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日本の感染拡大を心配し中国の吉川さんから届いたデルタ株治療資料

日本の感染拡大を心配し中国の吉川さんから届いたデルタ株治療資料
デルタ株感染後は高熱が多い ― 明らかになった核心的病機

2021.6.29 南⽅都市報-広東省中医院HP より

 吉川淳子さんは中国で医療文書翻訳の仕事をされています。祖国日本のことをいつも気にかけておられ、度々日中友好ネットにお便りをお寄せいただいています。コロナデルタ株感染拡大が懸念される中での東京オリンピック開催を憂慮されていました。デルタ株の感染爆発が現実となろうとしている今、中国の国務院共同予防抑制機構総合グループ広東医療チームの専門家、張忠徳( Zhang Zhongde )広東省中医院副院長のデルタ株治療資料をお送りくださいました。この資料も吉川さんが翻訳されたもので日本の関係機関に配布されるものだと思いますが、コロナ感染予防に少しでも役立てばと日中友好ネットにもお送りくださいました。次の通り、資料のPDF版を張りつけます。




張忠徳︓デルタ株感染後は⾼熱が多い ― 明らかになった核⼼的病機

2021.6.29 南⽅都市報-広東省中医院 HP より
广东省中医院 (gdhtcm.com)


 昨年、武漢の新型コロナウイルス感染症防疫の第⼀線臨床治療に⾝を投じて以来、東北、華北、⻄南と転戦し、その後また広州本⼟に戻っての治療と、国務院共同予防抑制機構総合グループ広東チーム医療チームの専⾨家、張忠徳( Zhang Zhongde )広東省中医院副院⻑の姿は、つねに新型コロナウイルス感染症防疫・治療の第⼀線にある。


張忠徳( Zhang Zhongde )広東省中医院副院⻑

 現在広州はゆっくりと感染流⾏から回復しつつあり、臨床での治療、とりわけ中医薬が関与した中⻄医結合治療は⼤きな成果を上げた。6 ⽉ 26 ⽇夜、張忠徳副院⻑(徳叔︓徳さん)はメディアのインタビューを受けて、デルタ株に感染した患者さんの 80%は発熱し、34%以上には⾼熱がみられたこと、中医の⾒地からは、患者には新しい変化と臨床所⾒があったことを明らかにした。「しかしわれわれはすでに核⼼的病機を発⾒し、中⻄医結合治療を実施後、観察された効果はとても良好です。」


   広州市第⼋⼈⺠病院で患者さんと話す徳さん


中医チームが総括して得た核⼼的病機と処⽅規律

Q︓先⽣からご覧になって、今回の広州の流⾏での患者さんの特徴にはどんなものがありますか︖

張忠徳︓今回の新型コロナウイルスデルタ株感染患者さんの特徴は、第⼀に潜伏期が短いことです。3〜7 ⽇間で発症することが多いです。第⼆には⾼齢の患者さんが多いことです。70 歳以上の患者さんの割合が多く、最⾼齢は 92 歳で、80 歳以上の⽅が⼗数⼈おられます。基礎疾患や合併症を持つ⽅の割合がかなり多いです。第三に病状の進⾏が早いことです。従来は 7〜9 ⽇ほどかかって重症になった例が多いのですが、今回の流⾏では重症となるのに 3.3 ⽇しかかからず、中には 24 時間以内に重症または直接重篤になってしまう⽅もおられます。今回の流⾏では重症、重篤の患者さんが 15%を占め、ウイルス量が多く、核酸検査で陰性になるまでに時間がかかるという特徴があります。


      徳さんと、彼が率いる岭南中医チーム

 このように、今回の流⾏では⾼齢の患者さんが多く、潜伏期が短く、ウイルス量が多く、重症化率が⾼く、核酸検査で陰性になるまでに時間がかかることから、臨床治療に対する重⼤な挑戦となっている。専⾨家たちは中医と中⻄医結合治療を堅持して、段階的成果を上げている。

Q︓広州の新型コロナウイルス感染症確定患者の現在の最新状況はどうですか︖中医薬治療はいい⽅法をみつけられましたか︖

張忠徳︓中医薬治療が軽症や中等症の患者さんの治療過程で観察された効果は喜ばしいものでした。5 ⽉ 21 ⽇から 6 ⽉ 26 ⽇まで、今回の広州の流⾏で治療した本⼟患者数は 166 名です。中医と中⻄医結合治療を⾏なった患者さんは 156 例で、93.4%を占めています。そのうち中薬のみでの治療は118 例、71.0%です。中医薬を使っていない患者さんは 10 例、6.6%で、乳幼児や使⽤したくない⽅が含まれています。

