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洋蘭の女王カトレアのデータベース(主に大輪系交配種)&育種交配・実生の魅力をご紹介

Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’

2016年10月23日 19時26分47秒 | ■赤・濃赤紫系
※2016年10月23日内容更新(新画像追加等)

※2016年10月下旬我が家にて開花(花径約15cm、1輪咲き。実際の花色はもっと濃く鮮やかです。)
■Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’AM/AOS, BM/JOGA
リンコレリオカトレヤ メモリア・ラルフ・プラセンティア‘トレアドール’
(C. Memoria Albert Heinecke x Rlc. Norman's Bay (01/01/1973))

■花色=濃赤紫系
■花径=花径15~17cmくらい(展開良い)
■花型=極整型
■弁質=極厚弁
■花着き=やや悪い
■着花輪数=1花茎に2~3輪くらい。子房部は短め
■花期=主に夏~秋咲き。不定期咲きの傾向あり
■株姿=サイズ普通。バルブ細く長い
■香り=濃厚な良い香り

旧属名表記 Blc. Memoria Ralph Placentia、Rsc. Memoria Ralph Placentia。
※以下、箇条書きにて。
・米国スチュワート・オーキッズにより創出された赤花最高品種の一つ。
・個人的に本種のライバル品種だと思っている Rlc. Owen Holmes‘Mendenhall’(オーウェン・ホルムズ‘メンデンホール’)と比較して花色は本種の方が紫味が強く、赤花としてはわずかに Rlc. Owen Holmes‘Mendenhall’に分があるように思われますが、花径では本種が勝ります。(下記、入賞データ参照)
・「Toreador(トレアドール)」とは「(騎馬)闘牛士」の意。
・スチュワート・オーキッズでは本種と Rlc. Goldenzelle(ゴールデンゼル)の交配から Rlc. Cecilia Lam(セシリア・ラム)という品種を生み出し、濃いオレンジ等の花色を持った素晴らしい個体が選抜されており、今後がとても楽しみです。
・本種の親 C. Memoria Albert Heinecke(メモリア・アルバード・ハイネック)は 黄花とグリーン系花の銘親 Rlc. Fortune(フォーチュン) (=C. Memoria Albert Heinecke x Rlc. Xanthette)の親で、その祖先には原種の C. dowiana(ドウイアナ)が多重に交配されており構成比率は68.75%にも及びますので栽培難易度の高さが想像できます。
・本種の親 Rlc. Norman's Bay(ノーマンズ・ベイ)はアメリカではかつて花径が30cm近くにまでなったという話のある‘Low(ロウ)’FCC/RHS という個体のある品種で本種と同じ Rlc. Norman's Bay の子供には赤花の銘親として有名な Rlc. Oconee(オコニー)もあり、本種 Rlc. Memoria Ralph Placentia との比較では交配親としての実績では圧倒的に Rlc. Oconee に分がありますが、親の Rlc. Norman's Bay の花容や花径の大きさ等を継承している度合いでは本種に軍配が上がると思います。
・Rlc. Memoria Ralph Placentia における原種 C. dowiana の構成比率は53.125%にも及びます。ちなみに Rlc. Oconee では43.75%ですから、本種がいかに C. dowiana の血の濃い赤花かがおわかり頂けるかと思います。そして、その要素はやはり栽培難易度の高さにも反映されており、本種が赤花としてこれほど素晴らしい美花であるにも関わらず、日本国内ではあまり普及していない原因がこの辺りにもあると思います。
<入賞データ>
・AM/AOS = 80点、NS=155mm、2輪咲き、1979年
・AM/AOS = 87点、NS=176mm、2輪咲き、1990年


