明治時代、ヨーロッパ諸国を遍歴していた柳川青年が、帰国の船旅を旧友の妻子と同道する。しかしその船は、海賊に襲われ沈没。青年と8歳の少年は漂流の後、日本帝国海軍の桜木大佐が秘密裏に新型軍艦を建造中のインド洋の孤島に流れ着く…
明治33年の冒険小説の昭和53年復刻版。映画を見たのですごく久しぶりに読み返した。
横田順彌「SF古典こてん」で、紹介されていて、それで買っちゃった本ではあるが、SFなのは、新型潜航艇(この本では電光艇…山岡鉄舟の詩より命名)の形状や性能の紹介部分で、後は冒険小説。
時代が時代なので、欧米への対抗意識バリバリだし、出てくる動物は猛獣としてむちゃくちゃ殺してしまうし、戦う敵は海賊船…まさか国との戦争は書けないだろうし…映画で敵としてムウ帝国なんぞが登場しちゃったのもむべなるかな、でした。
でも、文章に独特のリズムがあって、慣れるとからだがリズムに乗っちゃってどんどん読み進んでしまいます。それに慣れてくると修辞が楽しい。「天女の如き」「月明かなる青水白沙(原文のまま)の海岸には」とか、決まり文句に飾られた文面が実に心地よいのでありました。「この際、漢文素読を復活しようぜ」と思っちゃったくらい。日本語からこのリズム感がなくなるのはやっぱり惜しい!
それでもって、全400ページほどの本の中で、180ページくらいで登場した新型艇の説明に約13ページ費やされ、でもまだ建造中なのでした。それに肝心な部分は「桜木大佐長年の苦心による秘密の働き」で片付いてます。やっと出来上がって試運転したら大津波で燃料が波にさらわれ、ようやく最後に4ページほど電光艇の活躍が記述されておしまいなのです。
入り口に「秘密造船所」と大書した地下造船所とか、インド洋に輝く北斗七星とか、枝も枝垂れんばかりに熟すバナナとか突っ込みどころ満載(明治の人をいじめちゃいけないけど…島崎藤村だって椰子の枝、とか言ってるもんね)。それについてもギャハギャハと楽しんだ本でしたが、当時の正しい日本人の「負けるものか」の軒昂たる意気に感じる本なのでした。
明治33年の冒険小説の昭和53年復刻版。映画を見たのですごく久しぶりに読み返した。
横田順彌「SF古典こてん」で、紹介されていて、それで買っちゃった本ではあるが、SFなのは、新型潜航艇(この本では電光艇…山岡鉄舟の詩より命名)の形状や性能の紹介部分で、後は冒険小説。
時代が時代なので、欧米への対抗意識バリバリだし、出てくる動物は猛獣としてむちゃくちゃ殺してしまうし、戦う敵は海賊船…まさか国との戦争は書けないだろうし…映画で敵としてムウ帝国なんぞが登場しちゃったのもむべなるかな、でした。
でも、文章に独特のリズムがあって、慣れるとからだがリズムに乗っちゃってどんどん読み進んでしまいます。それに慣れてくると修辞が楽しい。「天女の如き」「月明かなる青水白沙(原文のまま)の海岸には」とか、決まり文句に飾られた文面が実に心地よいのでありました。「この際、漢文素読を復活しようぜ」と思っちゃったくらい。日本語からこのリズム感がなくなるのはやっぱり惜しい!
それでもって、全400ページほどの本の中で、180ページくらいで登場した新型艇の説明に約13ページ費やされ、でもまだ建造中なのでした。それに肝心な部分は「桜木大佐長年の苦心による秘密の働き」で片付いてます。やっと出来上がって試運転したら大津波で燃料が波にさらわれ、ようやく最後に4ページほど電光艇の活躍が記述されておしまいなのです。
入り口に「秘密造船所」と大書した地下造船所とか、インド洋に輝く北斗七星とか、枝も枝垂れんばかりに熟すバナナとか突っ込みどころ満載(明治の人をいじめちゃいけないけど…島崎藤村だって椰子の枝、とか言ってるもんね)。それについてもギャハギャハと楽しんだ本でしたが、当時の正しい日本人の「負けるものか」の軒昂たる意気に感じる本なのでした。