 中医薬チームは、それまでの⼀段階の臨床実践の中で、核⼼的病機と処⽅の規律を総括しており、すでに 91 例の患者さんが退院しておられます。そのうち 67 例(73.6%)の患者さんは中薬のみの治療、16 例(17.6%)の患者さんは中⻄医結合治療、8 例(8.8%、7 歳以下の乳幼児)は中薬を服⽤していません。中医と中⻄医結合治療を⾏なった患者さんは 91.2%となります。中⻄医が連携して治療した結果、1 例の重篤患者さんが ECMO から離脱、3 例の重篤患者さんが⼈⼯呼吸器から離脱、8 例の重症患者さんが中等症に、57 例の重症傾向のある中等症の患者さんの重症化を防ぎ、新型コロナウイルスデルタ変異株の防疫・治療に貴重な経験を残しました。

Q︓従来の症例と⽐べて、今回の広州の流⾏は、中医の証候の上ではどんな特徴がありましたか︖

張忠徳︓南⽅の夏の気候は酷暑、潮湿で、患者さんは汗が多く、気が液とともに脱してしまいます。特に重症の患者さんや⾼熱の患者さんでは、極度な倦怠感、⾷欲不振、呼吸が弱く、⾆苔は⻩厚膩という所⾒がみられます。今回の広州の患者さんは、今までの武漢、河北、雲南、東北などの症例に⽐べて、⾼熱、悪寒、頭や⾝体の痛み、筋⾁痛、喀痰、咽頭痛、のどの渇き、倦怠感、腹部膨満感、⾷欲不振などの症状が主で、⾆は⾚く、⾆苔が膩である⽐率が明確に増えていました。発熱者の⽐率は 80%を超えており、そのうち⾼熱の者(体温が 39℃を超える)の⽐率は 34.5%にのぼり、これまでの新型コロナウイルス感染症局地的流⾏のうち最も⾼くなっています。

 このため、私たちは今回の流⾏は、なお中医の「疫病」の範疇に属しており、暑熱と湿邪が膠着し三焦にびまんしており、暑温の邪の転変が速いため、気を消耗し、陰を損なうものであると判断しました。核⼼的な病機は、「暑湿化熱、疫毒侵肺、元気⼤虚」です。

Q︓患者さんの病状に変化があったということは、中医治療の⽅法は調整されたのでしょうか︖

張忠徳︓治療法総体としては、引き続き「清暑化湿、宣肺解毒、通腑泄熱」を中⼼にしていますが、新しい治療⽅案として「早期扶正、全過程扶正」を加えました。

 無症状感染者、軽症、中等症の患者さんには中薬のみの治療⾏ない、清肺排毒湯(注1)、化湿敗毒⽅(注2)の基礎の上に加減しています。中等症で⾼熱、あるいは重症または重症化傾向があり、証が暑湿、湿温閉鬱に属している患者さんには、⿇杏薏⽢湯(注3)、藿朴夏苓湯(注4)、呉⼜可の三消飲(注5)を⽤い、清暑熱、解表、祛湿、透達膜原をはかります。

 重症の患者さんには通腑泄熱解暑の⽅法を採り、早期扶正、全過程扶正を⾏ないます。総体的には私たちのもともとの治療の枠組みで臨床治療を⾏なっているといえますが、具体的状況に応じて微調整をしているわけです。

 このほか、患者さんに重症化する兆しがあれば、中医薬治療では、清熱解暑、清利湿熱や、弁証にもとづく処⽅を基礎とした上で、さらに安宮⽜⻩丸を⽤いて気分の邪熱を清し、羚⽺⾓粉を⽤いて清透熱邪をはかるなど、早期に病邪を断ち切る薬物を使って拡⼤を防ぎ、邪気の逆伝⼼包や、熱⼊営⾎を防⽌します。体温が 38.5℃を超えた場合は、中薬煎じ薬は 1 ⽇ 2 剤を 4 回に分け、6 時間おきに服⽤します。安宮⽜⻩丸は 1 ⽇ 2 丸、1 回あたり半丸を 1 ⽇ 4 回、煎じ薬と煎じ薬の間に服⽤してもらいます。体温が 38.5℃以下の場合は、安宮⽜⻩丸は 1 ⽇ 1 丸、1 回あたり半丸を 1 ⽇ 2 回服⽤します。われわれの中医薬治療はこれまでも、早期に病邪を断ち切り、流れを逆転して病状の進⾏を抑制することに⼒を発揮してきました。