<私と Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’>
 私とこの花 Rlc. Memoria Ralph Placentia との“物語”は、1997年頃から始まったもので、出逢いは1994年の「主婦の友生活シリーズ 失敗しない洋ラン入門」という本の中でした。
 その本に載っていた Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’は真っ赤な花色にリップの黄目が印象的で親の Rlc. Norman's Bay の花容を継承した見事なものでした。
 その後、国際園芸さんのカタログでは Rlc. Owen Holmes‘Mendenhall’と見開きのページに掲載されていて、当時、赤花に心を奪われ始めていた私にとって、そのアピールが非常に強烈であったことは言うまでもありません。
・Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’AM/AOS(80p) '79, BM/JOGA(75p) '91
・Rlc. Owen Holmes‘Mendenhall’AM/AOS(84p) '91, SM/JOGA(80p) '93
 この記載が私の中では、まるで互いの美しさを競い合い、火花を散らす者同士のようでエキサイティングなものでした。
 その数年後、佐伯農園洋蘭部さんより初めて入手した Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’の株は10バルブ以上の大きめの株だったのですが頼りない印象のバルブは、太さが直径 15mm ほどしかなく、如何にも手ごわく気難しそうな雰囲気を醸し出していました。
 そして予想通り、我が家の特等席に置いて2年経っても開花せず“ひょろひょろ”のバルブばかりが増え続けました。
 現在よりもさらに、ド素人だった私は「ひょろひょろの原因がコンポストにあるのではないか?」と判断し、その後、水苔からミックス・コンポストやクリプトモスに植え替えるという初心者ならではの最悪のパターンにはまってしまいました(汗)。そしてその後さらに数年を費やしても開花させることが出来ず、我が家の環境と自身の栽培技術では手に負えないと判断して、断腸の思いで手放しました。
 ちなみに、今思えばメリクロンの質の加減でその株は極端に開花しにくい株だったのではないかと思っています。


< Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’との再会>
 上の画像の株は2006年の秋、神戸蘭友会のバス旅行の際、滋賀県の飛喜多洋蘭さんで入手した株なのですが入手時、飛喜多洋蘭さんには本種のこの個体の開花サイズの株が8株あり、内、花の咲いた形跡のあるものが2株で1つがシース付き。しかも、シースの中には小さな蕾が確認出来ました。ただし、そのシース付きの株は、植え替えて間が無かったようで明らかに作落ちしていて少し躊躇したのですが“蕾の誘惑”に負けました。(苦笑)
 そして自宅に持ち帰って間もなく開花には至ったのですが、植え替えと環境の急変のせいで、やはり、とても貧弱な花で残念ながら御披露目できる状態のものではありませんでした。
 その後の生育では3つの新芽を発生させましたが、1つ目は花芽が着かず、2つ目は病気で枯死してしまいました。
 そしてようやく3つ目の新芽でシースを拝むことが出来、開花に至ったわけです。
 そのような末の開花ですから、その感激たるや筆舌に尽くせないものがあるわけですが、自分がカトレヤを栽培し、実生交配に携わっている理由や、このカトレヤという花の魅力を改めて認識出来た良い機会でした。この素晴らしい花との「出逢い」と「再会」に感謝!


< Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’の交配親としての可能性について>
 まず、本種の栽培難易度の高さから、営利用品種の改良に重用されることは考えにくいのですが、貢献する方向性としては、「花色の濃さ」「ペタルの展開の良さ」等の特長と、主に夏に開花する性質を継承させる意味で C. Irene Finney(アイリーン・フィニー)系との交配も試してみる価値はあると思います。
 そして、趣味家としてはやはり、赤花やオレンジ系花の創出に活用したい欲求にかられる品種だと思います。本種における53.125%にも及ぶ C. dowiana の血の濃さは赤花中でも特筆すべきもので、より彩度の高い濃い赤花の創出を目指すのなら、原種 Soph. coccinea(ソフロニテス コクシネア)や C. labiata(ラビアタ)の濃色系花の血の濃い品種との交配を試み、よりまったりとした朱赤味の強い赤花の創出には C. dowiana の血の濃い(60%以上が理想?)セミイエロー系花との交配が、そして、オレンジ系花の創出には、オレンジ系花やイエローコンカラー系花との交配が面白いと思います。
 その他にも交配親としての本種のチャームポイントは、赤花に多いペタルの展開の悪さを克服している点。花期が夏~秋であることによって、冬咲き品種との交配によって花期を秋頃に変えられる可能性がある点(無温室栽培者には嬉しい)等があげられると思います。
 ただし、個人的な観察では、花粉に奇形や萎縮したものが多いことや種子が発芽しにくい傾向があるのではないかとも思っていますので、なかなか手強そうですが、それでもチャレンジしてみたくなる魅力的な品種であることに変わりはありません。


