麻生政府の補正予算に、時事通信の「お台場にアニメ美術館=11年度完成、目標は年60万人-文化庁」、「コンテンツ支援ファンド創設へ=アニメなどの国際展開を後押し-政府」の報道を見る限り、ソフトパワー政策は、まずは、予算計上ありきで、政策立案は後追いですね。
ソフトパワーも大事ですが、質の劣化、権利、3Dなどが問題でしょうね。
当方は、漫画、アニメも、映画については、疎く、傍観者になりますが、ソフトパワー政策は、補正予算の主旨から逸脱し、まずは、予算化ありきに追随した施策しか思えないですね。
時事通信が記事「お台場にアニメ美術館=11年度完成、目標は年60万人-文化庁」を転載すると、
”「文化庁は28日、アニメ、漫画、映画などの作品を展示するための美術館「国立メディア芸術総合センター」(仮称)を新設する構想を発表した。
東京・お台場が候補地で、来場者数の目標は年間60万人。
2009年度補正予算案に建設費用117億円を計上しており、11年度の完成を目指す。
有識者による検討会が今回まとめた構想では、延べ床面積約1万平方メートルの4-5階建てとなる見通し。館内にスクリーンを備え、常設・企画展示などを行う。
将来を担う人材を育成するため公開講座も実施するという。
運営は独立行政法人国立美術館が外部に委託する。
年1億5000万円程度の入場料を見込むほか、企業の協賛金、関連グッズ販売、イベント会場としての使用料で運営費用を賄う予定。」”
と報道されており、また、「箱物」をつくるということでしょうね。
本件については、「週刊朝日」(5月15日号)では、鳩山幹事長が、4月28日の衆議院代表質問で、「総理のアニメ好きは存じ上げておりますが、なぜ、117億円も投じて巨大国営マンガ喫茶を造り、独立行政法人を焼け太りさせる必要があるのでしょうか」と批判したと報じていますね。
記事「コンテンツ支援ファンド創設へ=アニメなどの国際展開を後押し-政府」を転載すると、
”「政府は、国際的に評価が高い日本のアニメーションや映画などコンテンツの海外進出を支援するため、「コンテンツ海外展開ファンド」(仮称)を創設する。今秋までに発足させる方向で出資規模などを詰めており、7月にも新設される官民共同ファンド「産業革新機構」などから資金を調達する案が有力。
国内の制作会社や作家からコンテンツの海外ライセンス(使用許諾)を取得するとともに、海外の制作会社に出資し、国際展開を後押しする。
今年の米アカデミー賞で「おくりびと」が外国語映画賞、「つみきのいえ」が短編アニメーション賞をダブル受賞するなど、日本映画やアニメの国際的評価は一段と高まっている。
しかし、内閣官房によると、日本のコンテンツ産業の海外売上高比率は2004年時点で1.9%にとどまり、米国の17%に比べ大きく見劣りする。ファンドによるてこ入れで、「米国並みの海外売上比率を目指す」(経済産業省)計画だ」”
と報道されており、コンテンツ・ビジネスの助成ですね。
一方、朝日新聞が「アニメバブル崩壊 DVD不振、新番組も減2009年5月4日]で、
”「日本の「ソフトパワー」として期待を集めるアニメが、06年ごろをピークに作品数もDVD売り上げも減り続けている。
今春の新番組も激減。
関係者は「アニメバブルが崩壊し、右肩下がりの時代に入った」と話す。(小原篤)
制作会社などで作る日本動画協会によると、1年間に放送されるアニメ番組は00年には124本だったが、06年には過去最高の306本と急増。
それが08年には288本に減った。
4月開始の新番組も、06年の60本台をピークに減少に転じ、今年は30本台の見込みだ。
同協会の山口康男専務理事は「数年前からのバブルがはじけた。
少子化と不況で市場は右肩下がり。
業界は人余りからリストラへ進むのではないか」と話す。
■深夜放送で人気
バブルをもたらしたのは、90年代後半から増え始めた深夜アニメ。
キー局、UHF局、衛星放送などで深夜帯に放送し、ビデオソフトを収益源とする青年向け作品だ。
90年代半ばの「新世紀エヴァンゲリオン」のヒットを受け、制作会社とビデオ会社、出版社などが組んで競うように作品を送り出した。
テレビ放映は、ソフトを売るための30分間のコマーシャル、という側面もあった。
「放送局は、余っていた深夜の放送枠が売れ喜んだ。マスコミは『海外でも人気』『萌(も)えブーム』などと持ち上げた。
景気回復で投資先を探していた金融会社や新興のIT企業なども参入し、本来ニッチな市場に過剰な期待が集まった」と、あるプロデューサーはバブルの構造を解説する。
「剣風伝奇ベルセルク」「マリア様がみてる」「ローゼンメイデン」「ひぐらしのなく頃に」「マクロスF」など、様々なヒット作や話題作が生み出され、深夜は「アニメの楽園」と化したが、ソフトの売り上げにはかげりが見えてきた。
日本映像ソフト協会の統計では、日本のアニメソフトは05年に国内で約971億円、06年に約950億円を売り上げたが、07年には約894億円、08年は約779億円と下降線をたどる。
「ソフトが売れないのは、増えた作品がどれも、美少女やメカといった売れそうな要素を並べただけで似たり寄ったりだとファンが気づいたから」と、別のプロデューサーは話す。
「ハイビジョン録画機が普及してきたし、不況で若者の可処分所得も減り、ソフトは厳しい選別にさらされる。
それに耐える力のある作品を作るしかない」
■海外も伸び悩み
人口減で縮小する国内に代わって期待される海外市場も、伸び悩んでいる。代表が米国だ。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の推計によると、米国での日本アニメの市場規模(キャラクター市場を含む)は、03年の48億ドルをピークに07年には28億ドルまで減少した。