 免疫⼒を向上させるという⾯では、中医薬も、通腑泄熱、腸を整えて肺を治療する、肺と腸を同時に治療するなどの⽅法で患者さんの全⾝状態を改善し、⽣命兆候を維持して免疫機能回復のための時間をかせぎます。


訳者注
1 清肺排毒湯︓⿇⻩ 9g、炙⽢草 6g、杏仁 9g、⽣⽯膏 15〜30g(先煎)、桂枝 9g、沢瀉 9g、猪苓 9g、⽩朮 9g、茯苓
15g、柴胡 16g、⻩芩 6g、姜半夏 9g、⽣姜 9g、紫菀 9g、冬花 9g、射⼲ 9g、細⾟ 6g、⼭薬 12g、枳実 6g、陳⽪ 6g、
藿⾹ 9g(『新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン』第 8 版)
2 化湿敗毒⽅︓⽣⿇⻩ 6g、杏仁 9g、⽣⽯膏 15g、⽢草3g、藿⾹ 10g(後下)、厚朴 10g、蒼朮 15g、草果 10g、法半
夏 9g、茯苓 15g、⽣⼤⻩ 5g(後下)、⽣⻩耆 10g、葶藶⼦ 10g、⾚芍 10g(『新型コロナウイルス肺炎診療ガイドラ
イン』第 8 版)
3 ⿇杏薏⽢湯︓⿇⻩ 6g、杏仁 6g、炙⽢草 3g、薏苡仁 12g(『⾦匱要略』。薬剤量は謝鳴等編『⽅剤学』第 2 版 ⼈⺠衛
⽣出版社より)
4 藿朴夏苓湯︓藿⾹ 6g、半夏 4.5g、⾚茯苓 9g、杏仁 9g、薏苡仁 12g、⽩⾖蔻3g、通草3g、豬苓 9g、 淡⾖豉 9g、
澤瀉 4.5g、厚朴 3g(『感证辑要』。薬剤量は謝鳴等編『⽅剤学』第 2 版 ⼈⺠衛⽣出版社より)
5 三消飲︓檳榔、草果、厚朴、白芍、甘草、知母、黄芩、大黄、葛根、羌活、柴胡(『温疫論』)


⼼理的な慰めや激励も⼀服の良薬

Q︓今回の流⾏では、重症、重篤の患者さんの⽐率が⾼いのですが、彼らの精神状態はどうでしょうか︖どんな措置をとられていますか︖

張忠徳︓重症、重篤の患者さんには、ヒューマンケアをいっそう⼿厚くしています。患者さんが⼼にかけておられる問題や考え⽅について、より真剣に⽿を傾ける必要があります。またいいタイミングで、具体的な例をあげて患者さんを元気づけるようにしています。重症の患者さんにはよく、「あの患者さん、もうベッドから降りて歩いておられるでしょう︖昨⽇はあなたより重かったのに。だから希望を持ってね。」と⾔っています。

 臨床治療の仕事は患者さんに希望を与え、焦りを取り除くことが必要です。そのため中⻄医結合であれ、⻄洋医学の治療であれ、看護チームの貢献は⾮常に⼤きいものがあります。治療が3割、看護が7割と⾔えるくらいですから、われわれの看護チームは本当に優秀で、⼤切にしないといけません。


      重症の患者さんを管理する中医薬専⾨家


Q︓具体的な治療の中で、印象に残っている患者さんはありますか︖

張忠徳︓はい。確定診断後に異常なくらい焦ってしまわれた 40 代の患者さんがいます。発熱が続いていたので煩躁がひどくなっていた可能性もあるのですが、⾃分は回復できないのではないか、ととても⼼配されていました。臨床治療チームは毎⽇回診で病室に⼊るたびに、その患者さんとよくコミュニケーションを取るようにしました。1 ⽇3回、朝昼晩各1回です。3⽇めには体温が下がりはじめ、⾷欲も出て、患者さんの気分もよくなってきました。ヒューマンケアの⾯では、広州はとてもよくやって
います。