◎Rlc. Memoria Ralph Placentia の親品種の交配
・C. Memoria Albert Heinecke = C. Grandee x C. S. J. Bracey (01/01/1949)
・Rlc. Norman's Bay = Rlc. Hartland x C. Ishtar (01/01/1946)



●C. Memoria Albert Heinecke についての記事は、こちらをクリック!
※Rlc. Memoria Ralph Placentia の親品種(画像無し)



※Rlc. Memoria Ralph Placentia の親品種(※写真からのスキャンのため、画質が悪くてスミマセン!)
■Rlc. Norman's Bay‘Low’FCC/RHS, AM/JOS
リンコレリオカトレヤ ノーマンズ・ベイ‘ロウ’
(Rlc. Hartland x C. Ishtar (01/01/1946))
●Rlc. Norman's Bay についての記事は、こちらをクリック!



<Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’別個体(一例)>
特に無し


<Rlc. Memoria Ralph Placentia を交配親とした品種登録実績一覧>
・Rlc. Cecilia Lam (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Goldenzelle (31/10/1994))
・Rlc. Donald's Passion (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Black Mesa (09/11/2000))
・Rlc. Eagle Island (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Oconee (01/01/1987))
・Rlc. Final Rush (Rlc. Memoria Ralph Placentia x C. aclandiae (22/09/1994))
・Rlc. Mai Hoa Dream (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Sanyung Ruby (09/02/2015))
・Rlc. Memoria Don Herman (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Royal Reason (09/08/1999))
・Rlc. Memoria Maria Adelia (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Chia Lin (22/09/2016))
・Rlc. Nanna Tipping (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Memoria Crispin Rosales (14/01/1997))
・Rlc. Terry Lenz Fry (Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Owen Holmes (05/06/2007))

・Rlc. Jewelite (C. loddigesii x Rlc. Memoria Ralph Placentia (01/01/1983))
・Rlc. Momento Verdad (C. Lee Langford x Rlc. Memoria Ralph Placentia (01/01/1984))
・Rlc. Night Shadows (Rlc. Doctor von Braun x Rlc. Memoria Ralph Placentia (01/01/1986))
・Rlc. Samba Jewel (C. Jeweler's Art x Rlc. Memoria Ralph Placentia (24/05/2000))
・Rlc. Saphiro (C. Joâo Paulo Fontes x Rlc. Memoria Ralph Placentia (19/03/2009))
・Rlc. Thubthim Thai (Rlc. Satoru Toshima x Rlc. Memoria Ralph Placentia (01/01/1989))
・Rlc. Varut Redflare (C. Lisa Ann x Rlc. Memoria Ralph Placentia (28/03/1990))
・Rlc. Varut Voila (Rlc. Lucky Strike x Rlc. Memoria Ralph Placentia (05/04/1990))



※Rlc. Memoria Ralph Placentia の子供
■Rlc. Mai Hoa Dream‘Symphony’
リンコレリオカトレヤ マイ・ファア・ドリーム‘シンフォニー’
(Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Sanyung Ruby (09/02/2015))
●Rlc. Mai Hoa Dream についての記事は、こちらをクリック!




※Rlc. Memoria Ralph Placentia の子供(栽培・画像提供=岡山のレッドさん)
■Rlc. Eagle Island 実生開花例1
リンコレリオカトレヤ イーグル・アイランド 実生開花例1
(Rlc. Memoria Ralph Placentia x Rlc. Oconee (01/01/1987))
●Rlc. Eagle Island についての記事は、こちらをクリック!



●<Rlc. Memoria Ralph Placentia‘Toreador’画像集>は、こちらをクリック!



(上記、記事中の属名表記は最新属名を採用しました。そのため一部、過去記事との表記の相違等が発生する場合がございます。)

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