傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

中谷 巌氏の新自由主義にもとづく構造改革の懺悔のついて

2009-02-17 03:23:32 | 独り言
経済に疎い当方は、中谷 巌氏の反省の記を読み、初めて経済学は人間の営みを考慮していない学問であったかを認識した次第です。

日経ビジネスでの対談記事「なぜ私は変節したか?人間を幸せにする資本主義の模索を」で、中谷氏は、新自由主義の思想と、そのマーケット第一主義の結果として現出したグローバル資本主義(米国型金融資本主義)を批判した『資本主義はなぜ自壊したのか』を著し、変節した背景を語っています。
当方が印象に残った部分は、

中谷:「経済学は価値観を入れてはいけないという学問。
    歴史とか文化などの価値は議論に入れてはいけない学問なんですよ。
    だから、すごくロジカルで分かりやすい。
    だから、世界に普及してしまう。
    例えば、竹中平蔵さんはどんな問題にもきちっと答えられるでしょう。
    経済学の知識が体系立てて頭に入っている人は、どんな問題でも必ず
    答えられる。」

です。
要は、経済学には、社会という人間の営みを考慮していないことで、竹中平蔵氏の話は、全てロジカルですが、何か「そうかなー?」という残存感がありましたので、中谷氏の言葉で、成る程と納得した次第です。

中谷氏は、文藝春秋(2009.02)に「竹中平蔵君、僕は間違えた」を寄稿しております。
サブタイトルは、”構造改革の旗手による「転向」と「懺悔」の記”で、小渕恵三内閣の諮問機関「経済戦略会議」においての「日本経済再生への戦略」(99年2月)に盛り込んだ「改革案」を総括しています。

「日本経済再生への戦略」で、規制緩和、構造改革の3つの基幹として
① 労働市場の流動化とセーフティネットの充実
② 民営化・自由化による「小さな政府」モデルの導入
③ グローバル経済への対応
提言したとしています。

①の「労働市場の流動化とセーフティネットの充実」では、
「答申した99年当時は、この労働市場改革が大きな雇用不安をもたらすとは思ってもいなかった。ただただ、日本経済を成長軌道に乗せるにはどうしたらいいのかと考え、その改革の先に日本社会がどう変っていくのかまで見据えた議論をすべきだったと強く反省している」
と記述し、そして、以前に提案したバウチャー制度より北欧型の高度な職業再訓練システムの導入すべきと提案しており、健全なセーフティネットの形になるだろうと記述しています。

②の「小さな政府」では、
オバマ大統領の就任演説で言及したように、「小さな政府」という目標自体が間違っていたとしている。そして、
「官による不透明で非効率なシステムを改め、国民が安心して暮らせる簡潔明快で透明性の高い社会保障制度を検討することだったはずだ。
しかし、我々はここでもマーケットを過信していた。
民営化し、市場原理を導入すれば」おのずと最適なシステムになうという考え方が根底にあったのだ。
それが多くの誤りを生んだ。」
とし、郵政、年金、医療に関する改革の功罪を記述し、「還付金つき消費税」を提案している。

③のグローバリゼーションへの対応では、
貯蓄から投資への流れを目指したが、「グローバル資本を無原則に取り入れることが、どれほど危険なことかは、そこでは論じらなかった」とグローバリゼーションの功罪を述べています。

「改革の必要性はわかる。だが改革した後、日本の社会はどうなるんだ」。という問いに、「それは、マーケットが決めてくれますよ」と答えていたとし、その答えの中に最大の誤りがあったのではないか?と自問していますね。

「あるべく社会とは何かという問いに答えることなく、すべてを市場まかせにしてきた「改革」のツケが、経済のみならず、社会の荒廃をも招いてしまった。それがこの10年の日本の姿であった。」と述べて、「すべての改革が悪ではなく、さらなる改革を模索することが日本再生への第一歩だ」とし、そこには、「日本社会の良さとは何か、いかなる社会を作っていくべきか」という問いかけがなされなければならないと結んでいますね。

中谷氏の変節に関しては、賛否両論あることは承知していますが、当方は素直に寄稿内容には、同感・賛同しています。
当方の庶民感覚で言えば、人間、なかなか自己否定・自己批判はできないものです。
中谷氏は、民間企業に就職し、その後、米国渡り勉強され、大学教授になり、現在は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長であり、学者馬鹿でなく、企業人として社会を眺め、理論と現実のギャップを痛感し、良い意味で変節したのではないかと推測します。

一方、竹中平蔵氏は、TVコメンターとして意見を拝聴している限りは、まだまだ、自己否定に到らず、改革が半ばであるという姿勢ですね。



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