崖っぷちロー

チラ裏的ブログ。ここは「崖っぷち」シリーズ・あん○ーそん様とは関係ありません。レイアウト変更でいろいろ崩れ中

グリーンピース、捕鯨船乗組員を告発

2008-05-15 21:46:44 | 法律関係問題
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014598971000.html
>今回の告発にあたってグリーンピース・ジャパンは、
>乗組員が送ったとみられる宅配便の荷物の1つを本人に連絡しないまま
>運送会社の配送所から持ち出し、中を開けたということです。
>この行為についてグリーンピース・ジャパンの弁護士は
>「証拠品であるうえ、不当な利益を得る意思もなく、違法性を免れることができると考えている」
と話しました。

どうなんでしょうか?
1 まず、乗組員の行為は業務上横領か?
  →会社内で認められた正当な行為であるという意見もありますが、
   ここでは犯罪を構成すると仮定します。

2 グリーンピースの行為は適法か?
  (1)まず、窃盗罪と住居侵入罪の客観的構成要件に該当すると思われます。
   ここで、主観的構成要件要素としての「不法領得の意思」が問題となります。
   不法領得の意思とは、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、
   その経済的用法に従い、利用処分する意思」です。
   
   単に証拠とするためなら、物の経済的用法という点が難しいかもしれませんが、
   今回は窃取した鯨肉を食べているので、不法領得の意思は認められるでしょう。
   したがって、構成要件に該当します。

  (2)次に、違法性阻却事由が無いか問題となりますが、
    正当行為といえないでしょう。自力救済でもないですし。
    「証拠品であるうえ」というのは、具体的にどのような法律構成で
    違法性を阻却するのか不明です。
  
  (3)よって、窃盗罪と住居侵入罪は成立し、両者は牽連犯となるでしょう。
    ※追記 証拠隠滅と窃盗の観念的競合もあり得るかもしれません

3 では、違法な行為による証拠を使って良いか?
 (1)まず前提として、捜査機関が違法に証拠を収集した場合の判例の理解です。
 「証拠物の押収等の手続に憲法三五条及びこれを受けた刑訴法二一八条一項等の所期する
  令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、
  将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、
  その証拠能力は否定される」
 
  →違法収集証拠であれば全て排除されるというのではなく、
   2つの要件を満たした場合にのみ排除されるということに注意ですね。
  
 (2)では、私人が違法に証拠を収集した場合の処理はどうでしょう?(田宮)
  排除法則の根拠として捜査機関による違法の抑止効を問題とするならば、
  排除の必要はないということになるが、
  ①捜査の一環と評価できる場合や
   (例えば、捜査機関の依頼による場合や私人の側で積極的に協力の意図があった場合)
  ②違法の程度が著大で公正さを容認できない例外的な場合は、
   裁量的な排除の対象となる。

  ということです。
  もっとも、私人と捜査機関とで、排除する根拠が違って良いという論理もありうるかもしれません。
  (田宮先生の見解でも、その例外を基礎付ける根拠は明確でないので)

(3)今回の行為は、①の私人の側で積極的に協力の意図があった場合にあたるから、
  排除されるんじゃないかと個人的には思います。
  (それに違法の程度も重大だと思う)

4 もっとも、仮に証拠能力があるとしても、
  証明力(この証拠が信用できるかなど)の問題や
  検察が証拠採用するかという問題があると思います。
  なお、捜査の端緒になるというのはまた別の問題です。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