 もう⼀つ典型的な例ですが、脳卒中後の⾼齢の患者さんで、病気になってから精神状態が良くなく、⼈と話をしたがらず、治療にも協⼒的でないばかりが、薬も飲まれません。看護師はご⽼⼈がヨーグルトが好きで毎⽇飲んでおられるのに気づき、ヨーグルトのカップをとっておいて、中薬をヨーグルトカップに⼊れてみました。この⽅法にしてから、患者さんは薬物治療を受け⼊れはじめました。⼼理的な慰めとヒューマンケアの⾯で、われわれはとてもよくやってきました。こういうケアこそが⼀服の良薬になる時があるからです。

Q︓姉妹省や市の新型コロナ感染症治療の応援に⾏かれるたび、SARS に感染してからの経験 (注6) を患者さんに語っておられましたが、ホームグラウンドの広州でも同じですか︖

張忠徳︓よその⼟地で治療にあたった時には⾃分の経験を話しました。ただ広州に戻ったら、「徳さん」の知名度はとても⾼いことがわかりました。「徳さんの出してくれた中薬なら必ず飲むよ」と⾔ってくれる患者さんが多いです。知っている患者さんはほかの患者さんに「この先⽣が徳さんだよ」と紹介してくれます。広州の患者さんは中医薬を信頼し、われわれ中医薬チームも信頼してくれています。

(訳者注 6︓張忠徳⽒は 2003 年広東省で SARS が流⾏した際、患者さんへの挿管時に⾃⾝も感染し、ICU での中⻄医結合治療により回復した。⼀緒に感染した看護師⻑は亡くなった。)

Q︓すでに退院して、14 ⽇間の観察期間中の患者さんの中で、中医薬による介⼊が必要な⽅はおられますか︖

張忠徳︓回復されたすべての患者さんに対しては、決められた⽅案にしたがってフォローアップと観察を実施しています。例えば汗が出るとか、⾷欲がない、脾虚で倦怠感などの具体的な症状や、肺の病巣がまだ完全に吸収されていないなどという場合には、中医薬による介⼊を⾏います。今⽇も 3 ⼈の市⺠から「中薬がなくなったので、処⽅してもらえませんか︖中医薬での調整を続けたいです。」というメッセージをいただいています。

オリジナル記事︓南⽅都市報
インタビュー︓南都記者 王道斌
通信員︓粤衛信
管理編集︓盧悦明
校閲︓何明坤
責任編集︓宋莉萍
⽇本語訳︓吉川淳⼦(南京中医薬⼤学)

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「米中新冷戦と日本の生き方―一帯一路構想・新疆ウイグル問題を中心に」

「米中新冷戦と日本の生き方―
一帯一路構想・新疆ウイグル問題を中心に」
国際アジア共同体学会国際シンポジウム


 表題のシンポジウムが、来たる7/30(金)13:30~17:50に衆議院第一議員会館大会議場にて、鳩山元首相や中国の孔鉉佑特命全権大使をお迎えし開催されます。ZOOM参加も可能です。締切定員があるかもしれませんが、私は一昨日ZOOM参加の申込を済ませました。念の為、下記の通り、申込URLと案内チラシのコピーを貼り付けました。是非、ご確認ください。

 いま日本では、与野党そして右から左リベラルまで中国批判のオンパレードです。かつて「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」のスローガンのもと日中戦争(中国侵略戦争)が推し進められた時代を彷彿とさせます。批判されるべきは中国ではなく、米中新冷戦の戦争挑発を進めるアメリカの方だと私は思います。いま私たち市民は再び「大本営発表」のもと思考停止に陥っては決してならないと思います。“「米中新冷戦と日本の生き方―一帯一路構想・新疆ウイグル問題を中心に」 国際アジア共同体学会国際シンポジウム”に熱い視線を注ぎたいと思います。 (伊関)


          記

申込URL: https://forms.gle/rrrtDqF4nH8DCjn8A



国際アジア共同体学会ホームページURL
国際アジア共同体学会 | International Academic Society for Asian Community (ISAC)

以上


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山橋宏和さん「作文コンクール」で受賞

山橋宏和さん「作文コンクール」で受賞

 中国駐大阪総領事館は、中国共産党創立100周年に際し、4月から5月末にかけて「私から見る中国」をテーマとした作文コンクールを開催しました.
 去る7月17日、その表彰式がオンラインで開かれ、大阪城狛犬会の山橋宏和さんが一等賞を受賞しました。全部で8人の方が受賞されましたが、どれも興味深い内容と思います。このブログでは山橋さんの作品のみを掲載しますが、中国駐大阪総領事館のホームページでほかの作品もご覧になれます。毎日一部づつ入賞作品を公開しています。23日現在3部公開しています。

