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子宮粘液症のロビンちゃん

2014年03月14日 | 診療科目

今回のお話しは子宮に異常が認められた10才のロビンちゃんです。

↑めちゃめちゃ怖がり屋さんで、飼い主の方に抱っこされてても固まってます(笑)

 

実はこの子、7才の頃から「僧帽弁閉鎖不全症」という心臓の病気と8才の頃から「アジソン病」というホルモンの病気の治療を、飼い主の方と一緒に頑張って続けてきていたのです。

 

ところが、昨年末から乳腺過形成と思われるお乳全体の腫れが見られだし、それが約2ヶ月以上持続、一部は嚢胞を形成するようになってきました。

↑嚢胞を形成し腫れた乳腺とそのエコー所見

 

そこで性ホルモン失調を疑い、腹部エコー検査を実施した所

  

↑液体貯留が認められる拡張した子宮が見つかりました

そして臨床症状と同時に行った血液検査から、「子宮粘液症」仮診断しました。

 

さて、乳腺過形成とともに子宮粘液症を持っている状態は、かなり危険性が高い状況と言えます。

 

1.乳腺過形成→乳腺細胞が活発化しているので乳腺癌が起こり易い

2.子宮粘液症→細菌感染を伴うと子宮蓄膿症という重大な病気に発展する

 

ただし、この状態を改善する為には、全身麻酔下で子宮卵巣の摘出を行わなければなりません。

ロビンちゃんの持っている心臓の病気やホルモンの病気は、かなり麻酔に影響を受け易いものでしたので、麻酔を掛けるリスクを考えると簡単に出来るものではありませんし、飼い主の方もどうしたらいいか分からない状態でした。

 

医療に携わっていると、大なり小なり「飼い主の方がペットの治療に伴う危険性が心配で治療を受けさせるかどうか悩んでしまう」という場面に遭遇しますが、この点については獣医師が勝手に決めるものではありませんので、飼い主の方に治療を受ける場合のリスクと受けない場合のリスクをお話しして決めてもらう形になります。

ただし一般の方が、リスクだけを見て判断することは難しい(避けられないリスクというものがあるので)ので、今回は以下に私見としてよくお話しする事を載せておきます。

 

○基本として我々獣医師のする治療行為は全て(注射も投薬も検査も手術も)不自然な行為です。不自然な行為だからこそ、医療には様々な問題(予測不可能な出来事や医療事故や医療過誤なども含む)があります(もちろん、問題を起こさないように細心の注意を払う事が前提のお話しです)。そしてペットは医療を理解は出来ないので治療を自ら希望する子はほとんどいません。病気の方が自然な現象なのです。では、どうしてペットの医療が成立するかと言うと、ペットが病気で苦しんでいる姿を見ている飼い主の方の「不自然な医療を利用してでもなんとかしてあげたい」という気持ちがあってこそなのです。その点から言うと、飼い主の方の考え方で自ずと治療の方針が決まっていきます。

 

今回の例で言えば、

1.「もう10才だし充分に生きた。今は元気だし、もしもっと年をとって子宮の病気でお迎えが来てもそれはしょうがないことだし納得出来る」という考えであれば、リスクを負ってまで積極的な治療を今の時点ではしないという判断になります。

2.「まだ10才だし、いろいろな病気も抱えているけど、元気で精一杯長生きして欲しい」という考えであれば、リスクを背負って積極的な治療をするという判断になります。

 

そして今回は、飼い主の方と相談して、なんとか頑張って手術をする事になりました。

手術をすることが決まればリスクを0にする事は出来ませんが、獣医師としては誠心誠意頑張るだけです。

 

・・・と言う事で頑張りました!←さらっと書いてますが、結構神経すり減りました(笑)

  

↑一番頑張ったロビンちゃん

↑大きく拡張した子宮(小さな身体にキツかったでしょうね)

 

無事に終わって良かったです。

現在は、もともと持っていた病気の悪化も無く、経過は順調です。

  

↑抜糸後の様子・・・カメラがとても苦手のようです

ロビンちゃんはまだ心配事を沢山抱えていますが、これからも飼い主の方と一緒に頑張って行きたいと思います。

 

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