リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第54回 消える大砂丘 日本三大砂丘の一つ中田島砂丘が防潮堤建設で消えようとしている。

2017-04-30 11:00:19 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

中田島砂丘が津波対策の防潮堤建設で消えようとしている。建設場所は砂丘の中央、陸側に寄せれば現状に近く残せた可能性がある。しかし、民有地があるという理由でその工法は選択されなかった。しかし、この原稿を書き終えた後、地元の方の確認で、民有地はすでに所有権が放棄されている可能性が浮かんできた。行政は本当に最善の計画を策定したのか? 消える大砂丘に寄せて書いた。

中央部の掘り込まれた部分からを基礎に、高さ13mの防潮堤がそびえることになる。

 

消える大砂丘

 五月の三連休、各地で様々な催し事が開かれる。中部地方では昨年167万人が訪れた浜松まつりが第一だろう。まつりの見ものは「凧揚げ合戦」。凧揚げの会場に隣接する中田島砂丘は日本三大砂丘として知られているが、その大砂丘が無くなろうとしている。

 23日、浜松市内で開かれた「中田島砂丘を未来へつなげるシンポジウム」に参加した。現在、遠州灘の海岸線には17.5キロにおよぶ防波堤の建設が進められている。シンポは中田島砂丘の未来を知ろうと地元有志が企画したものだ。

 講演をされた大阪大学大学院の青木伸一教授は、海岸工学が専門で十数年にわたり遠州灘の砂の動きを研究されてきた。青木教授によると、中田島の砂丘は、天竜川が運んだ砂を風が海岸線に吹き上げて造った。西から東に砂が移動し、循環することで砂丘は維持されている。会場からの質問に対して「防波堤が砂丘を分断する場所に完成すると、移動する砂が激減して、砂丘としての姿は残らないだろう」と答えた。

 海岸線の自然環境が専門で、全国の状況に詳しく、東北地方の防潮堤も調査してきた九州大学大学院の清野聡子准教授は、「もっと岸に近い部分に防波堤を作れば砂丘は残せるので無いか」という。当初、中田島砂丘の防波堤は、海側、中央、陸側という三つの案が検討されていた。中央では無く陸側に防波堤を作れなかったかという指摘だ。民有地があることで陸側案は採用されなかった。

 民有地があり、地権者の人数が多く調整に手間取るということが、現在の場所になった理由のようだ。民間企業からの300億円という寄附で始まった防波堤建設は、通常の公共工事とは異なった手法、スピードで進められている。

 まつりの日、家族で海辺に繰り出そう。潮の香を愉しみ、消えてゆくその姿を脳裏に刻もう。次の世代の子らは、あの茫漠とした砂の連なる大砂丘を、観ることは無いのだから。

 

(魚類生態写真家)

 

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1 コメント

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許せません (松野貢)
2017-05-08 03:45:33
浜松市も防潮堤建設前に市民の対して事前説明会全くない状態で建設するのは許せません😡
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