公式サイト:http://osaka.china-consulate.org/jpn/
Twitter:https://twitter.com/ChnConsul_osaka
Facebook:https://www.facebook.com/China.consulate.osaka

中国駐大阪総領事館では最近TikTokもはじめたそうです。
TikTok:https://t.co/HVeinomvag?amp=1
日中友好、中国についての正しい理解にお役立てください。

山橋さんの入賞作文を中国領事館のホームページから次の通りコピーしました。ご覧ください。



『私から見る中国』作文コンクール入賞作品抜粋(その二)
          2021/07/22

一等賞(1名)
          中国の友へ
                   山橋宏和

 1978年8月12日、日中平和友好条約が締結されました。1972年に日中国交回復、ピンポン外交、パンダの来日と、1970年代は日中友好ブームに包まれていた時代でした。一方でベトナム戦争は激しさを増し、ベトナム人民の側に立つ中国の政治姿勢は平和を願う世界中の人々から支持されていました。私が高校3年生の時、倫理社会という科目の提出論文では毛沢東をテーマにしました。私もそのころから中国が大好きでした。私の25歳の誕生日に日中平和友好条約が結ばれた時には、運命的なものを感じました。

 私の日中友好人生が始まったのは中国帰還者連絡会の方の話をきいてからです。

 1976年9月9日、毛沢東主席が逝去されました。私が日中友好運動にかかわり始めたころです。9月18日に柳条湖事件を記念する集会を準備していましたが、毛主席逝去の報を聞いて急きょ、その集会を毛沢東主席追悼集会に切り替えました。京都大学の時計台がある建物の階段教室、立錐の地もない超満員の会場。張り詰めた空気。

 メインの講演は中国帰還者連絡会の塚越正夫さんの話でした。「自分は中国の何の罪もない人たちを何百人も殺した鬼です。」そうした自分たちが撫順戦犯管理所で受けた人道的な扱い、家族を日本軍に殺された青年が、自分たちの世話をしてくれながら戦犯たちに人間の魂を呼び覚ましてくれた数々のエピソード、死刑になって当然の自分たちが裁判の判決で、「この者達も悔いている、もし彼らを日本へ返せば、きっと日中友好のために働いてくれるだろう」と許してもらったこと。「今、自分が処刑されずに生きて帰してもらい、みなさんの前で話ができるのは、毛沢東思想のおかげです」という叫びにも似た言葉は、今も私の脳裏に刻まれています。日本軍国主義が八億中国人民と毛沢東思想によって完膚なきまでに打倒されたのだという現実が、目の前にありました。

 「一握りの軍国主義者と広範な日本人民は区別しなければならない」という中国共産党の方針は、ただ単に日本の戦犯が命を助けてもらったという話ではなく、世界平和を築いていく上での大方向を示しています。

 今中国は「多国間主義」ということを言っています。中国の主張は、大きな国も小さな国も、強い国も弱い国も、すべて対等で平等で、お互いに助け合い協力し合って、みんなで人類の幸せを実現しようということです。

 私のまわりでは、自分達の価値観に合わない国に対しては「制裁しろ」という声が上がります。最近ではたとえばミャンマーに対して。しかし直近でも、イラクにしろリビアにしろ「制裁」は「征伐」へとエスカレートしました。選挙で選ばれた大統領が、米軍によって「制裁」され、捕らえられ、殺されました。そうした国ではいまだに無政府状態が続き、人民は塗炭の苦しみの中にあります。

 中国は歴史上、他国による「制裁」が侵略の口実であることを知り尽くしています。問題の解決は、平和的な話し合いによる解決しかありません。周囲にできることは、当事者が話し合いのテーブルにつくよう促すことでしょう。中国はその立場を堅持しています。