ソフト(DVD・VHS)の売り上げも02年をピークに下降基調だ。
DVD不振はネットでの違法配信が一因。日本で放映された数時間後には、ファンが字幕をつけ動画投稿サイトやファイル交換ソフトを使い配信してしまう。
そこでテレビ東京は今年1月、米国の動画サイトで人気アニメの即日配信を始めた。
キー局では初の試みだ。
現在9番組を、日本での放映から約30分後に有料会員向けに字幕付きで配信、7日後には広告付きで無料配信している。
同サイトでは今春、フジテレビ作品も配信を始めた。
テレビ東京の川崎由紀夫アニメ事業部長は「違法配信を抑制し、待たずに見たいというファンのニーズに応えた。
いずれはサイトを通じて関連商品も買えるようにし、世界中のファンから直接お金が入るビジネスモデルを確立したい」と話す。
開始から3カ月で、約1万8千人の有料会員を獲得したという。
■量より質重視へ
石油ショックによる不況時には、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」「機動戦士ガンダム」などがアニメブームを巻き起こした。
この頃の年間作品数は100本以下。
90年代のバブル不況には「エヴァ」や深夜アニメの隆盛があった。この頃は150本前後だった。
年齢層を広げ市場を開拓して成長を続けてきたアニメだが、「もうそんな余白はない」と山口専務理事。
「年間の総制作分数で、日本はすでに中国に抜かれたはず。
これからは量より質を重視し、国公立大学でアニメをじっくり教えるなど、官民が力を合わせて質の高い人材を育て、それを日本の強みとする道を考えるべきです」”
と報じています。
日本のアニメ業界は、人員の余剰、質の劣化が潮流で、日本のアニメーションや映画などコンテンツが国際的に評価が高いというのは、一部のクリエータの作品が際立っているだけで、日本のアニメ市場は、凋落傾向で、漫画、アニメの展示館は、既に、全国に数多くあり、制作・流通のファンドもあり、助成するのは理解できるが、質が劣化傾向のコンテンツ制作に助成することが賢明とは思えないのいですね。
読売新聞が「日本製「性暴力ゲーム」欧米で販売中止、人権団体が抗議活動」で、「少女を含む女性3人をレイプして妊娠や中絶をさせるという内容の日本製のパソコンゲームソフトに海外で批判が高まっている。」と、日本では児童ポルノなどの法規制が緩く、海外の人件団体から日本政府に批判を
”「抗議活動を始めた国際人権団体「イクオリティ・ナウ」(本部・ニューヨーク)は「女性や少女への暴力をテーマにした産業が日本で高収益を上げ、『ロリコン』と呼ばれる少女の児童ポルノ市場も巨大化している」との声明を発表。
「日本政府はなぜレイプを奨励するかのようなゲームの流通を止めないのか」と政府の対応にも批判を向ける。
同団体は6日、このゲームを含むレイプ、監禁などの性暴力ゲームの制作会社や販売会社、麻生首相ら日本政府の要人らに抗議文を出すように、160か国の会員3万人に呼びかけ始めた。
国内の人権団体の関係者なども、こうした活動を機に、販売会社などへ働きかけを行っている。」”
と報道されています。
質の劣化は、日本の文化政策の貧困さであり、日本アニメ現場の現実ですね。
ダイヤモンド・オンラインに、岸 博幸(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)が「経済産業省のコンテンツ行政に潜む致命的問題点」で、経済産業省の“制作より流通への過剰投資”、“既得権益にしがみつくマスメディア”と問題を単純化しているとコンテンツ政策を批判しています。
岸 博幸教授は、コンテンツ市場の問題と行政へ要請には、
第一の問題に、ネットという流通経路には、違法コピー/ダウンロードという社会的なコストとリスクが存在し、所得機会の減少という形で一方的に制作側が負わされているのが現状で、行政の側のアクションが不可欠。
第二の問題に、ユーザには無料でコンテンツを提供して広告収入で儲けるというビジネスモデルの現下で、単にネット企業にコンテンツを摂取されることへの防止するための何らかの公的な措置
と提起しております。
これらの本質的な問題から目を背けて、やれリスクマネーの導入だ人材育成だショーケースだとありきたりな政策ばかりを講じても、マスメディアやコンテンツ産業の状況は何も変わらないと論評しています。
当方にすれば、日本のコンテンツビジネスは、特に、アニメ分野は、過去の遺産で食いつないでいるに過ぎないと印象をもつています。
麻生首相は、”秋場原”を日本文化の先端と思いがあるかも知れませんが、秋場原文化は、サブカルチャーの亜流に過ぎず、亜流のサブカルチャーが日本文化のカルチャーになりえるのかどうか、当方は疑問視しています。
団塊の旧世代にとっては、秋場原は、居心地の悪い異次元の場所になってきたという思いですね。
日本のコンテンツビジネスで、注視しなければいけない一つは、3D分野でないかなーとい印象をもっています。
3Dは、過去に、何回か、話題になりましたが、技術面が追いつかず、生体への悪影響も問われ、本物になりえなかったですが、ここにきて、技術が追随してき、商業ペースになり、身近なメディアになりつつありますね。
日本が、コンテンツビジネスに注力するのであれば、まずは、3D技術開発支援であり、3Dコンテンツ制作支援であり、標準化促進でしょうね。
東映が、今夏、3D映画を公開するという噂がありますが、現場は、政府の助成など待っていないですね。
過去の栄光の遺産も大事ですが、先端コンテンツの3Dも肝要ですね。