虹色の花

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2024-03-09 02:16:00 | 日記


わぁ、綺麗な虹だね!

街の通りを歩く子どもの声につられて
ハーデスは空を見上げた。

雲ひとつない空に架かる虹。
だが、それはいつも見る円形の虹とは少し違って見える。
彩雲か?しかしそれにしては…くっきりとしている。

まるで、空に虹の花束を掲げたかのような。

不思議な空の現象。
ハーデスの目には、わずかに残る術式の残滓ともいえるエネルギーが微かに見えていた。

あれは…魔法の術式?
一体誰が、何のために?


思わず、そのエネルギーの残滓を追っている自分が居た。まるで。それは

導かれるように。


私たちのような長命種は、ほんの昔(ハーデスの感覚での昔)まで、人々に神と混同されていた時代を経ていてな。
一時は人々から、崇められたりもしたものだ。今でも平和主義を貫きながらも、歴然とした力の差で、人々を下に見る長命種も多い。

そんな私が、人の住む街の中で”導き”を感じるとは、随分とおかしな話だろう?


術式の微かなエネルギーを頼りに。
たどり着いたのは、まだ真新しい王妃の墓碑だった。

この国の王妃が崩御されてから、もう数ヶ月は経つだろうか。弔いの花は変わらす絶える事がなく。その花の多さは、国民から愛された証でもあるのだろう。

多くの花束が添えられ。色とりどりに飾り付けられた墓碑に。それは一層の輝きを纏って置かれていた。

ダイヤモンドのような透明で輝く石がはめ込まれた至ってシンプルなペンダント。

だが私の目を、心を惹きつけられたのは。
その、石の中に込められた術式だった。

そうか。
この品が、あの空の虹を発生させていたというのか。

そっと、そのペンダントを手に取ってみる。

これは。

持ち主のほんの僅かな魔力を使って、空に特殊な虹を発生させる、装置のような術式。例え魔力適正が殆どない者であっても、本来人が備わっている魔力というものがある。そのごくごく微量な魔力を使う事で、持ち主の健康にも一切害がないように、わざわざ細かく調整されている。

ほう。なかなかに手の込んだ代物じゃないか。人が作ったモノにしては面白い。

わざわざ、こんな所まで
興味を惹かれて来ただけあったな。

ハーデスは確認をするように
ペンダントを空にかざした。

途端に、その目で見た術式が発動し、先ほど空に架かった消えかけの虹を、上書きするかのように。
重なり合ってもうひとつの虹がかかった。

かざしたペンダントの裏にある金属部分の側面には、小さく、Albert(アルバート)と彫られてある。

アルバート?

何処かで聞いた名だ。
いつだったか?

ふいに、脳裏に浮かんだ声。


まあ!そのような魔法が?
…アルバート…

その時、王妃と交わした言葉が思い出された。アルバート。そう、王妃が言っていたのは、確かにその名だ。

そうか…これは彼の”魔法使い”の品という訳か。

あの堅固な護りの術式。
そして。
この虹の術式。
なるほどそうか。そう言うことか!
これは面白い…!

墓碑の前で、ダイヤモンドのペンダントを、そっと元の場所に戻した。

王妃よ、私は。
貴女に導かれたのですね。

あの時、嬉しそうに微笑み、その品の素晴らしさを讃えた王妃の姿が。
まるで目の前に、ありありと浮かぶようだった。

一礼をして、すぐさま、術式を展開する。

王妃の祖国に居たという”魔法使い“だが。

あの虹が、空にかかった瞬間。
この場所に、彼は居たはずなのだ。

王妃が崩御してから、かれこれもう数ヶ月も経つ。

祖国やこの国に居たのならば、もっと早くにこの場所に来て、この品を捧げていたはずだろう。

あれほどに王妃が信頼を寄せていた人物なのだから。

それが、こんなにも時間が経って、ようやくこの場所に訪れたという事は。

恐らくは。王妃の崩御の情報もすぐに届かなほどに。それほどに遠い国から来たという事。


ペンダントを起点に、私が手に取る前にあの虹を発生させた、前の持ち主のもとまで。

その足取りを追うのは私にとっては至極簡単なことだ。
展開した術式の、導きの光りを辿ってゆけばいい。

さて、どれ程遠い国から来たというのだ?

ここまできたら、好奇心というものは止められぬものだ。
特に私のような、人の国までわざわざ出向くような長命種にとっては、最大級の暇つぶしでもある。

彼に会ってどうするというのだ?

そんな疑問がよぎらない訳でもなかったが…。
まあ実のところ、そこまで深くは考えていなかったのだ。


そう。私はこの時。
ただ、アルバートという人物に、会ってみたくなったのだよ。



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