 習近平さんは「一帯一路」「人類運命共同体」「多国間主義」「中国の夢」ということを言っておられます。私はこの構想に大賛成です。

 中国にしろ日本にしろ、千年二千年という長い歴史を持つ国は、統一国家に至るまでには必ず戦争に明け暮れた時代を経験しています。北京と天津が、東京と大阪が、何万という軍隊をくりだして殺し合いをしていた時代があります。なぜそういう時代が終わり統一国家へと進んだのでしょう。それは、文明の発展の中で、共通のインフラが形成されてきたからです。今の時代に東京と大阪が戦争をするということは右手で左手を打つのと同じです。中国にしろ日本にしろ国内で戦争などできるはずがありません。これは、「世界」に応用することができます。「一帯一路」は、「多国間主義」の原則のもと「人類共通のインフラ」を作る事業だと思います。この大事業は、世界平和を実現する事業でもあります。「国家は独立を求め、民族は解放を求め、人民は革命を求める」、そして今、その上にもう一つ、新しいフレイズが加わりました。「世界は人類運命共同体を求める」です。

 「中国の夢」という言葉を聞くと、ある人は「中華思想の再来だ。朝貢するのは嫌だ。」と言います。いまだに「大東亜共栄圏」の夢を追っている人にはそのように映るのでしょうか?しかし私には、「中国の夢」は「日本の夢」でもあると思います。「世界中の国と人々の夢」でもあります。すべての国と人々が、自分達で自分達の運命を決めることができる権利を享受し、有無相通じ、平等、平和、繁栄の世界を共に築くこと、相互に意見の違いを認め合い、話し合いで問題解決すること。そんな社会の実現は、「私の夢」でもあります。

 日本でもコロナが終わったら40年ぶりに中国を訪問したいと思っています。
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デルタ株が蔓延しつつある東京でのオリンピック開催に憂慮

デルタ株が蔓延しつつある東京での
オリンピック開催に憂慮


中国から届いた吉川さんのお便りをご紹介します。

郁子さん、お母さん、調子はいかがですか?
ワクチン接種されましたか?
うちの母は先月1回目接種して、数日間調子が悪かったそうです。
こちらでは張さんも私も2回目の接種をすませて元気です。

5月の伊関さんのメッセージうれしかったです。

さて、2021年5月11日付で中国国務院 新型コロナウイルス感染症対策共同予防抑制機構 総合グループから発表された
『新型コロナウイルス感染症防疫方案(第8版)』の日本語版をお送りします。

中国では5-6月広州でデルタ株の局地的流行があり、感染性が高いことから、
中国工程院院士鐘南山先生は、濃厚接触者の定義を変更する必要があるのではないか、と言われています。
中国専門家、“14秒で感染”のデルタ変異株に「密接接触者の基準を強化せねば」(WoW!Korea) - Yahoo!ニュース

そのデルタ株が蔓延しつつある東京でオリンピック開催とは、人命軽視も甚だしいものがあります。

中国ではこの『防疫方案』にあるように、感染対策はかなり厳しく全面的で、
住民も主体的に参加して「ゼロコロナ」をかなりの程度で実現しています。
死亡者数は2020年6月以降では、今年1月と2月に各1人(石家荘での流行)だけで食い止められています。

中国に入国するには搭乗2日前以内のPCR検査および血清特異性IgM抗体検査の陰性証明が必要ですが、
それでも入国検査で毎日10〜20名あまりのPCR陽性者が出ています。
たまに偽造の陰性証明所持者もあるようです。
陽性者が多い国の便については以降の就航が即刻停止になります。

つまりオリンピック関係入国者は、陰性証明所持者であってもウイルスの持ち込みが相当あると思われます。


また、中国の市中感染では、隔離期間終了後の入国者からの感染や、
たまに港湾などの輸入貨物取扱者からの感染が報じられています。

入国者の14日間(地域によっては21日間、28日間)の隔離が厳しく実行されている中国ですが、
中には潜伏期が大変長い人がいて、いったん陰性になって隔離解除後、街に出て、お店の人などに感染させた例が報告されています。

中国では感染があれば記者会見が毎日あるし、誰から誰に感染したかもウイルスゲノム検査で明らかになれば公開されます。
日本のように感染者差別があまりなく、今回の広州の早期感染者への声援が集まったり、
この方案の68ページに、

「在職党員、古参党員、ボランティア、住民の中心的人物、住宅の棟代表、横丁の世話役など、防疫を担う各層住民の自主的な力を発揮して、組織的動員の態勢を固め、力を合わせてコミュニティ(村)の防疫の総合力を強化する。」


