我々国民は、厚顔無恥の慢心家の安倍晋三を首相に選出したかと思うと無力・空虚感を持ちます。