とあるように、住民総出で住宅の出入りチェック、PCR検査への動員、消毒、封鎖中の食料、生活物品、いつも飲んでいる薬の調達、心理ケア、などをになっています。

7月1日が中国共産党100周年にあたり、さまざまな行事が行われました。
中国共産党創設メンバーの多くが、当時日本に留学中にマルクスレーニン主義を学んだわけですが、
同じように学んだはずの日本人はこの100年どうしていたんだろう、と考えてしまいます。

式典で習近平氏は
「中国人民はこれまで他国の人民を虐め、抑圧し、奴隷化したことはない。過去になく、現在もなく、将来においてもあり得ない。」
と言われましたが、
http://j.people.com.cn/n3/2021/0701/c94474-9867504.html

たしかにその通りなんですね。
いろいろ考えさせられました。

(略)

今翻訳している、中国広州の5-6月の流行について、国務院共同予防抑制機構総合グループの専門家で広東省中医院の張忠徳( Zhang Zhongde )副院長のインタビューでは、

「5月21日から6月26日まで、今回の広州の流行で治療した本土患者数は166名です。
今回の新型コロナウイルスデルタ株感染患者さんの特徴は、
第一に潜伏期が短いことです。3~7日間で発症することが多いです。
第二には高齢の患者さんが多いことです。70歳以上の患者さんの割合が多く、最高齢は92歳で、80歳以上の方が十数人おられます。基礎疾患や合併症を持つ方の割合がかなり多いです。
第三に病状の進行が早いことです。従来は7~9日ほどかかって重症になった例が多いのですが、今回の流行では重症となるのに3.3日しかかからず、中には24時間以内に重症、または直接重篤になってしまう方もおられます。今回の流行では重症、重篤の患者さんが15%を占め、ウイルス量が多く、核酸検査で陰性になるまでに時間がかかるという特徴があります。」
とのことです。

中国では陽性がわかった人は全員入院治療を受けられますが、
日本で本格的に流行したら、ベッドや人工呼吸器がすぐ底をつきそうで心配しています。
すれちがいや同じ空間にいただけでも感染するということですので、十分気を付けてください。
この翻訳はできしだいお送りしますね。

生きにくい時代ですが、何とか道を探して、世界の人民が助け合って、難局を乗り越えていくしかありません。
一緒にがんばりましょう!

副反応が軽くすんで、無事免疫がつくようお祈りしています。

           吉川淳子


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欧米の民主自由に幻滅し次々と帰国する中国留学生たち!

欧米の民主自由に幻滅し
    次々と帰国する中国留学生たち!

「中国式統治」を支持する若者たちのリアル クローズアップ現代✙(NHKテレビ7/1放送)」をみて知った驚きの中国の今!

 欧米に憧れて留学した中国の若者が次々と帰国している。2006年に31%だった帰国率は2019年には82%にのぼる。7/1放送のNHKテレビ番組「クローズアップ現代✙:『中国式統治』を支持する若者たちのリアル~中国共産党創立100年~」を見て知った驚きの事実だ。

 インタビューにこたえる張軼棟(チョウ イットウ)さん(21歳)もその一人だ。「アメリカの自由と民主主義を羨ましく感じていました」と張さんはアメリカ留学の動機を語る。ところがコロナ禍で状況は一変。トランプ大統領はコロナ対策よりも個人や経済の自由を優先。結局アメリカは有効なコロナ対策を打てずじまい。これに対し中国政府は強力な規制でコロナ克服に成功。張さんたち留学生も中国から送られてきたマスクを配りコロナ対策をとった。張さんは「コロナ対策を見て中国政府の指導力が唯一無二で最強」「アメリカは想像していたほどよくありませんでした」と今度は帰国の理由を語り始めた。

 「中国の言論統制をどう思いますか?」との問いに張さんは次のように答えた。「普通の人には大きな影響はないと思います」「中国では制限が多く民主的でない生活を強いられていると言われますがそんなことはありません」「今の生活に満足しています」「法が許す範囲で何だってできます」と。

 また、張さんたち留学生は学生団体を立ち上げて貧困をなくすという取り組みを始めた。カリフォルニア大学の友人は「中国の制度や経済状況が人々に利益をもたらしていることは明らかでしょう」と語り、ニューヨーク大学卒業の女性は「海外に長くいるほど祖国の良さが分かり誇りに思う気持ちが強くなります」と語った。
 
 張さんは、バイデン大統領の「中国は専制だ」という発言に反発し帰国を決意した動機をさらに詳しく語った。「アメリカには失望しました」「彼らは永遠に世界を主導できると思い込んでいますが時代は変わりました」「中国が世界中から尊敬される強い国になれるよう私たち若者は努力します」と。

 取材をしたルポライターの安田峰俊氏は番組で次のように述べた。「中国が監視社会だと聞くと、あらゆる行動ができないガチガチの社会だと想像しちゃいますが、政治以外は本当に自由です」「コロナ克服で住民の政府への信頼は上がっています」「信頼する政府に情報を握られても安心で便利になって良いと感じています」と。

 しかし、どうして欧米の民主自由に憧れて留学までした若者たちが幻滅して帰国していくのでしょうか。「Time is money:時は金なり」「金のないのは首が無いのと一緒」等の処世訓。資本主義社会に生きる私たち日本人なら一度ならず聞いたことがある文句です。でも中国の若者には馴染みのない文句なのでしょう。日本も含んで欧米社会では金が無ければ首が無いのと同じで民主も自由もへったくれも無いのです。貧乏学生には民主も自由も高嶺の花だったのでしょう。あれほど輝いていた欧米の民主自由はお金があってはじめて享受できるものだったことを知った留学生の幻滅はいかばかりだったでしょう。むしろ中国へ帰ったほうが成功のチャンスがあると気付いた留学生たち。中国の若者達の帰国ラッシュの真因はこの辺りにあるのではないでしょうか。 (伊関)

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書籍紹介ー「中国の的確な貧困脱却達成の物語  精準脱貧」

書籍紹介
中国の的確な貧困脱却達成の物語 精準脱貧」

 現在日本では貧困が深刻化しています。放置すれば日本経済にダメージを与え国の衰退につながりかねません。政府や自治体は貧困問題解決のため取り組みを進めていますが貧困化に歯止めがかからないのが現状です。そこで、中国での貧困脱却達成の経験や手法は大いに参考になると思います。本書に次のような一節がありました。「これまでの1回限りの魚(食料)を配る貧困支援から、持続可能な魚の釣り方を教える貧困支援への転換を推進しています。」というものです。

中国では、この8年で現行貧困基準において9899万人が貧困を脱却しました。改革開放以来40年で見ると現行貧困基準で中国では農村の7億7千万人が貧困を脱却しました。世界銀行の国際貧困基準では、この中国の貧困削減数はこの時期の全世界の貧困削減数の70%以上を占めます。これは国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の貧困削減目標を10年前倒しで実現したことになり国際的に称賛されています。中国の貧困脱却の事実は歴史的な偉業であり人類の進歩的事業への多大な貢献だと思います。

本書には日本の貧困問題解決の参考になるような数々のエピソードが満載です。是非、「精準脱貧」をご一読ください。 (伊関)


本書は各有名書店で購入できます。
「中国の的確な貧困脱却達成の物語 精準脱貧」
編者:人民日報国際部・日中交流研究所
日本僑報社
価格:1,980円(本体:1,800円+税)


本書添付の動画をご紹介します。以下のURLをクリックしてご覧ください。

動画《特別収録》 イギリス青年が見た中国の貧困脱却難関攻略戦

イギリス青年Stuart Wiggin氏は、2007年オックスフォード大学を卒業。いくつもの貧困地区を訪れ貧困脱却を目の当たりにする。

① 貧困から脱出した于営村の変化
  https://peoplesdaily.pdnews.cn/trending/small-village-s-transformation-after-getting-rid-of-poverty-188654.html ☚クリックしてご覧ください。

② 断崖村からの貧困世帯の移住
  https://peoplesdaily.pdnews.cn/trending/poor-households-bid-farewell-to-cliff-village-embrace-new-life-190769.html ☚クリックしてご覧ください。

③ 新春村の洞窟バスケット場
 https://peoplesdaily.pdnews.cn/trending/basketball-in-a-cave-189170.html☚クリックしてご覧ください。

 トングリ砂漠での緑化活動
  https://peoplesdaily.pdnews.cn/trending/desertification-prevention-and-control-turns-desert-green-190776.html ☚クリックしてご覧ください。


動画《特別収録》 人民日報記者の貧困扶助の物語
呂暁勲氏の活躍
https://peoplesdaily.pdnews.cn/trending/video-a-chinese-journalist-s-poverty-alleviation-story-206952.html ☚クリックしてご覧ください。

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